銀の桜とセーラー服(始、手紙)
はじめまして。近藤絹と申します。
今回は恋愛ジャンルのお話を投稿させていただきました。
『ちょっと素敵だった頃の』――ロマンチックな恋人たちの悲しい誤解を私達が解いてみせる!
彼らが自力では辿り着けなかった互いの秘密を、まわりの者たちがじりじりしながら解きほぐしていくお話です。優しくて頼りになる仲間たちとの温かいけどちょっと切ないドキドキの日々を描いてみました。
お読みいただけたら嬉しいです。
『彼ら』がその手紙を受け取ったのは水曜日の昼過ぎであった。
どっしりと厚みのある封筒の裏には、彼らが初めて見る新しい名前が記されていた。
その幸せな名前は間違いなく彼らのおかげで生まれたものなのだ。
彼らがいなければ、その名前を声に出して読み上げることも、その目でしっかりと見つめることも決してなかったはずだ。
その手紙の差出人は『佐倉璃久』という。
封を開けると新婚の二人の写真が十数枚、恥ずかしげもなく入っていた。
証明写真を撮る時のように背筋を伸ばしてかしこまった姿の写真も混じってはいたが、ほとんどは楽しそうに笑っている修学旅行生のような写真ばかりであった。
それと数枚の美しい便箋が綺麗に折られて入っていて、折り目の端に『みなさんで読んで下さい』と記されていた。
「早くしてよ」とせかされたさくらは早口でそれを読み上げた。
聞き手の想像した通り、その手紙は感謝と確かな幸せを伝えてきた。
彼らはさくらが読み上げるその声を聞き、共に穏やかに笑い、少しだけ恥ずかしくなったりした。
ここ数週間、彼らは素晴らしい結末の余韻に完全に支配されていて当たり前の日常に戻れないでいた。
その余韻を振り切ってしまうことを寂しいと思いながらも、彼らはきっと、何かはっきりとした線引きのようなものを必要としていたのだ。
そしてその午後、会社の郵便受けに届けられた璃久からの手紙は、まるで過去と現在を行ったり来たりするようなせわしない一年に区切りをつけて『不思議な時空旅行はもう終わったんだよ』と告げるかのように、こう締めくくられていた。
『みなさんが築いてくれた大切なスタート地点からまだほんの数歩進んだだけでしょうけど、私にはスタートの白いラインがこの数ヶ月の不思議なドキドキからの卒業のようで寂しい気さえしています。
本当にあの頃に帰らせてくれてありがとう!そして今やっと、あの頃にさよなら出来るのかもしれません。
始まりはやっぱり、誰かさんのデザインした桜の花のペンダントでしょうか?あれは幸せを運ぶペンダントだったのかも!帰ったらゆっくり話しましょうね。
家に帰るのが楽しみでたまらない母、佐倉璃久より』
◇◇◇◇◇
「まあそうかもな。俺達のおせっかいは桜のアレから始まったんだ」
こう言ってニヤついているミキオにさくらははっきりと言った。
「いいえ、最初からこうなることが決まっていたの。始まりなんて元からないのかも。これは本当にみんなのおかげでみんながいたからもう一度動き出しただけなのよ」
―――まずは、さくらが幸せを運んで来たという『桜の花のペンダント』についてである。
はじめまして。このお話をお読みくださりありがとうございます。
最初の部分にはなかなかに辛い場面もあるのですが、少しずつ明るい方向に向ってゆく形になっておりますので、どうか安心してのんびりお付き合いいただけたら嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




