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二章 震える女

あまりに不幸な事故だった。


マリアンヌはサーカスの専属医師の手によって手術を受けた。


その後、半獣人デパエワールを泊めるベッドはないということで倉庫に送り返された。


あとは安静にする以外ないという医者の診断によって、ラファエルだけが彼女の容体を見守っている。


ラファエルは襤褸のマフラーと外套をキツく体に巻き付けて、檻の外からマリアンヌの様子をずっとうかがっていた。


夜になればすっかり寒い。


入り口近くのストーブに火を入れることは許されている(マノンが寒いままでは凍えてしまう)が、とても十分とは言えなかった。


まだ秋でありながら、夜を明かすまで寒さを堪え忍ばねばならない。


マノンとエレーナも先程まで起きていたが、檻から出られない身ではできることもなく、やがてそれぞれ不本意そうに眠りに落ちた。


ラファエルは手をこすり合わせ、足踏みをしてマリアンヌを見つめていた。


「……いい気味だと思ってるでしょ?」


眠っていると思っていたマリアンヌが、かすれるほどの小さな声で呟いた。


「そんなことない」


ラファエルはかぶりを振った。


本音だった。


翼だけではなく右の手足も折れ、あちこちにも打撲を負っている。


死んでもおかしくない大事故だった。


「水を飲む?」


マリアンヌが頷いたのでラファエルは水差しを持って檻に入る。


今日ばかりは檻に鍵はかけていない。


この怪我では逃げ出しようもないからだ。


わずかな自由を手に入れた彼女だったが、これでは不自由であることと変わりはなかった。


マリアンヌの口元に水差しをあてがい、ゆっくりと飲ませる。


唇を潤す程度にしか彼女は飲まなかった。


垂れてしまった水を手ぬぐいで拭き取り、ラファエルはまた檻の外に出て行こうとする。


「……行かないで」


マリアンヌが囁いた。

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