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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.11 あたしの生き方

ズン・・・、ズズン・・・


「いいかい、邪魔するんじゃないよ」

「うん、わかった!でもどこに行くの?」

ユマはちょっと走っただけで息が上がりかけている、シャンネラの背中を押しながらたずねる。


「操舵室だ」

「え!?」

「船を壊されちまったら、大損害だからね。空にあげるのさ」

「壊されるって、この足音のヌシに?」

「決まってるじゃないか!」

シャンネラはイライラした様子で答える。


「そんな悪いやつなの?」

「あ~もう!だから邪魔するんじゃないって言ったのに・・・」

「ごめんなさい」

「説明は後だ!今は一刻を争うんだから」

「うん」


そうこうする内に二人は操舵室へとたどり着く。

だがそこは人の気配がまるでなかった。


「あぁ・・・。誰もいない・・・」

ユマが絶望のこもった声でつぶやく。


「それがどうしたんだい?」

「えっ、でも船を操るひとが・・・」

「ワタシがやるに決まってるだろ」

「できるの!?」

「バカにすんじゃないよ!そんな事もできなくて船長が務まるもんか」

そう言うとシャンネラは船の舵を握りしめる。


「いいかい、舌噛むんじゃないよ!ワタシの操縦は少々荒いからね」

「うん、わかった」

答えながらユマは近くにある椅子にしがみついた。


「え~っと、コレがアレで、アレはアレだから・・・」

シャンネラは懐からメガネを取りだし鼻にかけると、ブツクサ言いながら手元に並ぶ数多くのスイッチを操作して叫ぶ。

「行くよ!」

「うん!」


シーン・・・


「あれ!?」

「ん!?」

「いや何も起きていないような・・・」

「バカ言ってんじゃないよ、ちゃんと宙に浮いて・・・ないね」


シャンネラはどれどれと言いながら、舵から手を離してしゃがみこみスイッチ類を確認し始めた。

と、その時。


グラッ・・・


不意に足元が浮かび上がるような感覚に包まれたかと思うと、急に船が上昇する。


「ななな・・・、なにぃ!?」

その衝撃でしゃがみこんでいたシャンネラは、後ろ向きにゴロゴロと部屋の端まで転がっていく。


「ユマ、舵を・・・!」

「えぇっ!?そんな無茶ブリを!?」

そう言いながらも事態が事態だけに、ユマはしがみついていた椅子から離れて、倒れないように姿勢を低く走って舵を握りしめるとエイッと前に倒す。


グラッ・・・


「おおお!」

「きゃあ!」

それにより今度は船が前方に傾き、シャンネラがゴロゴロと転がって舵のところまで帰ってくる。


「ナイス・・・」

「いえいえ、どういたしまして・・・」

何と言って返していいかわからず、そう答えながらユマがふと前方に目をやると、建物が接近していることに気付いた。


「あわわわ、シャンネラさん前、前!」

「ん?をおぉお!?」


ガリガリガリ!


