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頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか  作者: 梶 ゆう


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疾風の如く5

魔法とか転生とか全くない物語です。

メインテーマは、格好のいい男前なお嬢様の物語。

火曜日と金曜日に更新を行います。


大まかな方針が決まったので会議は解散するが、各人明日までにする事は山程あるので全員恐らく今夜は徹夜だ。


平時ならば兎も角、戦場であれば疲れたからと休息を取る理由には行かない。

休める時に休んで足りない分は、痩せ我慢で耐えるのも貴族の嗜みだから。

私は会議を解散し、フローラだけを呼び止める。


「カチアとクリス、ベルンを呼んでもらえるかしら」

時刻は、23時を回っている。

3人にとって重大な情報が得られ以上、休んでいる暇は無い。

「かしこまりました。ですが既に別室に待機させております」


「さすがね。でも何時連絡したの?」


「シルディ様がワインを準備させた時に侍女にメモで命じました」


「口止めはした?」


「いえ、特にはしていませんが」


「まあ構わないけど明日、飛んでもない事になるから貴方も付き合う事。

拒否権は有りません。びし!」

私はフローラを効果音付きでポーズを決めて指差す。


「まっそれは置いて置いて、皆を呼んできますね」

とサラリと流して私を置いて駆け出すフローラ。

(え〜と、これってそんなに軽い問題じゃないはずなんだけど、違うのかしら、私の勘違いなのかしら)


程なくして、フローラが皆を連れて戻って来る。

「シルディ様、お連れして来ました」


「夜分に済まなが、3人にとって重大の情報が入ったので来て貰った」


「問題ありません」

3人を代表してカチアが答える。

(これがこの3人の力関係な訳ね。それにしてもカチアの顔は赤いし、ベルンはカチコチだし、クリスの目が吊り上がっているのは何故、3人で一体何の話をしていたのかしら)


「まあ、座ってくれ」

私は苦笑混じりに4人を座らせる。


ワインの注がれたグラスが用意されたワゴンから当然の様にワインを配るカチア。

そして、それを自然に受け取る私。

シャワーを浴びてスッキリしたカチアの金木犀の香、心休まる一時。

(じゃなくって、)


「先程、新しい情報が届いた。 内容は「ブルマイスター要塞は健在」3日前の情報よ」


「えっ」と驚く3人。

フローラはメモにみんなを招集する理由までは書かなかったらしい。


「フローラ様、此処に呼ばれたのは、私とベルンの婚約の件と私とクリスが髪を切った件と聞いていたのですが」

沈黙のカチアのマシンガントーク。

顔を真っ赤にしてまくし立てる。


「それの話も有ります」

澄ました顔で受け流すフローラ。


「まあ、その件は後で聞くとして」

私はワイングラスを高く掲げて立ち上がると4人も同様に立ち上がる。


「ブルマイスターに」

「「「ブルマイスターに」」」


4人は同時にグラスを捧げワインを飲み干した。



「ブルック、そこに居るんでしょう。

みんなにワインのお代わりよ」

私は、隣の部屋に向かって言う。


「全くしょうがないな〜〜全部バレてるんだから」

扉が開くとブルックがワゴンにワインやらツマミやらを乗せて入って来る。

とても次期侯爵家当主のする事では無い。


「代わります」

カチアが立ち上がり世話を仕出すと副隊長のクリスも手伝をする。

婚約者と妹に世話を焼かれて狼狽えるベルン。

「どうせ作戦会議で無礼講なんだし手酌で良いわ」

と私はワインボトルを掴んで自分のグラスにダボダボと音を立てて注ぐ。

(ヒルダがいたら、又淑女の嗜みがとか言われそうね。幸いここに私に意見出来る者は居ない)


「シルディ様の(おお)せだ。みんな手酌でやれ」

フローラが、自分とクリスのグラスにワインを注ぎ、カチアにボトルを引き渡す。

(意見はしなくても私に罪を被せて乗ってくる悪い親友(フローラ)はいる)


