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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.18 最後の命運

シュルナフ研究所から離れた郊外の屋敷。

日が地平線のかなたへ沈みかけた夕暮れ時に、いつもの男とエンゾの姿があった。


だがいつもと違うのは、椅子に深く腰掛けた男は頭に包帯を巻いて、右腕はギブスで吊り上げられていた。

連れている護衛の兵士も、彼の近辺に屋敷周辺の警備と、いつもならば七、八人はいたはずだが今回は二人しかいない様子だ。


「ウツワとなる体が完成いたしました」

「・・・そうか」

男は荒い呼吸を抑えながら返答し、エンゾの報告を促した。


「まずはこちらで確保した子供をサンプルに使って、タマウツシを実行します。そしてしかるべき成果となる実績ができたのち、ハザサ大僧正のタマウツシに取りかかります」

「・・・大僧正の生体データは持参した。おい、アレを」

男が護衛の兵士に合図を送ると、兵士は小ぶりのカバンを持ってくる。

兵士はそれをエンゾに手渡すと、すぐにまた扉の向こうの護衛へと戻っていった。


「・・・その子供のタマウツシが成功したなら、すぐに取りかかれるように体のほうは準備を進めておけ」

「はっ」

「・・・急げ。大僧正は今のところ小康状態を保ってはいるが、予断を許さない状況であることに変わりはない」

「わかっております」


「戦線に投入した、オートマタのほうはいかがでしょうか?」

「・・・動作は問題ない、被弾しても一般兵よりも強度で勝る。しかし人間と比較しての話だ。コストの割にそれほどの効果が上がっているのかという疑問は、軍部の中で出始めている」

「・・・・」

男の言葉にエンゾは、なにやら考え込むような仕草を見せる。

「・・・お前が気にすることはない。その先は、我々の考えることだ」

「はっ」


「・・・それよりもお前は、その子供のタマウツシを成功させることに集中しろ。我々の最後の命運は、お前にかかっていると言っても過言ではない」

「了解しました」


「・・・今日の話はここまでだ」

そう言いながら男が扉の先の兵に合図を送ると、兵は男に駆け寄ってくる。そして肩を貸しながら椅子から男を立ち上がらせると、重い足取りで扉の先に向かう。

男はエンゾに振り返ることもなく、護衛の兵に連れられ去っていった。



そしてこれが、エンゾと男の会った最後の日となった・・・。




「あの女、ホントにまだ役に立つの?」

ミーティングルームでエンゾと向き合い、メリザは悪態をついた。


「・・・何故ですか?」

「子供の病室で、抜け殻になっているそうじゃない?」

「精神状態は、かなり危険です」

「ウツワとなる体はほぼ完成したし、彼女はもう必要ないんじゃない?」


「研究に完成などというものはありません。彼女の持つ知識と理論そして思考回路が、これからも我々の研究に大きな利益をもたらすことは明確です。彼女を失うのは大きな損失となるでしょう」

「何だかヤケに、あの女にこだわるのね」

「そんなことはありません。事実を言っているだけです」

「ふーん、そうかしら?」

そう言いながらメリザは、ニヤけた笑みを浮かべる。

女同士のライバル心というものなのか、時にメリザはアリアのことになると変な執着や嫉妬を覗かせることがあった。

それを横目に見ながらエンゾは、面倒くさい女だと思いながらも言葉を続ける。


「なので彼女の精神状態がまだ保たれているうちに、マザーシステムとアリア博士を接続して、彼女の知識をマザーシステムにコピーします」

「まあ、今の彼女なら簡単でしょうね。抵抗できるだけの力も残ってないでしょうし」

メリザは一転して興味なさそうに、適当な返事を返す。


「それよりも・・・。あの噂、研究員の失踪事件だけど、研究員達の中でかなり大きな話になっているわよ」

「・・・・」

「あのアリアから押収した生体金属・・・」

「それはありません」

メリザが何かを言おうとした、その言葉をさえぎってエンゾが断言する。


「でもどう考えても、そうとしか説明がつかないでしょう?」

「いくらなんと言われようと、違うものは違います」

ムキになって否定するエンゾに、メリザはこれ以上の会話は無意味だと感じた。

「まあ別にいいけど。現場のことを考えたら、なにか手を打たなきゃ取り返しがつかなくなるわよ」


「心配は要りません。手は打ってあります」

そんなメリザの心配を打ち消すように、エンゾは静かに語った・・・。





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