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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.24 脱出

その日は突然やってきた。


「おいシュカヌ、起きろ・・・」

「う~ん、ナニ・・・?」

ベッドの中でまどろむシュカヌの上に、ニーガ・ルージが乗りあがり声をかける。


「寝ぼけているんじゃない。起きるんだ」

「一体どうしたの?」

シュカヌはそう言いながら、枕もとの時計を確認する。

その時計の針は午前零時をすぎた頃を指していた。


「まだ真夜中じゃないか・・・」

「だからこそだ」

「意味が分からないよ」

「ここを脱出するぞ」

「え!?」

「今夜アリア博士の助手だった者たちが、エンゾを襲う。我々もここにいては危険だ」

「そんな!いきなり言われても、心の準備が・・・」

「そのために前もって情報は与えておいてやったはずだ。持ち出す荷物もないのだ、すぐにここを出るぞ」

そう言うとニーガ・ルージは扉の外に出て行く。

「ちょ、ちょっと待ってよ・・・」

シュカヌはベッドから飛び起きると、慌ててその後を追いかけた。




白衣を着た五人の男が、シュルナフ研究所内の通路を進む。

辺りは薄暗く視界がいいとは言えない状況だが、その先頭に立つタカネは決意を滲ませたような表情で集団を率いている。


彼らが進むのは第7セクションと呼ばれる、エンゾ直轄のセクションのあるフロアーだった。当然のことながら深夜におけるこの時間帯では、通路に人通りは全くないといってもよく、彼らがこの場所を歩いていることを不審に思われる心配はなかった。


やがて彼らは大きな扉の前で歩を止める。

研究所でありながら場違いな感すらある豪華な扉が、その先がただの部屋ではないことを物語っていた。


タカネは扉の前面に配置された個人識別認証用のカードスロットに、懐から取り出した一枚のカードを差し込みスライドさせる。

直後パネルにはエラーの文字が浮かぶが、やがてカチャッという小さな音と共にロックが解除された。

「いくぞ・・・」

タカネは背後の男達に合図を送り、全員がうなずくのを確認して扉に手をかけた・・・。


扉の先には広い空間が広がっている。その中央で机に腰を掛けたエンゾが、あごの下で手を組んだ姿勢で彼らを待ち構えていた。

「来ましたね・・・」

「なっ・・・!?」

エンゾがそこにいることを予期していなかったのか、数人が驚きの表情を浮かべる。

「なんですか?あなた達の計画を、この私が見破れないとでも思っていたのですか?」

「・・・・」

「まったく・・・。大衆というのは、何故こうも愚かなのか」

エンゾはそっと目を閉じ、ひとつため息をつく。


「まったくもって、救いようがない!」

そう言うと、閉じた目を見開いてタカネを睨みつける。

タカネはその眼光の鋭さに一瞬躊躇したが、なんとか踏みとどまった。


「あれほどこの国を、この世界を憂いていたお方が排斥されて、キトトブの者は我々の力で指導者を取り戻したというのに、あのお方がいなくなった途端に手のひらを返すような行い。挙句の果てには、あなた達までもが私を追い詰めるというのですか?」

「何を言っているんだ・・・?」

まくし立てるエンゾの言葉に、タカネたちは理解できずに立ちすくむ。


「わかりませんか?そうでしょうね、目先のことしか考えずに行動して失敗をくりかえすアナタ達だ・・・。結局その程度の考えしか持たずに行動して、取り返しが付かないところまで自分達を追い詰める。挙句の果てには、その結果を受け入れずに他人に責任をなすりつけるとは・・・」

「なんだと!?」

エンゾの物言いに、数人が嫌悪感をあらわに語気を荒げる。


「これ以上もう、救う価値が見当たりませんね・・・」

「!?」

エンゾがそう言った直後、彼の背後にカーテンのように張り巡らされていた巨大な布が静かに落下する。

「これは・・・!?」




「こっちだシュカヌ、遅れるなよ」

「ちょっと待ってよ・・・」

ニーガ・ルージとシュカヌの二人は研究所の裏口を、人目を避けるようにして進む。とはいっても深夜のこの時間帯なので、人の気配はまるでなかったが。


「ねぇ、ニーガ。なんで僕たち隠れるようにして、逃げなきゃならないの?」

「愚問だな。お前は自分で、自分の価値をもっと知る必要がある」

「価値?」

「お前の身体には、お前が思っている以上に最先端の技術が詰まっているんだぞ。この研究所にとって、お前は金の塊みたいなもんだ。それが勝手に無くなってみろ、大騒ぎで捕まえて連れ戻そうとするに決まっているだろう」

「それじゃ僕の身体は、僕のものじゃないみたいだね・・・」

「お前のものじゃないんだよ。ここにいる限りはな」

「そうなのか・・・」


真剣に悩んでいる様子のシュカヌに、ニーガ・ルージが振り返り声をかける。

「まあ気にするな、そのために今逃げているんだから」

「うん、まあいいや。そういう事にしとこう!」

「・・・お前のその気楽さは、すばらしいな」

「いや~、そんなに褒められると・・・」

「・・・いや、褒めていないぞ」


そのうち二人は、研究施設から少し離れた小屋のような場所に近づく。

「ここだ、暗いから足元に気をつけるんだぞ」

「こんな所があったんだ」

研究施設に閉じ込められっぱなしだったシュカヌが、その場所を今まで知らなかったのは当然のことだった。


「きたねアンタ達・・・」

そのとき暗闇の中で二人を出迎える女性の声が響いた・・・。




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