「そう言う事なので、4人には兵を率いて明日ブルマイスター要塞に急行して貰う。要塞まで最低3日は掛かると思うから、間に合うかどうかは本当にギリギリだと思う。

最悪の事態も考えられる事を忘れないで。フローラ続きをお願い」

説明の続きをさっきからワインを手酌で飲んでいるフローラに促す。


「総司令はヒルダ様、総隊長は私が務める」

「フローラ様、兵力は?」

カチアは秘書から部隊長にジョブチェンジ。


「カチアとベルンには今までの部隊をそのまま率いて貰う。

私は500人のウノシルディス騎士団を率いる」


「総勢850騎ですか、敵の兵力は分かりますか?」

カチアの質問にフローラはブルックを見る。


「シルディ機関の偵察では、およそ6000。

ウノシルディスの攻城に当たっていた敵軍の状況から考えて、大幅な増員が行われたとは考えにくい。

恐らく、積極的な攻城は行わず押さえの兵なのだろう。

ま〜3日前の情報だが」

ブルックがフローラに代わって答える。


「敵地を跨いで3日前の情報が得られるとは、シルディ機関の情報力は噂通りですね」

ベルンがブルックを見て言う。


「まだ機関の詳細は教えられないよ。少なくとも貴官の立場がフローラやエリーと同じ位にならないとね」

サラリとハードルを上げるブルック。

確かに侯爵家と子爵では貴族としての格がまるで違う。

しかし、ブルックのいう同格とは単純な爵位の事では当然ない。


(ブルックって同性に厳しいのかしら)


(シルディ様、ブルックとベルンって同じ年ですよね)


(あ〜それでライバル扱い)


(と言うか、シルディ様に近づくのを警戒してませんか)

私とフローラのレベルと言うのは、目線だけでコレ位の会話が出来るのよ。


「ブルック様、この二人は放っておいて良いので進軍ルートをご説明願います」

私の秘書でもあるカチアがブルックに話を進めさせる。

(ちょっとカチア、上官二人に対して酷くない)


「・・・そうだね、進めてよいかなベルンハルト」

(ブルックは、私とフローラのやり取りに意識を奪われていたベルンハルトを現実の世界に引き戻す)


「ブルックハルト殿、お願いします」


「ウノシルディスから一旦西に迂回してからリール川沿いを南下、

ここから東に進んでブルマイスターに入ります。

馬車が通れる道は無いので途中に町や村は有りませんが、騎馬であれば問題無く通過出来ます」

ブルックが地図上を指差しながら説明する。


「その道なら知っている。

ウノシルディスへの極秘伝令ルートとして林に偽装はしているが、馬道として整備してある。

当初そのルートで脱出するつもりだったが、馬車が使えず大勢の難民が避難するには無理なので諦めた。

それにしてもこの地図は素晴らしい。極秘にしてあった休息所まで調べられている」


「やはりご存知でしたか。

このルートで800騎の騎馬隊の移動に何か問題は有りますか」


「騎馬だけで行軍して敵を殲滅するだけならば問題は無いでしょう。

問題があるとすれば、入城後の防御戦ですね」

6000人の攻城軍の撃退を1000人で問題無しとスルーするベルン。

私の率いる弓騎兵のこの時代に於いては圧倒的な攻撃力を理解したらしい。


「同感です。本隊が要塞まで到着するまで最短でも10日、恐らく20日は籠城して貰う必要が有ります」


ブルックがウノシルディスから街道沿いにブルマイスター要塞までをなぞる。


「糧食に付いては、砦には十分あるから問題はない」

砦の内情にもっとも詳しいベルン。


「シルディア様、アーレイは何発持って行けますか」

カチアが弓騎兵指揮官として質問する。


「200騎の弓騎兵に一人40発で予備を考えて1万発を考えています。

防衛戦であれば、侵攻ルートも絞れるでしょうし騎上では無く城壁からの攻撃であれば、射程精度も上がりましょう」


「先の会戦では、アーレイは8000発、ロングを700発を使って4万の敵を駆逐しています。

今回は籠城戦ですから、会戦よりは効果が上がるでしょう」

フローラが補足する。


「但し、要塞の防御が不可能な場合は、要塞を放棄して撤退する様に。

これは命令書にしておきます。

もし必要な時は間違無く履行する事」

フローラ、カチア、ベルン、クリスの4人が頷く。


「部隊の準備はヒルダとエリーにバルタザール殿が徹夜で行うから、4人は7時に此処に集合する事。他の幹部にはその時に作戦を説明する」


「準備をお任せしても良いのですか」

部隊の裏方仕事を全て受け持っているクリスが不安げに尋ねる。


「軍事物資と標準備品についてはね、個人持ちの物は各人で用意する事に成るけど、今更確認が必要な素人じゃ無いでしょう」


「それはそうですね」

納得するクリス。


「それでは他に質問はある?」

一同を見回す私。


「無さそうね、それでは私からひとつ質問。カチア、ベルン、貴方達は婚約をする意思はあるのかしら」

私の放り込んだ特大の衝撃に一同は氷った。

ブルマイスター要塞健在なり この情報によりウノシルディス解放の余韻に浸る間もなく援軍を組織する事となります。 6万の残敵が健在な中、戦術的には不味い作戦が開始されます。

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