sect.1 到着
遠い時空の果てに漂うシュルナフ研究所。
そして、マザーアリアが鎮座する巨大な空間。
「それでどうするの?アタシの案に乗るの?乗らないの?」
アフロのおっさんに語りかける少女。
「乗るに決まっている!なあ、タマちゃん!!」
「ピッ!?」
「いくぞ、タマちゃん!えいやぁ~!!!」
「ピィ~~~・・・!」
・・・そして私達は異空間を漂っているわけなのだが。
なに!?
私達とは誰かだと?
私といえばカネサダ。
私達といえば、カネサダとタマちゃんに決まっているだろう!
なに!?
勝手に決めるな?
そんな言葉は聞こえない!あわよくば聞きたくないというものだ!
とはいえ、これは一体どういう状況なのだ?
前後左右を見渡しても視界に入ってくるのは、モヤモヤとした光の帯。
そう、あの研究所の連絡通路で見たオーロラチックな光の空間が果てしなく続いている。
私達はこの空間を落下しているのか、上昇しているのか・・・。
ただひとつ言えるのは・・・、今私達がいる場所は、一秒前に私達がいた場所ではないというのは感覚的にわかる。
つまりは波に流されるようにどこかへと向かっているような気がするが、多分そうだろうという程度にはわかっているという事だ。
なに?トドのつまり、わかっていないじゃないかだと?まあ、言い方を変えれば、そうともいう。
もしや実は猛烈なスピードで落下していて、出口に着いた途端ご臨終なんてオチではあるまいな・・・。
まあいい、わからんことを考えても仕方がない。
「私達は一体どこへ向かっているのだろうな。なあ、タマちゃん」
「ピピピィ!!」
タマちゃんはずっとご立腹だ、どうやら無理やり連れてきてしまったことがお気に召さなかったらしい。
よいではないか、よいではないか・・・。って、これではどこかの悪代官だな。
てな事を考えていると、突然タマちゃんが何かに反応しはじめた。
「ピピィ!」
「どうした、タマちゃん!?」
と、さりげなく普通を装って仲直りしてみる。
「ん、なんだ?」
ピュ~~~!
それは例えるならば何だろう、心地よい春のそよ風のようなものが私達を包む。
「こんな所で風か!?」
「ピピィ!!?」
「ん!?どうしたタマちゃん?」
なんだか嫌な予感がする。
ブフォオオオ~!!!!
「ドフゥアぁ!!!なんだこの突風ぅはぁ!?」
それは例えるならば・・・って、そんな余裕は全くない!
突然勢いを増したその暴風に、この右も左も上も下もわからない空間で私達は翻弄される。
「ピピィ~~・・・」
あぁっ、タマちゃんが流されていく!?
「あぁん、待ってタマちゃ~ん・・・!うぉおお~・・・」
そして私達は風に流され、突如迫り来た闇に飲み込まれた。
「・・・ィ」
どこだ、ここは・・・。
真っ暗闇で何も見えない。
遠くからタマちゃんの呼ぶ声が聞こえるのは気のせいなのか?
「・・・ピィ~・・・」
これが死後の世界というヤツなのか?
こんなところまで付いて来てくれるとは、やはりタマちゃん。さすがは我が心のソウルメイトよ。
・・・無理やり連れて来たのはナイショだ!
「ピィー!!」
ん?体が持ち上がっていく?
「うわ、まぶしい!!」
タマちゃんに引きずられて、視界が一気に広がった。
どうやら私は、頭から砂の中に埋まっていたらしい・・・。
「ぺっぺっぺ・・・。うぅ、口の中がザラザラするではないか」
「ピピィ!」
ん、ここはどこだ?
どうやらあのオーロラチックな得体の知れない空間は抜け出したようだ。
しかし辺りを見渡すが、そこには砂の地平線しかない。
右を見ても、砂の地平線。
左を見ても、砂の地平線。
回れ右をしても、砂の地平線。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・迷った」
「・・・ピピッ」
「・・・それでいて困った」
「・・・ピピッ」
途方にくれるオッサンとタマ1個。
待て待て、こういう時こそ平常心を失ってはならない。
というわけで、少しその場で横になってみよう。
別に現実逃避ではない、・・・決して。
どっこいしょ!
ここでつい声が出てしまうのは、私がオッサンである賜物だろう。
気にしない、気にしない。
それにしても軟らかい砂だ。
ザラザラというより、この感触はプニプニに近い。
・・・ん?プニプニ?
ズズッ・・・
・・・なにか動きませんでした?
「私達は何かの上に乗っていませんか、タマオサン?」
「ピッ!?」
ドーン!
「のわぉあ~!」
「ピピー~・・・」
突如地面が激しく盛り上がったかと思うと、私は空中に空高く舞い上がった。
というより、舞い上がらされた。
「なんじゃこりゃ!」
空中で身をよじりながら視線を走らせると、巨大なトカゲの頭が地面からヌクッと現れるところだった。
「砂から頭が生えている!」
ボヨン!
衝撃に備えながら地面に落下した私の体は、跳ね返るようにふたたび飛ばされた。
よく見ると砂の中からモゾモゾと、これまた巨大な身体が現れていた。
「なんだ潜っていただけか!」
「ピ!?」
地面に転がった私は、砂まみれになった体を払いながら立ち上がる。
タマちゃんの様子を即座に確認するが、大丈夫そうでホッとした。
ちょっと冷静さを取り戻したところで、先程のトカゲをよく観察してみる。
なんともデカイ。大人で何人分くらいの大きさだろうか?
こんなわけのわからん状態でこの状況・・・。
「どうする?」
「ピ!?」
しばしの沈黙の後、顔を見合わせた(とはいっても、タマちゃんの顔がドコかはわからないが)私達は、暗黙の了解で答えを出した。
「逃げろ!」
「ピー!!」
そしてオッサンとタマ1個は、砂を走る風になった・・・。




