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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.18 待チビト来タル

「なんだかジメジメして、薄暗いところだね」

ユマが鼻を押さえながらシュカヌに聞く。

シュカヌたち四人はカンテラを手に持つラガンナの案内で、ハザサ院の地下へと続く螺旋階段を下りていた。


「この辺りはそうだね。でも見てて」

そう言いながら階段の突き当たりに到着したシュカヌたちが扉をくぐると、辺りの景色は一変する。

薄暗かったその部屋は、彼らが足を踏み入れると突然まぶしいほどの灯りがつき室内を照らす。


「すごい・・・!」

その風景を目にしてユマがつぶやく。

部屋の中には大量のコンピュータが所狭しと並び、その間を三人が横並びで通れるほどの通路が奥へと続いていた。

壁面に配置された数々のパネルには、意味不明な情報が次々に映し出されては消え更新されている。

しかしその雑多な環境にもかかわらず、どこを見ても埃ひとつ見当たらないほど綺麗な状態に保たれていた。


「!!!!」

「なな・・・、こんなの今まで見たこともないよ。こんなものが今の時代にまだ残っていたのかい」

その状況に目を見開いて驚いていたのはニトとシャンネラだった。

遺跡でのトレジャーハンターを永くやっているシャンネラをもってしても、その品々はお目にかかったこともないほどの宝の山であったし、ニトはニトで研究対象として穴が開きそうな程にひとつひとつの装置をまじまじと眺めている。


「こんな物もあるよ!」

ユマは手元に投影された、どこかの街並みの立体映像を手で掴もうとして、どういう仕組みになってるんだろうと独り言をつぶやきながら手をかざしているが、当然のようにその手は空振りしていた。


「よく維持管理されてある・・・」

シュカヌは小さな声で言ったのだが、ラガンナが反応して言葉を返してくる。

「当然です。ここを守る事は世界を守る事と同義であると、代々の院長に言い伝えられてきておりますから。キトトブはそなたとの約束を、しかと果たしてきました」

「感謝します」

「そういう意味ではありません。キトトブはここを維持管理する必要性を、世代を超えても理解できているという話です」

「なんのことだか難しすぎて、さぱーり解からないよ」

ユマが頭を抱えながら呻き、後ろからニトがなだめている。


「まあまあ、それはさておき・・・。皆さんこの場所にかなりご執着のようすですが、ほんとうの目的地はこの奥ですよ」

「そうだったね。シュカヌが説明したかったことって何だったの?」

ラガンナの言葉で思い出したように、ユマがたずねる。


「うん、そうだったね。じゃあ行こうか」

そう言うとシュカヌは、ひとりスタスタと部屋の奥に向かって歩き始め、他の者たちは慌ててその後を追った。


「ここだ・・・」

立ち止まったシュカヌの目の前には立派な扉がそびえ、勝手知ったる我が家のようにシュカヌは躊躇もせずに扉に手をかける。

「えっ、そんな勝手にいいの?」

ユマが不安そうにたずねるが、隣に立つラガンナは微笑みを浮かべてうなずいていた。



ー認証システム作動ー


どこからか機械的な声が聞こえてきたかと思うと、シュカヌをやわらかい光が包む。

それからわずかな時間の経過と共に光は失われていき、再びその場に声が響く。


ーシステムオールクリア。お帰りなさい、古き友よー


やがて扉は静かに開き始め、来訪者たちを迎え入れる。

その扉の先は小さな部屋だったが、薄暗い室内では天井から無数のコードが垂れ下がり、そこに大きなコードによって繋がれて何かがぶら下がっているように見えた。


「お久しぶりです。ハザサ院長・・・」

「えっ!?」

シュカヌの言葉にユマが驚きの声をあげるが、よく見ると眠っているように目を閉じた老人の姿がそこにあった。

だがその老人の腰から下は失われて無機質な金属の骨格がむき出しになっている、そしてそこから無造作に引きちぎられたような配線が床に向かって垂れ下がっている。

それはまるで体を無理やり引きちぎられたかのような姿だった。


「なんてひどい・・・」

ユマが悲しそうな表情でつぶやく。


その声に反応したかのように、固く閉じられたままだった老人の瞳がわずかに開く。

「心配めされるな、やさしいお嬢さん。これは罰なんじゃ、生命のことわりを歪めてしまったワシへの、そしてキトトブへのな・・・」

「!?」

突然喋った老人にユマは心臓が止まりそうになるほど驚いた。


「ふふ、驚かせてしまったかな・・・」

「い、いえ」

そう言いながらもユマは嘘くさくならないよう、丁重に詫びる。


「でもこれほどひどい罰を背負わなければならないほどの罪なんて、世の中にあるのかな・・・」

「ふふ、優しい子じゃ・・・」

しかし老人はそれ以上、何も語らない。


そして二人の会話が途切れた頃合を見計らって、シュカヌが一歩前へ出た。

「改めて、お久しぶりです。ハザサ院長」


老人は虚ろな目でシュカヌの姿を確認する。

「そうか、オヌシがここへ来たということは・・・」

「・・・はい、蘇ってしまいました。エンゾが」

「・・・うむ、そうか」

シュカヌと老人の間に沈黙が流れる。


「そうか、そういうことか!キトトブの今の基盤を造ったとされるハザサ院長。その伝説の院長が、今もこのハザサ院に眠っていたのか・・・」

シャンネラが沈黙を打ち破るかのように囁く。


「こちらの御仁ごじんたちは?」

「僕の協力者です」

「そうか、ならば説明をする必要があるかな・・・」

「はい」

ハザサはゆっくりと話し始めようとしていたが、急に何かを思い出したように言った。


「だがその前に」

「はい?」

「オヌシの帰りを待ちわびておった、友人を起こしておいたぞ」

ハザサがそう言い終わらないうちに、物陰から黒い何かが現れる。


「げっ、ニーガ!?」

シュカヌはその正体をみて、思わず大きな声をあげて驚いた・・・。



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