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第4話


「居た」


 レインは学園内の廊下で一人で歩くエリシアを見つけた。

 周りには誰も居ない、レインは一度深呼吸して、冷静な声を掛けた。


「エリシア、話がある」

「レ、レイン、何?」


 エリシアはまるで暴漢から身を護るかのように身を退いた。


「この前の魔族との戦いだ。本当に君が倒したのか?」

「そうだよ。この前全校集会で表彰されたの見てなかったの?」

「じゃあ、どうやって倒した?覚えているのか?」


 それを聞くと、明らかに彼女に動揺が走った。


「覚えているよ! それはセレナのバフと、カイルの槍での援護を受けながら、私が空から光魔法を……」 

「魔族の致命傷は剣によるものだった。魔法攻撃じゃあんな傷はつかないぞ」

「は、激しい戦闘で記憶が飛んでいたの。覚えてないよ」

「覚えているって言ったじゃないか」

「うっ」


 エリシアは自分の髪先を手で弄り出す。故郷で幼いころから隠し事をするときの癖だった。

 かつての、仲が良かったことの事を思い出し、レインはその時のように僅かに屈んで目線を合わせた。


「エリシア、別に告発しようなんて思ってない。でも、なんで嘘をついたか知りたいんだ」

「嘘じゃない、私が倒したの! 嘘っていうなら、レインのあれだって嘘でしょ。剣だけじゃなくて弓も使えるなんて」

「待て。見ていたのか?」

「あっ……」


 エリシアはぎくりとした。

 実は彼女は途中で気絶から目を覚まし、レインの戦いを見ていたのだ。

 彼は腹が底冷えするように愕然とし、怒りに染まった。


「だったら、それこそどうして、あんな嘘を!」

「こうする方が良かったの! 私には王族や貴族の方々からの支援があるの! 期待を裏切るわけにはいかないの!

 そ、それにレインの為でもあるんだよ」

「俺の為?」

「あんなのまぐれじゃん。そうだよ、結局戻ってきてからはいつもの劣等生。まぐれで期待されたって、上手くいかなくなるだけ。余計なことしないで。気遣いなの!優しさなの!どうして分からないのかな?」

「エリシア!」


 レインは激高し、彼女に詰め寄った。彼を見下していた彼女がのけぞる程だった。


「まぐれ?劣等生?余計!? 俺が朝昼晩努力していたことを知っているだろ! 仮にまぐれでも、俺は皆を助けた! それを無かったことにするのか!」

「や、やめ、怖い」

「答えろ、エリシア!」


「何をしている!?」


 その時、廊下の奥から怒声が聞こえた。

 カイルだった。

 彼はレインの返事を待たず、槍を構えて突進してきた。


 バリン!


 あまりの刺突に、窓ガラスが一斉に割れる。

 対魔獣用の必殺術、無論、並みの人間が当たれば即死だ。レインはそれを間一髪でよけた。


「レイン、見下げた男め! 功績を奪おうとしただけでなく、エリシアを襲うなんて! 」

「誤解だ! 俺たちは話し合いをしていただけだ!」

「問答不要!」


 レインの必死の説得は聞き入れられず、生身の彼に対し、本気の刺突を繰り返す。何とか、それをよけ続けながら、レインは今までの慟哭を叫んだ。


「どうして、お前はいつも人の話を聞かない!」

「屑の話なんて聞くか!」

「屑じゃなくて、幼馴染だろ!」


 だが、レインの説得も空しく、戦闘の騒動を聞いた生徒たちが続々と集まってしまう。


「手を貸すわ!」

「この強姦野郎!」

「殺してやれ!」

「エリシアさんを守れ!」


 レインは物量に押され、床に押し倒され、殴る蹴るの暴行を受け続けた。

 まだ癒えてない魔族の傷が開き、血がどろどろと流れる。

 意識が薄れる中、レインは群衆の中にセレナの姿を見つけた。

 彼女はレインと目が合うと辛そうな表情をし、手を伸ばそうとしてきた。

 が、周りの女生徒が彼女の肩に手を置いた。


「行きましょう、セレナさん」

「あんな人、放っておきましょう」

「え、ええ……」


 去っていく彼女を見て、レインは絶望と共に意識を失った。


「何事か!」


 ようやく、教師達が現れた。

 アークレイド勇者学院の学園長オズワルドの姿もあった。

 カイルは堂々と彼に事の顛末を報告した。


「はい、この男がエリシアから功績を奪っただけではなく、襲おうとしていたのです」

「ほう。次の勇者パーティに相応しくない無能だとは思っていたが、自分を置いてくれていた幼馴染たちを裏切るとは……犬畜生以下の寄生虫よ!

 この痴れ者を学園追放とする!」


 学園長の力強い宣言を受け、生徒たちは大歓声を上げた。

 まるで勇者が魔王を打倒したかのように。

 だが、広がる光景は多くの生徒が、たった1人を寄ってたかって虐めている光景だった。

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