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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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進撃1

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。

火曜日と金曜日に更新を行います。


「ヒルダ様、(あと)1時間で日の入りです」

フローラがヒルダに馬首を並べる。


「地図では、この先2キロの所に野営出来る場所がありますね」

同じく馬首を並べるベルンに確認する。


「確かにちょっとした高さの台地があったはずです。先行して確認してきますね」


「お願いします」


「了解です。2個小隊続け」

ベルンを先頭にして10騎からなる小隊が2隊続く。


ウノシルディスを朝に出発してから8時間、途中1時間程の休憩を挟んで9時間、全行程の半分の70キロ程を進んだ事になる。


1日に70キロは軍としては驚異的な進軍速度であるが、起伏に乏しい平坦な道であった事もあって、学園の生徒にとっては通常の行軍ペースでしかなく、まだまだ余裕がある。

一方、ベルン直属のブルマイスター騎士団は、一刻も早く駆けつけたい気力が今日の所は疲れを忘れさせている。

そして、ウノシルディス騎士団は、慣れない長距離の行軍に疲れ気味ではあるが、フローラ婚約者候補という餌に釣られて男の意地で頑張っている。


「伝令ーーーー!伝令ーーーー!」

ベルンからの伝令が戻って来た。


「伝令ご苦労。報告せよ」

伝令の報告は下馬の必要無しと言う学園のやり方が一般化したので、伝令は騎乗のまま報告を行う。


「ベルン様からの報告です。

今晩の宿営地として問題なし。

周辺の偵察を引続き行う。

以上です」

伝令は騎乗のまま報告を行ない敬礼をする。


「ご苦労であった。後続にて休憩せよ」

フローラがこれも最近一般化しつつある答礼を行ない、伝令を下がらせる。


「ヒルダ様、お聞きの通りです」


「了解しました。2キロ先で今晩は野営する事にします。フローラ、各部隊に伝達して下さい」


「かしこまりました」

フローラが伝令を集める。


総勢で約900名、全員騎兵なので部隊全体の長さが2キロ弱とやや散漫な行軍陣形となり、命令を伝えるには伝令が必要となっている。

横合いから奇襲を受ければ一溜(ひとたま)りもないが、ベルンに前方10キロを放射線状に索敵させているので、ヒルダもフローラも今は陣形には拘っていない。


「フローラ、この辺りは平地も多いし、森と言う程でもないが森林資源としての林もある。

リール川という水源もあるし、(くだ)って行けば学園の近くまで行ける水運もある」

私は周辺を見渡しながら尋ねる。


「・・なのに放置されている理由ですね」

フローラは川を見ながら私の質問を先取りする。

(お姉様とフローラの間では良くある光景ですね)


