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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅳ 月夜に浮かぶ影
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sect.11 お茶

その日のキトトブ寺院ハザサ院は、朝から慌ただしかった。

月齢が満月を迎えるこの日を、誰もが緊張の面持ちで過ごすことになる。


ラガンナ院長やシャンネラさん、そしてヌシ狩りの民のランブー君は、打ち合わせの最終確認とかで部屋にこもったまま話し合いを続けていたし、シュカヌとニーガちゃんはハザサ院長のところへ行くと言い残してなかなか帰ってこなかった。

最近ちょっと仲良くなったチクリちゃんも"腹が減ってはイクサができぬ"とか言って、朝からヤケ食い状態でちょっと話しかけづらい雰囲気だったし(たぶんそうすることで怖い気持ちを抑えているんだろうと思ったけど)、そう思うとなおさら声をかけづらくなって。


「なんかさ、ヒマだね」

「うん」

そんなわけで、あたしは慌ただしい人たちを横目に、ニトと二人でお茶を飲んでいるわけです・・・。

あっ!とは言っても、あたしたちも仕事はあったから、自分たちのやるべきことはちゃんと済ませての事なんだけど。

ふと空いた時間に、ちょっと休憩を入れてただけだよ。


「とうとう、この日が来ちゃったね」

「うん」

「倒せるかな?」

「・・・わからない」

ニトは悩んだ末に、率直な答えを返してきた。


「かなり危険な相手だからね、考えたくないけど相当のケガ人と、ヘタをすれば最悪の結果も起こりうるかもしれない」

「・・・そうだね」

そんな状況でのんきにお茶を飲んでいる自分たちに気付いて、ほんとうに申し訳ない気分になる・・・。


「ねえ、ユマ」

「ん、なに?」

「もし今日あのバケモノを倒せたとして、これからどうするの?」

ニトが不意に神妙な面持ちになってたずねてきた。


「そうだね・・・。先のことはよく分からないけど、まずはツグナイの民のキャンプに戻らなくちゃ・・・かな?実はあたしハタムにシュカヌを送ってくるって出てきたまま、皆に何も告げずにここまで来ちゃったから」

「えっ、そうなの!?」

そう言って驚いたニト。


だけどあたしたちがハタムで再会した日、ランタベルヌの船乗りに追いかけられて逃げていたところをかくまってくれて、そのままシャンネラさんの船にまで連れて逃げた"君のせいなのだよ!"という言葉は、さすがに言えない。


「うん。まあそれでも、いつかは旅に出たいって気持ちはあったから、結果オーライなんだけどね」

「自分の知らない世界を見てみたかったってやつ?」

「ああまぁ、うん。それもあるけど・・・、あたし小さい頃の記憶をなくしているからさ、自分の生まれに関する手掛かりが何かつかめないかなってね」

「あぁ、そっか・・・」

「あ、でもツグナイの民での生活に、不満があった訳じゃないよ。皆にはホントに感謝してるし、こんなあたしを家族として受け入れてくれて、本当に良くしてくれたから。でもやっぱり、自分のルーツっていうの?それはやっぱり気になるっていうか、忘れようと思ってもノドの奥に挟まった小骨のようにチクチクと意識を持っていかれるっていうか」

「それは当然の事だよ!」

ニトは真剣な顔でそう言ってくれた。素直な良い子だと本当に思う。


「でも、これまで行った場所では、何も手掛かりは掴めなかったよ」

「何か手掛かりのヒントみたいなのはあるの?」

「ヒント?」

「そう例えば、その記憶を失う前から持ってた"思い出のペンダント"みたいなのとか」

「そういうのは無いんだけど、強いて言うなら歌かな?」

「歌って、いつもユマが歌ってる、あの歌?」

「(・・・いや、いつもは歌っていないと思うんだけど)そうそう、あの歌だよ。あの歌はツグナイの民の誰が教えてくれたわけでもないのに、いつからか誰に教わるでもなくあたしが歌っていたんだって」

「ふーん」

とニトはうっすい反応で返してきた。

自分で聞いておいて、その反応はないだろうと思ったけど、優しいオネエサンは広い心で許すのであった。


「まあ人前で歌って、この歌知りませんか?って聞くのも、こっぱずかしいから似たような曲を聴くことがないか、注意しながら歩いていたくらいのものなんだけど」

「もっと早く教えてくれれば良かったのに」

「うん、まあ何となく話しづらかったしね。話すチャンスもなかったし」

「そっか。じゃあさ、この件が終わったらユマのルーツを探しに行こうよ!僕も手伝うよ」

「ふふ、そうだね。いつか手伝ってもらおうかな」

「いつかじゃなくて、すぐだよ!」

「うんうん、ありがとう」

この子がどういう感情にしろ、あたしの事を良く思ってくれていることには気付いていたけど、本当にそういう日がすぐにくればいいなって気持ちで聞いていた。


だけど現実はそんなに甘くはないわけで・・・、あたしたちのそんな平和な気分は、すぐに跡形もなく吹き飛ばされることになる。

あたしは現実を舐めてかかっていた。


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