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二章 錬金の代償

夕飯の時刻になってラファエルが食事を持って行くと、マリアンヌは昼間のことなどなかったように快活に彼を向かい入れた。


「遅刻よ、ラファエル」


彼女は笑う。


その無邪気さにラファエルは怖くなる。


「今日はマリアンヌさんの好きなリゾットだよ」


「マリーと呼んでちょうだい」


マリアンヌは鏡台の引き出しから羽根飾りを取り出してラファエルに差し出した。


「さっさと持っていって」


初めて羽根飾りをもらって以来、こうして時々彼女はプレゼントをくれる。


少し前には白い羽の襟巻きを貰って、質屋でかなりのお金になった。


「……どうして?」


ラファエルは俯いた。


最初はラファエルもなんだかんだ自分に都合の良い理由をつけて質草に変えた。


母の治療費に充てるためだ。


けれども羽根飾りが何で作られているかに気づいてしまってからは、とてもそんな気分にならない。


「どうしてっ!

 三日後に飛べないとどうなるかわからないんだよ!

 こんなことしちゃ駄目だよ!」


マリアンヌは決まりが悪そうにそっぽをむいた。


そしていつもの言い訳をはじめる。


「これは抜け毛だから気にしなくていいのよ。

いまは抜け代わりの時期なの。

それに医者だって言ってたわ。

筋力が落ちてるだけだって」


ラファエルはかぶりを振った。


「もうお金なら送ったから!

 だから大丈夫だよ」


たまったお金はこのあいだすべて療養所に母宛で郵送した。


十分な額かどうかは正直わからなかったが、ラファエルの給料と比較して決して少なくない額だろう。


「本当に?

 あれでほんとに足りたの?」


「うん。だからもういらないよ。飛べることだけに集中して」


マリアンヌはぽろぽろと涙を流した。


透明な真珠のような大粒で美しい涙だった。


「いやよ。いらないなんて言わないで」


「マリアンヌさん……」


「飛んだって何もいいことないもの。

 それよりかはこうしてラファエルの役に立っているほうが、私はずっと幸せなの。

 生きてるって感じられるのよ。

 だからこれは受け取って。

 私のためだと思って受け取ってよ」


ラファエルはそれ以上何もいうことができず、泣き止むまで彼女のそばにいることしかできなかった。


三日後、支配人ミステルの前で彼女はもう一度試験をした。


結果は飛べなかった。


彼女は飛べない鳥になった。


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