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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅳ 月夜に浮かぶ影
94/120

sect.9 準備

「出たヌシ神だ」

「ほほう、アレが・・・」

ヴェルデの言葉を聞いたインドが唸るように発する。


その時インドが何を感じてそのような反応を示したのかはわからないが、ヴェルデには彼が何を感じたのかがわからないなりに予想はつく。


"気持ち悪いと"


キトトブの僧兵たちによる攻撃を受けて、ヌシ神は擬態を解いて形を成したが、それは固体でありながら液体のようにグニャグニャと変形していた。形が定まっていなかった。

例えて言うなれば、流れる雲を見てなにかに似て見えるという感覚に近く、四足歩行のなにかの動物の形を模したかと思えば次の瞬間には昆虫か何かだろうと思われる輪郭を描き、また次には得体の知れない何かへと移ろい変化していく。

だがそれは見たままで受けるイメージとしては、意志をもってその形を成そうとしているのではなく、大きな袋の中に閉じ込められた何十何百と言う生き物が袋の中で暴れ、その拍子に袋にぶつかった輪郭が覗いて見えているような感じで、まさにそれが気持ち悪いといった感情を呼び起こしているのだろう。


「今にも爆発しそうじゃ」

隣で聞いていたリグアは"もうすでに爆発したじゃないか"と思ったが、インドが言わんとしているのは僧兵の投げた爆弾ではなくヌシ神自体の事だと気付いて、その思いを飲み込む。


「どう思う?」

「このままでは危険ですじゃ。もう少し距離をとったほうが・・・」

インドがヴェルデにそう進言しかけたが、それよりも状況が変化するほうが早かった。いや状況が悪化するほうが早かったと言うべきか。


今も形が定まらないヌシ神から、爆弾が飛んできた方向へ一筋の光が放たれた。

一瞬の間をおいて光の向かった先で爆発が起こる。

さらに間髪入れずに第二射、第三射と最後には乱射に近い状態でヌシ神は暴走しだす。


「ぐぅっ!?」

離れた高台からこれを見ていたヴェルデたちだったが、爆風の威力は凄まじく、彼らをも射程に捉えて襲い掛かかった。


「このままでは危険です。いったん退きましょう!」

リグアが叫ぶ。

両目を腕で防御するような姿勢で状況を見守っていたヴェルデだったが、その判断が正しいと理解したのかすぐに撤退の指示を出す。

「よし!下がるぞ。もう一度、体制を整えて出直す」

「それが賢明です」

三人はスカイモービルに乗り込むと、振り返ることなくその場を後にした。


(待っていろ、お前を必ず俺のモノにしてやるからな・・・)



だが数日後、彼らはすぐにその場へと戻ることになる。

「ヴェルデ様!」


夕食を終え、就寝の準備を進めていたヴェルデのもとへリグアが飛び込んでくる。

「偵察隊からの連絡で、エルザにキトトブの者が集まっているそうです。それだけではなく、あのヌシ狩りの民やシャンネラ盗賊団も加わっているようで」

「そうか、やはりキトトブは何かを掴んでいたようだな」

そう言いながらヴェルデは僧侶に狩人に盗賊とは妙な組み合わせなだと考えていたが、ふとあることを思い出す。シャンネラ盗賊団、いや前回ハーデルマークで再びヌシ神のまえに立ちはだかった謎の少年。

これまでに二度も、彼らの前に現れた少年のことを。


だがヴェルデはそれを記憶の片隅に追いやって告げる。

「リグア準備はできているか?」

「もちろんです」

「よし、出るぞ!インドをたたき起こせ」

「はい」

そう返事をして彼のもとを去る学者の後ろ姿を見送りながら、ヴェルデもまた支度に取りかかるのだった。


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