「ええ」

私はちょっと道が広がっている場所で道を避けて馬の足を止めた。


「今は秋なのでリール川はこれ位の川ですが、春先になると雪解けの洪水が酷く、夏まではあの森の辺りまで沼に成ります。ですので町など作れません」

フローラも足を止めて説明する。


「成る程ね。宿営地は少し高台になっているから、地面が硬いわけね」

今晩の宿営地は周りよりも5メートル程の高台にあり、長さ300メートル横幅100メートル程の船型に地図ではなっている。


「情報通りであれば、1000名ほどの宿営地としては十分でしょう」

フローラが地図の高台を指さして言う


「リール川の方は警戒を薄くしても大丈夫でしょう。どうせ一晩中、馬の世話やら沐浴やら何やらで人が出入りするでしょうから」


「そうですね、まあ、別の意味で警戒は必要になりますけど」


「ですので、敵は来るとすれば森からと考えて森に向けて陣を構える様に宿営地を設営しましょう。各部隊長に指示をお願いします」


「かしこまりました」

ヒルダの指示をフローラが命令として伝令に伝える。


   ◆    ◆    ◆    ◆


「ベルン、森と宿営地の中間線当たりに警戒線を引くべきだと思うのだけど」

宿営地に到着してベルンと合流したヒルダは、貴族的に自分の意見を相談というオブラートを着せて主張する。


「かしこまりました。しかし、ご安心を既に手配致しております」

問われたベルンは、ヒルダを安心させようと答える。

無論、ベルンに別に他意は無い。


「そうですか、これは余計な事を申し上げました」

しかし、普段貴族との社交的付き合いが多いヒルダは、言葉の裏を読み過ぎてしまう。

なので「能力を疑っている」と言う裏の意味は無いのだと言う事を説明する為に謝罪の言葉を加えてしまう。


それを見過ごすベルンではない

「・・いえ、謝罪には及びません。

ヒルダ様が気付かれた事を確認する事は当然の事です。

ただ、社交界と戦場では言葉の使い方が異なります」

自ら男爵家当主でもあるベルンは、苦笑いしながら答える。


「言葉の使い方?」


「はい、例えば今の話ですとシルディア様なら『警戒線は?』とおっしゃっられると思います」


「成る程、すると答えは『既に手配済みです』となって『宜しい』となる訳ですね」


「その通りです」


「有難うベルンハルト殿。これから努力します」


「いえ、ヒルダ様が軍を直接率いるのはコレが初めてですよね。

言葉の裏の読み合いが普通の社交界と速度と正確さが最優先される軍隊とでは、言葉の使い方が異なります。

ま〜シルディア様が特別と言うか特殊なので、指揮官としての勉強はコレからされれば宜しのです」


「ありがとうございます。ベルンハルト殿。しかし、ベルン殿から見てもお姉様は別格ですか」


「その答えを聞きたいですか。ヒルダ様」

ベルンは結構、オチャメだったりする。


「いえ、お互い思う所が同じであれば結構です」

二人して溜息をつくが何故か楽しそうな二人であった。


「さて、部隊長が揃った様です」


「そのようね。行きましょう」

二人は、既に宿営地に集合したフローラと部隊長達に合流する為に向う。



   ◆    ◆    ◆    ◆



「皆、今日の行軍ご苦労であった。今宵は、此処を宿営地とする。

出発は6時。

各部隊は、通常態勢で休息せよ。

飲酒も許可する。

ま〜明日の行軍に影響しない程度にほどほどに。

ベルン、警戒の詳細を宜しく」


「はい、ブルマイスター騎士団は、今から20時まで交代で警戒する様に。

20時から6時まで周囲の警戒は、ウノシルディス騎士団が担当。

100名ずつ2時間毎の5交代で行う」

ベルンがブルマイスター騎士団、ウノシルディス騎士団の各部隊長に指示を行う。


「宿営地の縄張りはベルンハルトの指示に従う様に。何か質問は?・・・・・無ければ解散」

特に質問は無さそうであったので、私は部隊長を解散した。


「カチア」

私は、呼び止める。


「はい、ヒルダ様」

『私はコレで失礼します』とクリスは敬礼して先に部隊に戻る。


「部隊の警戒とは別にカチア隊で警戒部隊を組織する様に」


「はい、ヒルダ様。心構(こころ)えております」

カチアはチラッとベルンを見るが、特に会話を交わす事もなく、部隊に向かう。


「今の指示は何ですか」

カチアが離れたタイミングでベルンはやや不満げに尋ねる。


「ソレはね、ベルン殿。私達は女性ばかりで行動していたから、平気で川で裸になって沐浴したりするからよ」

私に代わって答えるフローラは、長い黒髪をかき上げ、白いうなじを見せるポーズをベルンに向かって決め、微笑を浮かべる。

(その攻撃は完全にオーバーキル、(やり)すぎよ)


騎乗している馬まで『フリーズ』したベルンは、フローラの白いうなじから目が離せない。


そんな悪戯をカチアの婚約者にするフローラに

「(お姉様の影響が・・・)未婚の貴族の淑女の肌を見た者は、平民なら断種、貴族なら結婚が責任の取り方です。行軍中は、極力そういうトラブルは避けたい。その為の警戒です。・・・チョン」

私は右手で手刀を作って上から下にストンと擬音付きで振り落とす。

(何をチョンしたのかは、想像にお任せします)


私とフローラに『即死レベルの罠』がそこに存在していた事を教えられたベルンは完全にフリーズ。


「承知致しました。その警戒線より中のは絶対に近づかない様に全員に周知徹底致します」

完全にフリーズしたベルンの代わりにライナーが答える。

(隊長、フローラ様に魂を抜かれた今の姿をカチア様が見ていたら、かなりヤバイですよ)

ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。 6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。

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