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涙の流星群  作者: 最上優矢
第四章 忘却の夏

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仲間であり、親友

 帰り道、ぼくは遙香さんとともに歩きながら、当たり障りのないことを彼女に訊いてみた。

 が、遙香さんの受け答えは要領を得ないものばかりで、気を遣ったはずのぼくが苛立つという結果になってしまい、ぼくは自己嫌悪に陥った。

 そのため、かえってその場の雰囲気は悪くなり、これぞギスギス、というように悪化の一途をたどるしかなく、ついにぼくは口を閉ざした。


 けれど、このギスギスが逆に遙香さんを元気付けたらしく、彼女は「あーあ、これじゃダメよ。ダメダメ。わたしったら、まずはしっかりしないとね」と自身の頬をペチペチと叩き、それからこちらを向いたまま、きちんとした姿勢で立ち止まった。

 ぼくも遙香さんと同じように立ち止まり、きょとんとした顔で彼女を見つめた。


 遙香さんは心を落ち着かせるように深呼吸をしたのち、それから穏やかな表情で、

「もう泣かない。もう後悔しない。これで落ち込むのは最後。……わたし、色々と吹っ切れたよ、翔くん。本当にありがとうね」

 というように、はっきりとした声で決意の言葉を口にした。


 そんな彼女は、最後にニッコリとほほ笑んだ。


 最初、ぼくはあっけにとられていたが、次第に遙香さんの決意と笑顔が心に沁み入り、危うく涙が出るところだった。

 それを寸前でこらえ、ぼくは遙香さんの笑みにも引けを取らないすばらしい笑顔になって、彼女に「どういたしまして」と言葉を返した。


 さて。


「そういえば遙香さん、昼休みのときに小暮先生から叱られていた、とか屋上で言っていたけど、あれってどういうことだよ。小暮先生に叱られていたのは分かったけど、どういう内容で彼女はきみを叱ったのさ」


 遙香さんが立ち直ったようなので、ぼくはずっと疑問に思っていたことを彼女に訊いてみた。

 だが、その質問は遙香さんの表情を曇らせる内容だったらしく、滑稽にもぼくはあわてた。


「ご、ごめん。訊いてはいけないことだったか?」


 ぼくが遙香さんの顔色を窺いながら謝ると、彼女は表情を和ませ、「大丈夫。大丈夫だよ、翔くん」と穏やかに微笑した。


「あのとき、小暮先生はわたしと夏奈の関係を知りたがっていたの。

 それでね、小暮先生にわたしたちの関係を話していくうちに、あの人はわたしのウソに気付いてしまったのよ。

 それからのことは言わなくても分かると思うけど、わたしはたっぷり小暮先生から叱られたわ。

 おそらくわたし、二十分間はあの人の説教を受けたと思う。

 で、ようやく鬼女教師の説教から解放されたかと思ったら、今度は徹くんたちの恋愛反対運動定例会議のため、屋上に連れて行かれたの。

 だから結局、わたしは昼食を食べずじまいだった、というわけ。……ねえ、翔くん。あの女教師、本当にふざけているとは思わない?」


 最初の遙香さんは穏やかな声だったが、最後のほうは怒気を含んだ声になり、見るからに彼女は不機嫌になってしまった。


 やれやれ、喜怒哀楽が激しいのも考えものだ。


 ぼくは遙香さんに愛想笑いをし、この話題を適当に終わらそうとした。

 けれど、それでは質問に答えた意味がないとばかり、勝手に遙香さんは熱く語り出した。


「そりゃあね、わたしはみんなにウソをついたよ? でもね、わたしは正しいことをしたと思うの。

 結果がどうであれ、わたしは自分がしたことを悔いるつもりはないわ。少なくとも、今はね。

 うん、だからね、外野である小暮先生がああだこうだと言う筋合いはないと思うわけ。

 とは言うものの、夏奈が不幸になってしまったことは事実よ。

 その責任はわたしにあるのだから、それはすべてわたしが負うべきこと。

 この一件は翔くんたちにも関係があるとはいえ、元々はわたしの問題なのだし、いざとなったらわたしがすべての問題に対処するわ、ええ。それが理にかなっているわね」


 遙香さんが言い終わってから、ぼくは首をふるふると左右に振り、「それは違うよ、遙香さん」と彼女の主義主張に異議を唱えた。


「仲間の誰かがしでかしたことは、ぼくら全員の責任。よって、ぼくら全員が目の前の問題に対処し、その責任を負うのがベターなんだよ。

 いいか、遙香さん。ぼくらは仲間であり、親友だ。

 親友である仲間のピンチを見て見ぬ振りするのは、いささか心苦しい。

 だったらどうするか? ――つべこべ言わずに、仲間を助けるんだよ」


 遙香さんは目頭が熱くなりでもしたのか、しばらく鼻をすすっていた。

 やがて、遙香さんは「ありがとう」と照れたようにお礼を言い、照れを隠すように夜の道を早足で歩き出した。


 ぼくは遙香さんの後ろで肩をすくめてから、早足で歩く遙香さんのあとを追った。

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