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マブイ【魂】プロジェクト  作者: °Note
Chapter Ⅱ 追憶の果て
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sect.11 更迭

ミーティングルームに集まった研究施設の主要メンバー。

今日は定例の報告会が行われる日だった。


アリアは前回の報告会で準備を促された、生体金属の途中報告をまとめたレポートを手に席に付く。

彼女の隣にはトナムの姿があり、この席が二人の場所として定着していた。


「どうじゃ、報告書はまとまったか?」

顔色のすぐれないアリアに、トナムが語りかける。

「・・・ええ。でも明確でないことが多すぎて、思ったようにまとまりません」

「気にすることは無い。その明確でないことをはっきりさせて、問題点が何なのかを協議するための報告なのじゃから」

「・・・そうですね」

そう言いながらもアリアの表情はすぐれない。


「始めましょうか」

部屋に最後に入ってきたエンゾが席に着くなりそう言い、雑談をしていたメンバー達が話をやめる。


報告会は各メンバーの直近での活動報告や、前回の報告会で協議した内容の経過報告などで進んでいく。

数人の報告が終わりアリアの順番が回ってきた。

「前回の報告会でまとめるように依頼のあった、生体金属実験の報告内容です。お手元の資料をご覧ください」

各員はそれぞれ手元のパネルを操作して、アリアのまとめた資料に目を通す。


「・・・なるほど」

資料を目にしたエンゾが小さくつぶやく。

「なにか?」

「いや、面白いなと思いまして。ネズミほどの小さな動物とはいえ、その遺伝子の情報量は膨大なものであっただろうに、わずかな時間ではあるが形を成して機能するとは」

すばやくエンゾの態度に反応したアリアに答える。


「確かに前回メリザ博士が言われていた、その機能を維持する為のエネルギーが不足していたのではという意見は、的を得ていたのかもしれません・・・」

悔しいがそれを認めざるを得ないことに、歯がゆさを感じながらアリアが言葉を繋ぐ。

報告会の前から、彼女の表情がすぐれなかった理由はそこにあった。


しばらく何かを考え込んでいたエンゾが再び口を開く。

「・・・機能を限定させてみてはどうですか?」

「どういう意味ですか?」

「今回のサンプルでは、生物一体分の情報を取り込ませる仕様になっていますが、例えば・・・」

もったいぶるようにエンゾは一呼吸置く。


「機能を分担させるという意味と、エネルギー供給の課題をクリアするためにオートマトンとの融合という選択はできませんか?」

「オートマトンを骨格にして、生体金属を貼り付けるということですか?」

「そうです。それぞれに足りないものを補って、補完しあえばより高度なところまで持っていけるような気がするのですが」

「まあ実験段階では、そちらのほうも進めてはいますが」


「あなたの言葉は、腕などの部位に限定した実験を差しているのでしょうが、そんなモノではありません」

「?」

エンゾの言葉に首をかしげるアリア。


「オートマトンとの融合で、ヒトを造れますか?」

「な!?」

実験でかりそめの命を扱う彼らの中にも、タブーというものはある。

そのもっとも大きいものがヒトを造るということだった。


「まあ厳密にはヒトではなく、ヒトの形をした人形を造れますか?と言ったほうがいいでしょうか」

「どちらにしても同じです!」

アリアにはエンゾが何を考えているのか想像もつかなかったが、偽りの魂を植えつけられたオートマトンをベースに造られたヒト形。いわば完全支配で自在に操れるヒトなど、混乱の種になるのは火を見るより明らかだった。

そんなことに手を出してはいけない!アリアは意識するまでもなく直感した。


「・・・タブーですか?そんな事を言っている間にも、ヒトは滅んでしまいますよ」

「それとこれとは話が別です!」

「別ではありません。全ての現実と人類が行っている事、行おうとしている事の理由は繋がっています」

「そんな抽象的な表現で、はぐらかさないで下さい!」

まくしたてるアリアに、エンゾは話の折り合いがつかないと判断した。


「いいでしょう、現時点をもってアリア博士を更迭こうてつします。現在進行中のアリア博士のプロジェクトは、全て私が預かります」

「な!?」

エンゾの言葉に、アリアと隣席のトナムが激しく反応する。

「ちょっと待て!」



慌てて間に入ろうとするトナムだったが、エンゾの意志は固く決断が覆ることは無かった・・・。



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