シャンネラのとっさの舵さばきで直撃は逃れたが、船底が屋根をかすめていく。

「・・・寿命が二十年は縮まっちまったよ」

だが不幸中の幸いと言うべきか、おかげで船はバランスを取り戻して、エルノマの上空で停泊することができた。


「やれやれ・・・、船底を損傷しちまったから船大工たちにはドヤされそうだけど、お互いに無事でなによりだ」

「船大工?」

「あぁ、ウチの整備士たちさ」

「なるほど・・・」

ユマが改めて辺りに目をやると、まばらになった人たちで静かになったエルノマの町が眼下に広がっている。


ズン・・・、ズズン・・・


「あれがこの騒ぎの原因か・・・」

今ならユマにもその姿を見ることができた。

ボロボロに朽ちかけた巨人は、エルノマの人びとの家屋が並ぶ通りまで接近していた。

巨人が歩を進めるたびにギ、ギギギ…と全身が軋むような音もはっきりと聞こえる。


「かわいそう・・・」

「かわいそう?」

ユマの発した言葉をシャンネラが聞き返す。

「うん・・・。何故かは分からないけど、あの機械の巨人を見ていたらそんな気分に」

「ふーん」


「それで、あの巨人は何者なの?」

「ここに元々いた住人だ」

「へっ!?」

返ってきたシャンネラの答えは、あまりに突拍子が無くてユマは言葉を失った。


「もう数十年前の話になるんだけど、ワタシが発電所だったここを見つけたとき、ここの発電施設は止まったままだったんだ」

「うん」

「ワタシは学者や技術者なんかを雇って、この発電所の修理と再生を行った」

「うんうん」

「そしてこの施設に電気が蘇った時、どこからか轟音がしてね。何事かと慌てて駆けつけると、ガレキの中からこいつが現れたのさ」

「それでそれで?」


好奇心のこもったユマの目に、耐えられなくなったようにシャンネラが答える。

「それだけさ」

「へ?」

「現れたコイツはフラフラと歩いてどこかへ消えちまった。ワタシたちは何だったんだと呆れかえったが、何週間後かに突然また現れてね。エネルギーが切れかかったみたいで、ここで充電してまたどこかへと消えていったんだよ。以後はずっとその繰り返しさ」

やけにそっけなく話すシャンネラの雰囲気に、なんだか妙な感じがするユマ。


「へぇ、でも意外だな」

「何がだい?」

「その度にこんな大騒ぎになっているんでしょ?だったら壊しちゃえばいいのに」

「それは・・・」

「あっ!大変!」

シャンネラが答えようとしたとき、巨人を眺めていたユマが大声を上げる。


「今度は、一体なんだい!?」

「あそこ、女の子が逃げ遅れてる!」

「なんだって!」

シャンネラが舵を固定してユマの隣で下を眺めると、道の真ん中でしゃがみ込んで泣いている女の子の姿が見えた。


「あたし行ってくる!」

「ちょっと、お待ち!危ないよ!」

「大丈夫!シャンネラさん、格納庫のスライドボード借りるね!」

「待ちなって言ってるのに・・・」

だがユマの姿はすでに見えない。

「なんでどいつもこいつも無鉄砲なんだか。まったく最近の若いモンは・・・」

一人残されたシャンネラのぼやきが、静かな部屋に寂しく響いていた・・・。



やがて人気のないはずの格納庫についたユマを意外な人物が出迎える。

「ニト・・・」

「あっ、ユマ」

先日ニトとの会話で気まずい雰囲気になってから、二人はずっと顔を会わせていなった。


「どうしたの?」

「下で逃げ遅れている子がいるから、スライドボードを借りるね」

「危ないよ!」

「大丈夫」

ユマは微笑みながらニトに答える。


「今から行っても遅いよ、なんでユマは人のためにそこまでするの!?」

「ねえ、ニト・・・。あなたがもし誰かに大事にされたいと願うのなら、あなたが誰かを大事にすることも覚えてあげて。それは関係ないようで、きっとどこかで繋がっているから」

「わけが分からないよ・・・」

「ごめん、今はゆっくり説明している暇はないの。スライドボード借りるね」

そう言いながら、壁に立てかけてあったスライドボードに伸ばしたユマの手をニトが掴む。


「行かないでよ・・・」


ユマはニコッと微笑みながら、ニトの手を自分から優しくほどく。

「だめ、これがあたしの生き方だから」


ユマはスライドボードを掴むと、ニトの視線を背後に感じながら素早く起動させる。

そして傍の扉を思いっきり開く。

「強い風・・・」

船の真下には巨人の姿がさらに大きく見える。


「じゃあ、行ってくるね!」

ユマはスライドボードに足をかけると勢いよく飛び降りた。






フフフ・・・。

あの時の事を思い出すと、今でもちょっとドキドキするよ。

ニトもあたしも若かったね。


でもあの時、あたしの生きる立ち位置が分かった気がする。

この旅では皆にいろんなことを教えてもらったよ。

その思い出のひとつひとつが、今のあたしの宝物になっているんだね。

ありがとう・・・。



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