第30話 初めてだったのに……の件
「───間に合った様だな」
───おっさん、間に合ったかもしれんが、ヅラがズレてるぞ。
でも、毎回そう言うの拾ってやる気はないからな。
今回はズレてると教えてなどやるものか。
シリアスなシーンぶち壊しやがって。
「おっさん───確かおっさんは、俺の死因は、敵の幹部の運転する車に跳ねられて死んだと説明したよな?───あれは嘘だったのか?」
「─────嘘ではない。イエローは今はG-バースト団の幹部なのだ。ただ、ブルーを轢き殺した時は、まだうちのメンバーだったかもしれないだけだ」
「────おい、おっさん!なんかサラッと酷いこと言ってね?今は確かに敵の幹部なのかもしれないけど、俺を轢き殺した時は自分の部下だったんだろ?自分の部下の不始末を敵に擦り付けてんじゃねーか!言ってみれば俺の仇はお前らじゃねーか!」
「────うーん、そうなるのかな?」
「そうなるのかな?───じゃねーよ!」
「でも、生き返らせたし」
「生き返らしゃいいってもんじゃねーよ!じゃあ、なにか?放火魔は自分で火を消したら、何件火をつけようが許されると思うのか?」
「うーん、許される事も有るかも知れないし、無いかもしれない」
「………断言する!許されねーよ!!」
「ブルー、何を怒っているのだ。勘違いをしないでほしい。今は君の死の責任がどうこうは問題じゃなく、イエローがなぜ裏切ったかが問題だ」
「───いや、普通に俺の死の責任は問題だろ!?」
「ブルー、気を悪くしないでくれ。イエローは君を轢き殺したその足で敵に寝返ったのだ。我々はまだなぜあれ程まで、我々に協力的だったイエローが敵に寝返ったのかわからず、戸惑っているのだ」
「じゃあ、なにか?取り合えず、イエローがなぜ裏切ったか知りたいって事か?」
「そうだ。それがわからなければ、イエローはどのタイミングまでうちのメンバーで、どのタイミングから敵組織のメンバーかわからないではないか!」
「あー、事故の時にはすでに敵組織の人間だったかも知れないってことか?」
「────そうだ。もしそうなら、私に責任はない筈だ」
「やっぱり責任逃れしたいだけじゃねーか!!」
大声で我々はやりあっていたが、そのすぐ脇で
さっきからイエローが何かぶつぶつ言っている。
「…………だったのに」
小さい声すぎて、何を言ってるのか聞き取れなかった。
「なんだって?もう少し大きい声じゃないと聞こえないぞ」
「────初めてだったのに!!」
イエローが声を張り上げる。
────イエローの初めて?
おっさんの方を振り返る。
「────イエロー、まさか君が初めてだなんて私は知らなかったんだ!」
おいおい、なんだよ………ひょっとして?
二人の関係は世間に顔向け出来ない関係なわけ?
「初めてだったけど………司令に求められたら拒めなかったの!!」
────えーと、良いですか、お二人とも。すぐ近くに幼稚園の児童がいるんですよ?
「それなのに………初めてなのにあんなに大きな………」
「───お、大きかったの??」
────あー、幼稚園の先生、興味深いのはわかりますが、前のめりにならないで児童を遠ざけるとかしませんか??
「─────司令だけじゃなく、そこのマナ・Bまで一緒になって私を無理やり………キズモノになってしまったわ………」
「おいおい、お前ら!どう考えてもお前らが悪いだろ!」
「………あなた………私はあなたに酷いことをした女なのに許してくれるの??」
「────許すも何も!こいつらが悪いだろ!?」
俺は非常におこっているぞ!
なんだそれは!
人権侵害だ!
自分の事が人間として終わってるかもしれないと思い始めていた俺ですら、そんなことする奴は人間じゃねぇ!と激怒するぜ。
てめぇら許さんぜよ。
俺は女性の敵であり、女性の味方なのだ。
「────そうよね!そうよね!?わかってくれる!?」
俺が味方したら何か突然イエローのテンションが上がったぞ?
────なにか嫌な予感がする。
これはなにかヤバい匂いがプンプンするノリだ。
「私は免許取ったばかりだったのに!初めてであんな大きな車運転したくないって言ったの!それなのに皆大丈夫!大丈夫って!結局大丈夫じゃなかったじゃないの!!事故起こしちゃったんだから!!あんな高そうな車までキズモノにしちゃったんだから!弁償しろって言われる前に逃げなきゃって思ったのよ!」
え─────そう言う落ち?
「それでさ!前々からさ、G-バースト団なら幹部待遇で雇ってくれるって言ってたしさ、もう良い機会だから行っちゃえーってなったの!わたし悪くないよね!?」
え─────あなた、ひき逃げって犯罪知ってますか?
「わたしだって少しは悪かったなって思ってるのよ!私が大きい車の運転が上手だったら事故は
起こらなかったのにって。だから今日だって、大きい車の運転練習しようと思ってバスで練習してたんだから!!」
俺はまたおっさんの方を向く。
「あ────あの、こんな人が正義の味方をされてたんでしょうか?」
それを聞いてイエローがいきり立った。
「え───!?あなた私の味方をしてくれるんじゃなかったの!?信じられない!!」
「おれ、もうなにも信じられなくなってきたよ………」




