プロローグ
「死にたい。」
桜が咲き乱れ、新たな命が芽吹く季節に僕はこの世からいなくなることを望んでいた。
お気に入りのエナジードリンクを片手に川の縁に立つ。
腕には数え切れないほどの切り傷がある。血がドクドクと流れ出すが不思議と痛みは感じない。
靴を脱いで空を見上げる。
「今日は星が綺麗だな。」
ひとりでそう呟き、1歩を踏み出そうとした時、背後から落ち着いた声が聞こえてきた。
「死のうとしてるの?」
僕は驚いて後ろを見る。そこには1人の女の子が立っていた。自分と同年代くらいだろうか、僕は警戒心を持って強めに言葉を吐いた。
「お前も僕が死のうとするのを無責任に止めるのか?
もう、苦しみたくないんだよ。」
強めに言葉を吐いたつもりが次第に涙が溢れて来たのが分かった。
「なんだ、泣けるじゃん」
彼女がそう言って僕の頬を伝う涙をゆっくりと指で掬いとった。
彼女は微笑みながらゆったりとした口調で話し始めた。
「私の名前、奏っていうの。あなたは気づいてないかもしれないけど私たち学校でクラスメイトなんだよ?」
そう言われて僕はやっと目の前にいる女の子が自分のクラスメイトだと気づいた。
「ごめん、あまり他人に興味なくて、クラスメイトのこととか全然気にしてなかったから。」
申し訳なさそうに話す僕に彼女は笑いながら言った。
「あはは。他人に興味無いかー。確かにそういう人もいるか。まあ別にそんな申し訳なさそうにしなくていいよ。で?私君の自己紹介を待ってるんだけど。」
「僕の名前は…」
「藍でしょ?クラスメイトなんだもん知ってるよ。ねぇ藍くん、私とお友達になってくれない?」
桜が咲き乱れる春の夜、僕と彼女の物語が始まった。




