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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.28 決断

数刻後、エルマリーとタカネは合流した。


「マズイ事になった・・・」

「どうしたんだい?」

「エンゾがバケモノに飲み込まれちまった」

「バケモノ?」

「憶えているかエルマリー、アリア博士の研究室で生物を捕食する生体金属を」

あの失敗作ともなんともいえない粘液を滴らせる生体金属は、エルマリーの記憶にもしっかりと残っていた。


「もちろん、憶えているよ」

「エンゾのヤツ、アリア博士からあの生体金属を取り上げたあとも成育させていやがった。人を超えるほど巨大に成長したその生体金属が、エンゾを飲み込んだんだ」

「なんだって!?」

「それだけじゃない、エンゾは自分の身体にその生体金属の組織を植えつけていた。俺たちの知らない間に実験が繰り返されて、あの物体はもう俺たちの知っている生体金属ではなくなっているかもしれない・・・」

「なんてバカなことを・・・」

エルマリーが顔をゆがめてこぼす。


「それでこれから、どうするつもりだ?」

話を離れた場所から聞いていたニーガ・ルージがタカネに問う。

「まずはここを離れよう・・・。私の知り合いの研究者を訪ねて、あのバケモノをどうするか対策を練ろうと思う。少なくとも今の俺達に、あのバケモノは手に負えない」

「え!?」

タカネの言葉にエルマリーは怪訝な顔をする。


「あのバケモノに飲み込まれたエンゾに、まだ関わるつもりなのかい?」

「当然だろう、アレは元はといえば俺達が生み出したんだぞ。アリア博士の研究室の俺達がどうにかしないで誰がするんだ?」

「やれやれ・・・。まったくワタシは、いいダンナの嫁になったもんだよ」

呆れとも諦めともいえぬ、だが仕方がないなという笑顔でエルマリーがぼやく。


「それに何かイヤな予感がするんだ、アレが大きな災いとなりそうな・・・」

「わかった、もう何も言わなくていいよ。ワタシは嫁なんだ、アンタについていくよ。で、どこに向かうんだい?」

「・・・ルネードへ。戦火の及んでいない、あの都市に知り合いの研究者が潜伏している」

エルマリーは無言でうなずき、シュカヌとニーガ・ルージのもとへ歩み寄る。


「それでいいかい?」

エルマリーがタカネの提案の返事を求めて、シュカヌとニーガ・ルージを見つめる。

「少なくとも我輩は、その提案以上の策など持たぬ」

「うん、僕も付いていく」

「よし、決まりだ」

二人の言葉にタカネは笑顔を返す。


「アンタはどうする?」

エルマリーはどうすべきか悩んでいる様子の研究員に問いかける。

「・・・オレも途中まで同行させてもらっていいか?とりあえず人のいる場所まで着いたら、もう一度考えをまとめようと思う」

「かまわない。道中は何が起こるか予測が付かないからな、人手は多いほうがお互いに有利だろう」

「よし、決まりだね!そうと決まれば、こんな場所とはさっさとオサラバだよ」

エルマリーが締めくくり、五人はその場を後にした・・・。


それから暫らくして、各地で人や家畜を襲うバケモノの噂があちこちで流れ始める。

だけどそれは、始まりにすぎなかった・・・。




「・・・というわけなんだ」

「ふむ・・・」

シュカヌの言葉に、シャンネラが無言でうなずく。


「だいたいわかったよ・・・。アンタが何故あのバケモノをエンゾと呼んで、自分が世界を滅ぼしたなんて言うのか」

「・・・・」

「お前の話からして恐らくは、あのバケモノに飲み込まれちまったエンゾが至るところで暴れまくり、疲弊しきった当時の世界ではそれを止めるだけの力がなかったって所だろう。微妙なギリギリのバランスの上に成り立っていた世界は、ちょっとしたバランスの変化で簡単に崩れていく。そして一度始まってしまった崩壊の連鎖は、加速的に大きくなっていきヒトの手に負えなくなってしまった・・・。それが“世界大崩壊”の真実か」

「・・・うん、まあ大雑把に言えばだけど」

「そしてお前はバケモノとなったエンゾを生み出すきっかけとなった自分を責めて、その責任を背負い込んでいると・・・」


すべてを見通しているかのごとく核心を突いてくるシャンネラの言葉に、シュカヌは驚きの表情で彼女を見つめた。


「お前にひとつ言ってやれることがあるとすれば・・・。ナニサマのつもりだ、自意識過剰なんだよ!」

「え!?」

「自分があの時、あの場所にいなかったら、ああしていたらってキリがないよ。お前がその場に居ようが居まいが、起こるものは起こるべくして起こるんだ。タラレバで過去を振り返っているうちは、なにも生み出せやしないよ」

「でも・・・」

「でもじゃない。あれを見てみな」

シャンネラに促されてシュカヌが視線を向けると、そこにはソファで眠るユマとニトの姿があった。


「ユマとニトはお前と一緒に夕飯を食べようと、お前の話が終わるのを待ってたが疲れ果てて眠ってしまった」

ふと時間を確認すると、いつの間にか深夜をかなり過ぎている。部屋の中にいた船員達もいつの間にか去って、辺りは静けさに包まれていた。

「みんなお前のことを大切に思ってる。お前はひとりじゃないだろ!」

「・・・・」

シュカヌは思いつめた表情で、何も答えない。


「お前があのバケモノを追うというなら、みんなが協力する。お前が抱えているものは、ひとりで背負うには重いだろう?その肩の荷をすこし降ろしな・・・」

「ぐっ・・・」

シュカヌの頬を涙が伝う。

シャンネラはうつむくシュカヌの頭をそっと撫でてやった。


「それでこれから、どうするつもりだい?」

「会いたい人がいる・・・」

搾り出すようにシュカヌが話すのを、シャンネラは優しい瞳で見つめている。

「わかった、言ってみな。連れて行ってやるよ」

「連れてって欲しいんだ・・・。キトトブ寺院ハザサ院へ」

「・・・なんだって!?」

シャンネラはシュカヌの言葉に驚きの声を上げた・・・。



ごめんね、シュカヌ・・・。

シュカヌの背負っている悲しみの大きさに、自分がちっぽけに見えたあたしは、どういう顔で話を聞いていいのかわからず眠ったフリをしてしまって。


でも、ちゃんと聞いていたよ。

シュカヌの想い、ちゃんと受け止めたよ。

だからみんなでシュカヌを助けようって・・・。


でもそれが正しい判断だったのか、今のあたしにはわからない。だって結局、君にもっと大きな悲しみを背負わせることになってしまったのだから・・・。




ChapterⅡ 『追憶の果て』 END




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