マリア様 新型の石けんと化粧水、魔法シャワーを作る。1
この世界には石けんという概念もなければ化粧水という概念もない。騎士達も練習後になんだか気持ちが悪いなといいながら炭で体を洗う程度だ。
ご婦人も香油で幾分かごまかしているが、それでも石けんに勝てる香りのあるものにはならない。
更に石けんがないということはそれだけ不衛生になり疾病が増えるということだ。ということなので私は石けんを作ることにした。
用意する物は海藻を燃やして炭酸ナトリウムを得て、その同じ要領で水酸化ナトリウムを得ることが出来る。他には海水と硫酸を混ぜて硫酸ナトリウムを作りそれに石灰(炭素)と石灰石(炭酸カルシウム)をまぜて焼くという方法でソーダ灰が作れ、そこから大量の水酸化ナトリウム「苛性ソーダ」の大量生産が出来る。
今回は前者の案を使うことにした。水は徹底的に濾過をして不純物やミネラルを取り除き純度の高めた水、つまり精製水を使う。
私は城の中庭でその作業をしていると陛下がやってきた。
「なにをしてらっしゃるんですか?」
「陛下、一応マスクではなかったこの布を口の周りに巻いてください。危険なので」
陛下に私はマスクを渡すと陛下はそれをつける。
「一応作りたいものがあるのです、化粧水と石けんです」
そこで陛下は顎に手をあててから考える。
「けしょうすいと石けんとはなんですか?」
「化粧水はご婦人が美しくなるための道具と思ってください。そして石けんは身を清めるために必要なものです」
「身を清めるとは教会の聖水のようなものですか」
「いえ全然違います。できたら陛下に使って頂くのでそれまで公務でもなさっていてください。時間が掛かりますので」
「いえ、私はここでなにをするか見ています。マリア様のおかげで業務改革ができたのである程度自由に時間が作れるようになったので」
そんな陛下は私を見て朗らかに微笑んだ。私は陛下の顔を見ていられなくて石けん作りに精を出すことにした。
精製水に苛性ソーダを溶かしある冷水の入ったボールに入れある程度待つ。温度がある程度まで下がると刺激臭がする。温度が下がりすぎて結晶化しない間にかき混ぜていく。
ボールの中に香油を入れ焚き火をしている上に置き、ある程度の温度まで温めると湯煎から下ろす。
香油の入ったボールに少量ずつ苛性ソーダを入れる。それを真剣にかき混ぜていく。全体に白っぽくなるまでかき混ぜると生地がもったりしてくる。その状態になると木型の枠組みの中に入れていく。
「なかなかに時間と労力がかかるものなのですね」
「はあはあ、はいそうでございますわ」
「私が混ぜればよかったのではないですか?」
「いえ、慣れていない方がすると悲惨なことになりますので」
「王妃時代もこういうことをなされていたのですか?」
「とんでもないことですわ。今はモーリス家の令嬢だからこそできるのですわ。さて型に入れましたので、24時間後に陛下にこの石けんを使って頂きます。よろしいですか?」
「是非に使ってみたいですね。それにしてもマリア様はまるで一角の職人のように見えるのは勘違いですか?」
「おほほほ……か、勘違いですわ」
なんと私は誤魔化すことにした。そんな私を見て陛下はうーんと首を捻っている。
「鉄の上に薪を置いて焚き火をしたのでお綺麗な中庭は綺麗なままに保たれておりますのでご安心を」
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
「こちらこそ、勝手に中庭を使って申し訳ございません」
そんな会話をした24時間後私は陛下にカットした石けんを渡すことにするのだった。恐らくひどく驚かれるだろうなといういたずらな気持ちも浮かんだが、子供の遊びのような軽いものなのでいいかなと思った私でした。




