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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.33 あの川を越えて2

(さあ、どうする・・・)

シャンネラは心の中でつぶやく。


自身の安全を確保したうえで、レヴナを川の向こう岸へとスムーズに誘導。

しかし問題の橋は、もう目前にまで迫っていた。


立ち止まるのは危険だ、一瞬の判断ミスが致命傷につながることになる。

レヴナの角による攻撃ならまだしも、あの大木を振り子のように使っての一撃はスライドボードの扱いに長けている自分でもよくかわせたものだと思う。

とはいえヌシ狩りの民たちとの合流地点まで、現状を維持するには何かが足りない。


「くそっ、頭がフラフラしてきやがった・・・」

シャンネラの真っ赤に染まり負傷した腕から血がしたたり、その傷のせいか指先がわずかにしびれ始めていた。

(・・・ダメだ、このままムリに渡ったら失敗する!)

そう考えたシャンネラは、急いで他の者たちに合図を送る。


「いちど態勢を整える、このまま橋は渡らずに通過するんだ!」

「了解!」

全員に伝わったらしく、すぐさま返ってきた返事にとりあえず安心した。

(だが、どうする?これ以上時間はかけられない・・・)




「ユマ、オバサンの近くに寄せられる?」

「大丈夫!できるけど、どうしたの?」

「このままじゃ、レヴナを連れたまま橋は渡れない」

「・・・そうだね」

「僕に考えがある、オバサンと話がしたい」

「わかった、しっかり摑まってて」

そう言うと、ユマはスライドボードのスピードをあげた。



「オバサン!」

シャンネラが背後から声のしたほうに顔を向けると、ユマとシュカヌを乗せたスライドボードが近づいてくるのが見える。背後からレヴナの攻撃の気配はなかったが、油断のならない時にその行動がシャンネラには軽率に思えてならなかった。

「バカ、近くに固まるんじゃない!レヴナの的になっちまうよ」

「大丈夫、ちゃんと見てるから!」

シャンネラの怒鳴り声に、ユマがあわてて答えた。


「それよりも話がある。このままじゃダメだ、これじゃレヴナをつれて橋を渡れない」

「ぐっ・・。言われなくても、分かってるよ」

「だからオバサン、僕をサポートして!」

「お前、何する気だい!?」

「僕がレヴナに飛び移る」

シュカヌの言葉に、シャンネラはその目を大きく見開いた。


「んな!?バカなことを言うんじゃない!」

「でもこのままじゃ誰かが犠牲になるか、作戦が失敗するかだよ!」

シュカヌの真剣な顔をみつめるシャンネラ、だがそれは何かを諦めた者の目ではなく、自信をもって何かを成そうとする者の目のようだった。

(ヤレヤレ、こりゃ言うことを聞きそうにないね・・・)


そしてシャンネラは覚悟を決めた。

「・・・ワタシに何をしろって言うんだい!?」

「今からそっちに乗り移る。オバサンは僕をのせて、レヴナに後ろから近づいて欲しい」

「アイツに背後から近づけってか、まったく簡単に無茶を言ってくれるよ!」

レヴナの背後から近づいて、あの巨大な足で強烈な一撃を食らってしまえば、命を落とさずともただでは済まないだろう。想像するだけでも恐ろしいことをサラッと言われて、すがすがしく腹が立つ。


「無茶は分かってる、だからオバサンにしか頼めないんだよ!」

「けっ、バカチンが!おだてても何も出やしないよ」

そう言いながらシャンネラはしびれている指先の感触を確かめた。

一瞬の操作ミスや判断ミスが許されない状況で、最大限のパフォーマンスは発揮できないかもしれないが、シャンネラとて伊達に歳はとっていない。これまでいくつもの危険な状況を潜り抜けてきた経験とワザには、少なからず自信を持っている。

(なんとかやれるか・・・)


「・・・だけどそう言われちゃ、やらないわけにはいかないじゃないか!」

シャンネラは不敵な笑みを浮かべながら、シュカヌに乗りなと叫ぶ。

その言葉を受けてシュカヌは背後から迫るレヴナの様子に気を配りつつ、シャンネラのスライドボードへと飛び移った。


スライドボードがわずかに沈みシュカヌが乗ってきたのを確認して、シャンネラは隣を並走するユマの方を向いて声をかける。

「ユマ、アンタは安全な距離を保って付いてくるんだ。いいかい、絶対にレヴナに近づくんじゃないよ!」

「うん、わかった」

何かあってもシュカヌが居るから大丈夫とユマを連れてきたのに、この状況では失敗だったかもしれないと思いながらシャンネラはユマに指示をだしておいた。




「それで飛び乗った後どうするんだい?」

スライドボードでレヴナの背後へと回り込みながら、シャンネラがシュカヌに問う。

「あの大木とレヴナを繋いでいる槍を引き抜く」

「なに!?」

「あの大木が邪魔をして、レヴナの川越えを難しくさせているから」

「なるほど」

「だけど、あれが無くなるってことは・・・」

「さらにスピードが上がる可能性があるね」

「うん、だから他の人では苦しいかもしれないと思って」

「そうか」

ワタシも買いかぶられたものだと思いながらも、シャンネラは気合を入れた。


「そして隙を見ながらレヴナを攻撃して、僕への敵対心を増幅させる」

確かにシュカヌの言葉通り、レヴナは疲労が溜まってきたのか闘争心が削がれてきている感は否めなかった。さきほど無理に橋を渡ろうとしていたら、きっと失敗していただろう。あのときの判断はやはり間違いではなかったようだ。いや、なかったのだ。


「安心して行ってきな。目障りな棒を引き抜いたら、ワタシが必ずお前を拾ってやるから」

「うん、オバサンならそう言ってくれると信じてた」

「けっ、生意気言ってんじゃないよ!」

「フフッ・・・」


「じゃあ行くよ、準備はいいね?」

「うん、お願い!オバサンは僕が飛び乗ったら、すぐに離れて」

「ワタシの心配はいいから、自分のことを考えてな!」

「わかった!」

シャンネラはレヴナの様子を伺いつつ、スライドボードを狂牛の巨体へと徐々に寄せていく。


『今だ!!』


シャンネラとシュカヌの二人が同時に叫び、シュカヌは巨大なヌシの背へと飛び乗った・・・。




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