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二章 メデューサの悲しみ

■三


劇場のアナウンスからいつもの口上が語られ、オーケストラからシンバルの音が鳴り響く。


ラファエルは客席の合間でポップコーンを売り歩きながら、舞台を眺めていた。


「ペルセウスはアテネーの盾を持ち、いよいよゴルゴン三姉妹の棲まう洞窟に足を踏み入れるのです。

 道無き道を越え、たどり着いた先には見るものを石に変えてしまうと言う恐怖のメデューサの姿が……」


照明が暗転し、巨大な山車に下半身を巻き付けてメデューサに扮したマノンが登場して場内を一周する。


あまりのリアルさに大人たちは感銘し、子供たちは震えて目を合わせようともしない。


泣き叫ぶ子すらいる。


マノンはとびっきりの演技で観客たちを驚かせて回っていた。


しかし、コーナーの半分を過ぎたあたりで


あ……っ」


牙を見せて威嚇していたマノンの動きが止まった。


その目線の先には同じように目を丸くしている男がいた。


隣には小さな女の子が興味津々の面持ちで青く塗り立てたマノンの姿を見つめている。


その凜々しい眉と利発そうな広い額は隣の男にそっくりだった。


「なんで……っ」


マノンは顔をゆがめた。


これほど悲しい顔をラファエルはいままで見たことがないような気がした。


あるとすれば母と別れた日、母が見せた顔くらいだ。


それでも母は無理に笑顔を作ってくれていた。


マノンの表情は完全に悲嘆に暮れた顔だった。


すべてに裏切られたような、そんな顔をしていた。


マノンは本当は錠のかかっていない鎖を引き剥がすと山車から降りて舞台袖にするすると下がってしまった。


唖然とする団員たち。


観客も何かあったのかとざわついた。

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