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涙の流星群  作者: 最上優矢
第四章 忘却の夏

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最大の理解者

 海堂さんからの返信には、このようなことが書かれていた。


「初めまして、翔くん。

 ぼくはきみたちを助けたい。

 だから、ぼくはきみたちを助ける。

 きみたちを救う。

 なぜなら、ぼくには幻想事件の被害者を救うという使命があるから。

 だから、ぼくは翔くんたちを助け、最終的には救うつもりでいる。

 先ほども言ったように、それはぼくの使命だ。

 ぼくに任せてくれ。

 しかし、勘違いしないでほしいのだが、ぼくの役割は司令塔だ。

 あくまでも、現場で動くのはきみたちのほうだから、そこはくれぐれも忘れないでほしい。

 で、ついさっきの話だけど、きみたちの情報は天音から色々と聞いているんだ。

 そう、色々とね。

 いつ頃、きみたちと話すことができるかな。

 ぼくのことは気にせず、きみたちだけの都合で、時間と場所を決めてくれ。

 そんなわけだから、頼んだよ」


 このメールの返信を読んだら分かると思うが、海堂さんはぼくらの期待を裏切らないような優しい人だった。

 優しいばかりではなく、彼はぼくらを助けようとしている。

 ぼくらを救うことに積極的であり、誰よりも情熱的でもある。

 つまり、ぼくらの最大の理解者なのだ。


 姉が海堂さんを好きになるのも、なんだか分かる気がする。

 それほどまで、海堂さんは人情味のある優しき青年だった。


 ぼくが海堂さんからの返信を読み上げると、ほぼ全員からどよめきが起こった。


 徹は感心したようにうなり、それから「すばらしい、の一言に尽きる」と海堂さんを褒め称えた。


「この方なら、きっとおれたちを……夏奈を救ってくれることだろう。

 でかしたぞ、翔。おれたちの勝利は、もう目前だ」


 徹はニカッと笑った。

 泣きそうになりながらも、ぼくは大きくうなずいた。


「正直、この進展は大きいよ。希望があるだけで、こんなにも世界は明るくなるんだね」


 そうぼくは言ってから、さらに大きくうなずく。


 すると、

「何それ、バカみたい」

 と思わぬ茶々が入った。


 夏奈さんだ。


「さっきと言っていることが違いすぎて、笑えるんだけど。

 勝手に自分たちの住む世界をけなしておいて、いざ状況がよくなれば、『世界は明るい』とか……もうさ、いいかげんにしろ、って感じ。

 こんなにも世界は明るくなる? はっ、笑えない。共感できない。

 だってさ、こんなにも世界はわたしのことが憎いんだよ? わたしの存在をなかったことにしようとしているんだよ? こんなにもわたしは世界のことが憎いんだよ?

 わたしから見たら、世界は真っ暗で真っ黒。色なんて、黒の一色だけじゃん。

 わたしから見たら、世界は全然明るくない。

 まったく希望はないし、希望のようなものも見えてこない。

 え、それはわたしだけだって? じゃあ聞くけど、みんなにはさ、この世界がどのように見えるの?

 わたしにはこの世界が真っ暗で真っ黒にしか見えないし、ほかに見えるとしたら、それは絶望だよ。

 希望じゃない、これは絶望。

 みんなにはこの絶望……見える? それとも見えない?

 よかったら、わたしに教えてよ。わたし、それが知りたいの。……で、どうなの、遙香。わたしを苛立たせるようなことを言ったら、すぐさま絶交だからね」


 色々と負の感情をぶちまけたかと思えば、夏奈さんは遙香さんを質問の回答者として選び、彼女に怒りの矛先を向けた。

 いや、それは違うのかもしれない。

 もしかすれば、夏奈さんは遙香さんの言葉で救われたいのかもしれない。


 この流れで、遙香さんが夏奈さんに酷い言葉を言うとは、やはり思えなかった。

 案の定、遙香さんは満点の回答をした。

 が、ぼくの予想とは違い、最後は厳しい言葉でもあった。


「結論から言うけど、夏奈が見てしまった絶望、それはわたしにも見えるよ。

 ただし、あなたの目から見える絶望は、わたしの目から見える絶望ではないけどね。

 いや、これはふざけているんじゃなくてね……要するに、希望や絶望は人それぞれだと思うのよ。

 人それぞれ、希望や絶望の見え方や感じ方が違うのだと思うの。

 じゃあ聞くけど、わたしの絶望があなたには見える? 具体的にはどういうもの? どれほど大きい? どんな色をしているわけ? どれほど、それはわたしを苦しめ、傷つけるの? ……意地悪な質問だっていうのは分かっているけど、つまりはそういうことだよ、夏奈。

