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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅲ 失われた過去からの使者
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sect.1 鉄骨の町エルノマ

深夜の夜空に浮かぶシャンネラの船の一室。

ソファではユマとニトが、小さな寝息を立てている。

心地よさそうに眠る二人を前にして、シュカヌは船の主シャンネラと向き合っていた。


「連れてって欲しいんだ・・・。キトトブ寺院ハザサ院へ」

「・・・なんだって!?」

シュカヌは静かに語るが、その瞳は決意に満ちていた。

シャンネラはその言葉に少なからず動揺を見せる。


「これからどうするべきか、答えはあの場所にある・・・」

シュカヌは多くを語りはしないが、シャンネラはその裏に秘められたものを察した。

そして意を決したように答える。

「・・・わかった。いいだろう」


だがシュカヌの曇っていた表情に変化が現れたのを制するように、シャンネラが言葉を付け加える。

「だが、その前に!」

「うん?」




Chapter Ⅲ  失われた過去からの使者




「ユマこっちだよ」

「うん、今行く」

あたしはニトにシャンネラ盗賊団のアジトとも言える“鉄骨の町エルノマ”を案内してもらっていた。

シャンネラさんの船で上空から見たこの町は、名前のとおり岩場に無数の鉄骨が突き刺さっているといった感じで、その鉄骨と鉄骨の間を土壁でつなぎ家屋を建造しているような造りだった。

キトトブ寺院へと向かうはずだったのに、何故この場所にあたしたちが居るのかというと、シャンネラさんの船の燃料補給と雑務の整理を先に済ませるってことになって・・・。


「すごく広いところだね・・・。アジトって聞いていたから、もっと小さな所なのかなと思っていたんだけど」

ユマとニトは市場のような建物の並ぶ通りを、話しながら進む。

鉄骨と土の殺風景なところだが、市場には食料や雑貨、衣類など品揃えはなかなかのものだった。


「うん、世界大崩壊の前は工場の発電施設だったところだからね」

「それでこんな鉄骨だらけの殺風景な感じなのね・・・って、ゴメンナサイ」

そう言った後で、ユマは自分の発言が失礼だったことに気がついた。


「アハハハ、いいよ気にしないで。でもね、ここは食料の生産・調達から日常品の加工まで、人が生きる上で必要なものがすべて賄えるくらいに出来上がったコミュニティーでね、ひとつの完結した社会として機能しているといってもいいくらいなんだ」

そう言ったニトの横を、荷物を抱えた子供達が笑顔で通り抜けていく。


「そう言われてみれば、子供達も生き生きしているね。ここの生活が豊かな証拠だね」

「でも、あの子達には親がいないんだ」

ニトが一瞬、複雑な表情になって答える。


「えっ!?」

「ここは各地で孤児になった子供達を、オババが保護してきて出来た町だから」

「どういうこと?」

「つまり親を失って行くところも食べるものも無いって子供達を、人並みの生活をさせるためにここへ連れてきているんだ。もちろん以前に砂海で会ったヤンチのように、成長して大人になった人たちの方がたくさんいるけど」

「そうなの!?」

「うん、そうだよ。だけどオババのあの性格だから、“働かざるもの食うべからず”って、仕事は子供たちでも皆平等に与えられているけどね」

ニトが苦笑いを浮かべながら肩をすくませる。


だがニトとは対照的に、ユマは何か思いつめた表情になる。

「ごめん、あたし勘違いしていた・・・」

「ん?」

「ニトたちに出会うまでは、シャンネラ盗賊団のあまりいい噂を聞いていなかったから・・・」


ユマの言葉にニトは、なんだそんな事かと笑顔で返す。

「気にする事はないよ。人はそういう噂を聞けば、誰だってそういう先入観を植え付けられてしまうんだから」

「でもなんで!?これだけ弱い人を助けて、人のために活動しているのに!」

「プロバガンダだよ」

「ぷろ・・・?」

目が点になったユマが聞き返す。


「人助けもしているとは言っても、実際オババが盗みをしているのは事実だよ」

「うん・・・」

「でもその盗む相手は悪どい事をしているヤツらや、そういうヤツらも狙っている遺跡に眠っている過去の遺物なんだけど、その悪どいヤツらっていうのは大抵が力を持ってる組織だったりするわけなんだよね」

「うんうん」

「そいつらからすれば面白くないわけだよ、シャンネラ一味の存在が。だからシャンネラ一味はロクでもないって噂を立てれば、シャンネラ一味を攻撃する自分達を正当化できる。もしくは自分達のやってる悪事を中和できるってわけさ」

「ズルイ!」

感情的になって声を荒げるユマに、ニトは笑顔で答える。


「なんでシャンネラさんは、そうじゃないって言い返さないの!?」

「まあ、オババがあの性格だからね」

「?」

「他人にこんなに良い事していますって、ひけらかす為にやっているんじゃないんだってさ。それに自分がそんな事を言えるほどの聖人ではないって言ってた」

「う・・・」

ユマは頭の中で、シャンネラの顔を思い浮かべて言葉に詰まった。


「まあなんだかんだ言っても、面倒くさい事は苦手なんだよ。殴られたら殴り返す、こぶしで勝負だって言ってたから」

「・・・あ、そう」

男達と殴り合いのケンカをしているシャンネラの姿を想像して、しっくりくるなとユマは思った。そして何やら考えをめぐらすユマの横顔を見ながら、ニトは苦笑いを浮かべる。


「それに良い事っていうのはさ、自分はこんなに人のために尽くしてますって主張した時点で、“人のためではなく自分のためにやってるようなもんだ”っていうのが、オババの持論みたいだから」

「ふふっ、そうね。そう考えたら、シャンネラさんらしいかもしれないね」

ユマはスッキリしたような笑顔をニトに向ける。


「さあ、もうすぐ着くよ」

ユマはニトとの会話に夢中になって気がつかなかったが、ふと辺りを見渡せば市場のような通りを抜けていた。

二人はやぐらのような鉄塔に近づいている。

「あそこ?」

「うん、そうだよ。あそこからこの町を見渡せるんだ」



簡素な足場を施された鉄塔を上っていくと、心地よい風の吹く場所に出た。

眼下には町の人々が小さく見え、顔を上げればエルノマの町が一望できた。

「これがシャンネラ盗賊団のアジト、“鉄骨の町エルノマ”だよ」


ニトに言われて、ユマが改めて町全体を見渡す。

むき出しになった鉄骨の間を行き交う人々。どこからか聞こえてくる金属を叩くトンカチの音。はしゃいで走る子供達の声や、女達の怒鳴り声。

活気のある工場町のようだとユマは思った。

「いいところだね・・・」

「でしょ?」

ユマの隣で手すりに腕を置いて、ニトが得意げに言う。


「ニトの家もここから見えるの?」

何気なく聞いたユマの一言で、ニトの表情がわずかに沈む。

「僕の家は、ここにはないよ」

「えっ、そうなの?」

「うん、僕の居場所はここではないから・・・」

そう答えながらユマを見つめるニトの瞳には、悲しみの色が滲んでいた・・・。





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