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涙の流星群  作者: 最上優矢
第四章 忘却の夏

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メール送信

 風呂から上がったぼくは自室に戻ると、自分のスマートフォンを使い、姉から教えられた海堂さんのSNSアカウント――「ポスト・キング」アカウントに投稿された文章や画像や動画をじっくり閲覧していた。


 主に海堂さんが話題にしていることといえば、紅露大学でのことだった。

 時折、海堂さんは自身の彼女であるぼくの姉の話題も出していて、そのたびにぼくはヒヤリとし、なんだか心臓に悪かった。


 そして七月一日の投稿を見たとき、驚きのあまり、ぼくはせきこんだ。

 それはこのように書いてあった。


「この世界は広い。

 だから、なんらかの形で死者が死にきれず、その結果、その死者が蘇生し、不完全な死者になるのも、ありうる話だろう。

 実際に、わたしはそのような状態になってしまった死者を救ったことがある。

 そのため、わたしは知っている。

 いずれ、不完全な死者になってしまった人物のことを周囲の人々が忘却し、最終的にはこの時空から抹殺されてしまうということ、それをわたしは知っている。

 おそらく、このような幻想的なことは人間の記憶から忘却される仕組みになっているのか、それとも我々のいる時空はそういった幻想的な存在を受け入れることはできない構造になっているのか、またはその両方か、だから不完全な死者になってしまった人物は人々の記憶から忘れ去られ、時空から消し去られてしまうという運命をたどるのである。

 わたしの場合、いや、わたしと彼女の場合、起こるはずのないキセキを起こしたからこそ、残酷な運命を迎えるはずだった彼女を救えたのだ。

 タイムリミットは、約一ヵ月――タイムリミットをオーバーした場合、その時点で我々人間の負けだ。

 そのあいだに彼を、または彼女を救い出さなければならない。

 その方法が知りたければ、坂上海堂までメールを。以下、メールアドレス……」


 どうやら、海堂さんは琴美さんの幻想事件で得た知識と経験を活かし、自分たちと同じような幻想事件に遭ってしまった人々を救おうとしているらしく、同じ内容の文章を毎月の一日に投稿していた。


 ぼくは海堂さんにメールを送るため、Webメールを開き、早速メールを書き始めた。


 ベッドに座りながらメールを書くこと、一時間――。

 ようやくメールを書き終えたぼくは、文章や内容が間違っていないか確かめるため、最後に文章を読み上げた。


「『初めまして、坂上海堂さん。

 ぼくは大浦天音さんの弟、大浦翔です。

 唐突ですが、ぼくから海堂さんにメールを送ったのには深い事情があります。

 以前、海堂さんたちが体験した幻想事件……それがぼくの仲間の身にも起こってしまったのです。

 ぼくらは対策という対策を練れていなく、このままではぼくらの大切な仲間、倉木夏奈さんがみんなの記憶から忘れ去られ、時空からも消し去られてしまいます。

 なので、どうか海堂さん。

 ぼくらを助けてください。

 ぼくらを救ってください。

 ぼくらにはキセキを起こしたあなたの力が必要です。

 お願いです、海堂さん。

 ぼくらに力を貸してください。大浦翔より』……うん、ばっちりだ」


 ぼくは大きくうなずくと、心置きなくメールを送信した。

 そしてベッドに倒れ込むなり、そのままぼくは大きく伸びをした。


 さて、やれることはやった。

 あとは海堂さんを信じるだけだ。


 ぼくはベッドから起き上がると、就寝のための準備を始めた。


 もしも琴美さんの幻想事件と夏奈さんの幻想事件が同じなら、あすには学校の教職員や生徒たちが夏奈さんのことを忘れているはずだ。

 そうなったとき、ぼくは冷静に対処することができるのだろうか?

 いや、しなくてはいけないのだ。


 なぜなら、もう幻想事件は発生してしまったから。

 すでに惨劇は始まってしまったから。

 涙の夏は来てしまったから。


 キセキが起こるのか、悲劇が起こるのかも、すべては神のみぞ知るだ。


 ぼくらの役割は、今を一生懸命に生きること。

 ただそれだけだ。


「……おやすみなさい」


 そうつぶやいてから、ぼくは部屋の電気を消し、ベッドに横たわる。


 なんだか、きょうはいい夢が見られそうだ。


 それから十分も経たないうちに、ぼくは深い眠りについた。

 深い深い眠りに。

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