 結局のところ、人の感情は世界にひとつだけのもの。同じものなんて、存在しない。

 みんな世界にひとつだけの感情を持っていて、それぞれ見え方や感じ方が違うの。

 でね、大事なことを言うけど……希望が見えない、そうあなたは言ったわね。

 それはあなたが“希望を見ようとしていない”からよ。

 いくら、あなたの中に希望があっても、あなたが希望の存在をあると認めなくては、それは存在していられない。

 いえ、それはきれいに言い過ぎね。

 あなたは希望から目をそらしている。だから、あなたには希望が見えない。というか、あなたは希望を見ようとしていない。

 あなた、もっとシャンとしなさい。いいわね、夏奈」


 夏奈さんを見ると、彼女は目に涙を浮かべていた。

 それは感動の涙か、悔し涙か、はたまた悲しみや怒りの涙か。


 しかし、それはすぐに分かった。


 夏奈さんは鼻をすすると、それから顔をしかめたかと思えば、唐突に吹き出した。


「遙香ってば、昔から変わらなさすぎ。

 その持論、小学生のときに聞いたんだけど。

 あんたさ、わたしをうれしくさせて、どうする気だっての。

 まったく、これだから遙香は苦手なんだってば」


 夏奈さんは詩織さんからティッシュペーパーを受け取ると、それで鼻をかんだ。


 まさかの嬉し涙だったようだ。


 夏奈さんが鼻をかんだあと、ぼくらは話し合いを再開させた。


「で、海堂さんにはどう返信するのよ、翔。

 これはあなた宛に届いたメールなんだから、あなたが考えなさい」


 そう環奈はぼくに厳しく言ったが、その言葉には力強い優しさが込められていた。


「時間と場所も、ぼくが決めていいんだね?」


 ぼくが環奈に質問すると、彼女は時間が止まったかのようにピタリと停止した。

 それから十秒ほどが経過。

 環奈は困ったような表情で、徹を見遣った。


 おそらくだが、環奈は場所と時間の件を失念していたのだろう。


 徹はため息をつくと、おもむろにスマートフォンを取り出し、携帯電話の画面を見ながら「時間は午前九時、場所はカフェレストラン『カレス』」と最低限の情報のみ、ぼくらに伝えた。


 ぼくは大きくうなずくと、スマートフォンを握りしめ、早速メールの返信を書き始める。


 ぼくがメールを書いているあいだ、遙香さんたちは話し合いを続けていた。

 ぼくは遙香さんたちの話し合いに口を挟まず、話し合いの内容を聞くこともなく、集中してメールの返信を書き終えた。


 が、いち早くそれを読んだ勇人は「あのう、海堂さんの『どう』が『みち』になっていますよ」と誤字を指摘してくれた。

 なぜだろうか、勇人からの指摘で誤字を直すのがシャクに障ったぼくは「これでいいんだよ」とムキになってしまった。

 すると、見事に詩織さんから「よくありません。今すぐに誤字を直すのです」と正論を言われ、ぼくは泣く泣く誤字を直した。


 そのときに聞いた茜の「かけるくんったら、酷いね」という言葉を、ぼくは死んでも忘れない。


 ぼくが海堂さんに返信してから数分後、海堂さんから「了解。今、きみたちは『カレス』にいるんだよね? だったら、今すぐに向かうよ。待っていてくれ」という返信が来た。

 ぼくらはというと、海堂さんがこの「カレス」に現れるまで、ゆっくりと休憩することにした。


 ぼくらは大船に乗ったつもりで、救世主の登場を待った。


 それから数十分後。


 ぼくらの救世主であり、司令塔の海堂さんが「カレス」に現れた。

 ちなみに言うと、ぼくの姉、大浦天音を連れた状態で、海堂さんはぼくらの前に現れた。

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