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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅳ 月夜に浮かぶ影
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sect.8 接触

「この辺りかヌシ神が現れたのは・・・」


ヴェルデがエルザの町を訪れるのは初めてではなかったが、彼の記憶のなかにあるその風景と今目の前のある同じ場所の様相は一変していた。

いたるところが蜘蛛の糸というか繭の糸のようなもので覆われ、かつては道行く人でごったがえしていた通りから人の気配も完全に消えて、なにやら蟲の巣にでも迷い込んでしまったような錯覚を受ける。


「どう思う?インド」

「・・・面白いですな」

ヴェルデに問いかけられたインドが唸るような声で答えた。


「ヴェルデ様からは、例のものが鉱物のような卵から孵化したと聞いておりましたが、この光景は生物・・・、いや蟲の生態によって生み出されるものに酷似しております」

「やはりな・・・、二百年前に世界を滅亡へと導いたとされる謎のヌシ神の正体は、血も通わぬただの機械ではなかったか」

「しかしハーデルマークでの暴走時、ヌシ神から放出された高エネルギー波動は一体何だったのでしょうか?」

「わからん。だがその謎を解くには、やはりもう一度拘束して調べ直す必要がある。インド、奴を無力化して捕獲できるか?」


しかしそう問われた男は静かに答える。

「わかりませんな、少なくともまだ情報が足りません」

「まあ、そうだな」

そう言うと二人は黙り込んでしまう。



「やけにキトトブの者が目につきますね・・・」

その場の空気を壊したのはリグアだった。


ヴェルデの隣でこれまで黙ったまま辺りを観察していたリグアだったが、高台から身を潜めて街を見下ろしている彼らの下にランタベルヌの兵士たちが調査のためか大通りを歩き回っている姿が目につく。

だがリグアの言葉はそれを指しているのではなく、そのランタベルヌの兵士たちから身を隠すように彼らの様子をうかがうキトトブの僧兵たちの姿があり、改めて注意深く辺りを確認したヴェルデにもやがてそれは視認できた。


ランタベルヌ領内にもキトトブの寺院はあるが、だからといって必ずしも双方が友好的な関係を築けているとは限らない。

利害関係のことなる者同士が、それぞれの思惑をもってこの場所を探索しているというのだろうか。

自らの領地内での脅威に対して調査していることを考えればランタベルヌ兵の行動理由は明確だが、キトトブの僧兵は何の目的があってこの危険な場所にわざわざ乗り込んできているのだろう。


「キトトブの狙いはなんだ?」

ヴェルデは何やら思案を巡らせていたようだったが、その時状況が動く。

突然大通りを闊歩していたランタベルヌ兵の一人が消えた。

まるで神隠しにでもあったように。


最初は状況が分からず固まっていた兵士たちであったが、自分たちが襲撃を受けたことに気づくと慌てふためいた様子で手に持った銃器で辺りを乱射する。


「パニックに陥っていますね」

「あの状況では仕方がないだろうな。だがあれでは逆効果だ」

「ですね」

ヴェルデとリグアの言葉を証明するつもりはなかったのだろうが、残った兵士たちもすぐに得体の知れない何かに飲み込まれたかのように突然消えた。

ヴェルデたちや、同じく身を潜めているキトトブ僧兵たちの目の前で。


「なんだ!?いったい何が起こった?」

「ここからでは、はっきり見えませんでした」

ヴェルデが尋ねたが、リグアは答えられない。


「・・・考えられるとすれば、落とし穴」

インドがボソッとつぶやく。

「バカな!人を何人も落とせるほどの穴があるなら、ここからでも見えるはず。消えた数人はそれなりの距離をとって移動していた。その全員が一瞬で消えたのですよ?」

リグアがインドに反論する。


「距離をとってといっても、せいぜい10歩分くらいの範囲内じゃろう?」

「だからそのせいぜいとかいう10歩分の大きさの穴が、どこにあるのかと聞いているのです」

「擬態を知っておるか?」

「擬態?あの生き物が自分の身を守るために、周囲の風景に同化したりする・・・」

そこまで言いかけて、インドが何を言わんとしているのかをリグアは理解した。


「穴はあるんじゃよ、あの下に。大抵は自分の身を敵の目からそらすために使われる擬態を、奴は攻撃のために使った。つまりは奴が落とし穴のうえに覆いかぶさり、道に擬態化しておる」

「え!?それでは」

「うむ、奴はそこにおる」

「そんなバカな・・・」

ヴェルデからヌシ神と、そしてシュカヌからはエンゾと呼ばれるソレは、先日熊の親子を襲った時の失敗を修正していた。あの時は小熊を罠にかけることに成功したが、巨大な母熊は穴が小さすぎて落とすことができなかった。

なので今回は大きな穴を造り、罠を張っていたのであった。


インドの言葉を信じられないといった様子のリグアだったが、インドの正しさはすぐに証明される事になる。

先程キトトブの僧兵たちが身を潜めていた場所から、握りこぶしほどの大きさの何かが放物線を描いて放たれた。

「おいおい穏やかじゃないな、あいつらも一応は僧侶の端くれだろうに・・・」

「えっ!?」

ヴェルデの言葉にリグアが反応しかけたその時、大きな音と共に衝撃が走る。


爆発。


ランタベルヌ兵が消えた辺りに投げ込まれた爆弾は、地面と思われる場所で炸裂した。

目を覆いたくなる閃光、そして巻き上がる噴煙。

徐々に収まっていく噴煙の中、巨大なソレはいた。



「出た、ヌシ神だ・・・」

ヴェルデはそっとつぶやいた

スミマセン、遅くなりました。

日曜までと言ったのに、それも日付が変わるギリギリ・・・。


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