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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.32 あの川を越えて

「かなり派手にやっているようだな」

「ああ・・・」

遠方で雷鳴が轟いているかのように聞こえてくる地響きに、レヴナの接近を感じながらランブーとモールが言葉を交わす。

ヌシ狩りの民たちはそれぞれ狼犬にまたがり、レヴナがいつ到着してもいいようにスタンバイできていた。


「この様子だと、そろそろ川越えだろう」

「だろうな」

「あの川さえ越えれば、ここまでもうすぐだよ!」

チクリが緊張と興奮の入り混じった表情で、二人の会話に割って入る。


「なんだチクリ、ビビってんのか?」

「なっ・・・、ちょっとモール!バカにしないでよね。ウチだってヌシ狩りの民の一員なんだから、こんなところで怯えてなんかいられないよ!」

わずかに震える唇でチクリが答える。


「ハイハイ、しっかりやってくれよ。お嬢さん」

「なによ、その言い方!モジャモジャ頭のくせに!」

チクリを"おちょくる"ような態度だったモールが、自分の頭のことを話題にされて顔色を変える。

「なんだと!?頭は関係ないだろ!」

「おっと、ゴメンゴメン!その頭はアンタのポリシーだったっけ?」

チクリは薄笑いを浮かべて、渾身の反撃にでた。


「くっそー、このコムスメ!」

彼らを取り囲むヌシ狩りの民たちは二人のケンカがいつもの事とはいえ、またかと半ばあきれ返りながら"もっとヤレヤレ"と、はやし立てている。


「(これでいい・・・)」

そんなヌシ狩りの民たちを横目に見ながら、ランブーが心の中でつぶやく。

皆不安な気持ちを抑えつけて固くなっていたけれど、それが解けていつもの彼らに戻っていた。


二年前のあの事件によって、ヌシ狩りの民はバラバラになった。

その後、残った者でヌシ狩りの民を立て直しはしたが、崩壊前の状態に比べれば組織レベルは格段に下がったと言わざるを得ない。

誰も口にはしないが、不安は全員の心の中でくすぶり続けていた。

誰もが不安だったのだ。


だが皆で力を合わせて、ここまで乗り越えてきた。

自分たちの選択が過ちではなかったことを証明するためにも、再びここを全員で乗り切る。


「いくぞカエン、ホムラの弔い合戦だ」

ランブーは自分がまたがる狼犬の首を優しく撫でた・・・。





レヴナの執拗な攻撃をかわしながら、誘導をつづけるシャンネラたち。

「・・・ねえ、ユマ。スライドボードって、水の上を走るときのスピードってどうなるの?」

「なんで今そんな事をって・・・、あっ」

そう言いかけたユマの視線の先には、長く巨大な川が広がっていた。


「まずいよシュカヌ、水の上では地面より抵抗が大きくなってスピードが半減しちゃうよ」

「えっ、じゃあ?」

「うん、レヴナのスピードに負ける・・・」

ユマは困惑した表情で答える。


「シャンネラ殿、こっちだ!」

その時、どこからか大きな声が響いた。

見ると先導役で残っていたヌシ狩りの民の男が、前方で叫んでいる。

「こっちにザパンの者が使っている橋がある、そちらに迂回するのだ」

「よしわかった、案内しな!」

シャンネラはスライドボードの進路をわずかに修正して、右手で合図を送りながらヌシ狩りの民について行く。


「ユマちゃん、親分が合図してる。あっちの方向だ!」

「あっ、ハイ。えっと・・・」

シャンネラの部下に声をかけられたユマだったが、何やら言葉に詰まる。

それを見ていた他の部下が笑い声を上げた。

「ハハハ、影の薄いお前は"子分A"としか見られてないんだよ!」

だがそう言っている男も名前がわからず、"子分B"としか言いようがなかったのは秘密なのであったが。


レヴナは少し疲れがたまってきたのか激しい攻撃も収まり、あいかわらずスライドボードの後ろから追いかけてきてはいたが、その距離はわずかに広がっていた。

「マズイな、急がないとレヴナの誘導が難しくなるかも」

焦りを滲ませてつぶやくシュカヌ、そしてそれを背後に聞いていたユマが何かに気付く。

「あれを見てシュカヌ!橋が見えてきたよ!」

進路を変えたスライドボードの集団は、ようやく水際にまで到達して川沿いを進んでいたが、彼らの視界の端にヌシ狩りの民が言っていた橋らしきものが現れてきた。


だがその橋が近づくにつれ二人は言葉を失う。

木で作られた簡素な橋は、今にも崩れそうとまでは言わないが、レヴナが乗ってその重みに耐えられるのか不安になるような小さい橋であった。


「シャンネラさん、あれ!」

ユマはシャンネラのスライドボードに近づき橋を指差しながら叫んだが、シャンネラはそれだけでユマが何を言おうとしているのか理解した。

「わかってる!」

シャンネラは背後のレヴナを振り返りながら考えた。

レヴナが橋に乗って崩れてしまったら、ただでさえ傷を負って無理をしているレヴナは追走をやめてしまうかもしれない。さっきまでの殺気立った気配もすこし弱まっているようにも感じるし。


(さあ、どうする・・・)


だが橋はすでに目前にまで迫ってきていた・・・。




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