【11】
久々の更新です。よろしくお願いします。
ロジェを倒した俺は、魔王がいる最上階を目指し螺旋階段をひたすら駆け上がっていた。
かくっん……
と突然膝が笑い、プルプルと震え出していた。
「……あっあれ……?」
膝をさすりながら、震えを押さえようとしていたのと同時、身体にのしかかる重さを感じ始めて行く。
「……つぅ」
確かにロジェとの戦闘が終わってからHP.MPを全開してはいなかったが、このだるさはそれ以前の問題だった。
強いて言うなら、そう……
これは魔族四天王との戦いにおいて生じたダメージの蓄積。
となるばHP.MPの全回復したとしても、このだるさを回復する事はない。
必要なのは、暖かい食事に快適な睡眠。
要するに数時間の休息だった。
「……流石に今ここで休息をとるのは無理だな」
休息をとるとなれば、カウントダウンは一気に減っていく。
残りカウントはまだあるが、魔王との戦いでどうなるかわからない以上、俺としては余裕を持ちたかった。たがそれでも、俺の意思に反するかのように両足は前へ進む事を拒み始め、更に身体の力が抜けて行くのがわかった。
逆らう術もなく、壁によしかかりながらいつの間にか俺は座り込んでいたのである。
「フゥ……ダメだ。少し休もう……」
壁は茶色のレンガのような物が何個も積み重なった作りをしており、冷んやりとしていて実に心地良く、疲労した身体を少しだけ癒してくれる。そんな気がしていた。
螺旋階段はレンガ一面に覆い尽くされているわけではなく、所々に小さな小窓が作られていた。もちろん窓ガラスがはめ込まれいるわけではないので、落ちたら真っ逆さまに地上に激突してしまうが、小窓自体は俺が飛び降りられる大きさではなく、精々顔は出るが両肩は出ない。
そんな大きさだ。
ウォルガフやロジェと言ったフォス族ならば、余裕で抜けられそうな小さな小窓から顔だけ出し、眼下を見下ろしていくと、地上は雲で覆われ大地を見る事は出来なかった。
地上から見上げていた時の魔王城はこんなにも高いと感じる事はなかったのだが、これも魔王の魔力のせいなのかもしれない。
「そういえば、ドラゴは無事かな……?」
多分、無事だと思うが俺を魔王の所に向かうべく殿を勤めてくれたドラゴ。
今も戦っているのだろうか?
……
……………
そんな事を考えながら、意識を手放していた。
ーーーー
周りは、地面がえぐれ所々に瓦礫の山が散乱しており、先程の戦闘の凄さを物語っていた。そんな広場の中央には一人のフォス族、ロジェが佇んでいた。
「……」
ロジェはリュウイに負け、本来ならば他の魔族たちと同様に光の粒となって死ぬ筈だった。だが、ロジェは今も尚生き続けている。
それは、敵となったはずのリュウイが最後の最後までロジェを仲間だと言い切り、死にかけていたロジェに対して貴重な聖王の息吹を使ったからに他ならなかった。
ロジェはゆっくりと螺旋階段の先……
リュウイが向かった先へと視線を見つめていく。
受けた恩は必ず返す。そして、ケジメはきちんと付けなければならない。
リュウイの後を追うように、ロジェもまた螺旋階段を登り始めたのであった。
螺旋階段を登り魔王の元まであと少しと言った所で、ロジェは足を止め目を見開きながら驚いていた。
それは、リュウイがなぜか無防備に目を閉じ眠っていたのである。
ロジェにとってそれは……絶好のチャンス到来だった。
恩を返すとかケジメをつける為に追いかけてきたロジェではあったが、それよりも優先するべき事がロジェには存在していた。
魔王を守る魔族四天王の最後の一人としてロジェは、リュウイが無防備に眠っているこのチャンスを活かすべく、拳を握りしめていた。
「……」
この一撃でロジェは、ロジェの役目を果たせる筈だった。
……しかし、どうしてもロジェにはそれが出来ないでいた。
『ロジェは俺の大切な仲間なんだよ』
リュウイの言葉が、無意識にロジェの拳を制止していたのである。
「……ふぅ」
トドメをさせないロジェは最早、魔王の忠実な部下と言えなかった。すぐさま無理と決断し、当初の予定通りケジメをつけるべく、ロジェはリュウイを起こしていくのであった。
ーーーー
ユッサユッサと身体が動いている感覚と共に、俺は手放した意識を取り戻していく。
「んっ……あっ……?」
目を見開くと、目の前にはロジェが立っていた。
「あれっ? ロジェ……?」
ロジェは、少しだけ呆れ果てたような顔をしながら俺を見つめていた。
「……ったく。とっくに魔王様の元に行っているのかと思ったのに、こんな所で寝ているって……リュウイさん余裕だね」
「えっ? 俺、寝ていたのか……?」
「うん」
どうやら気絶するかのように眠ってしまったらしい。やはり身体が休息を求めていたようだ。
ロジェが起こしてくれなかったら、まだ寝ていた事だろう。
そして、どれくらい寝ていたのかはわからないが、身体のだるさは大分取れていた。
もう少し、ここで休めば動けそうだった。
「所で、ロジェはなんでここに?」
「借りを返しに来た」
堅苦しいなぁ。とも思ったが、それが俺の知っているロジェだ。それに、寝ている間に俺を殺す事だってロジェには出来た筈だ。殺さないで起こしてくれたロジェは、敵と言い張る中でやはり心の奥底で俺の事を仲間だと思っていてくれたのに違いない。
言葉に出せば、全否定されそうだから黙っていよう。
ロジェを見つめながらそんな事を考えていると、ロジェは胸からゴソゴソッと何かを探し出し、俺に見覚えのある物を差し出してきたのだった。
「こっこれは……聖王の息吹じゃないか?」
ロジェが聖王の息吹を持っていても、それはなんら不思議はなかった。だって昔、一緒に聖王樹で手に入れたのだから……
「うん。使う機会がなかったから今まで持っていたんだけど、これをリュウイさんに渡す事にした」
「えっ? えっ?」
突然の事に俺はどうしたらいいのか、困惑してしまった。
確かに、今俺の回復手段はドラゴンの超回復しか持ち合わせてはいない。これから魔王との戦いにおいて、流石に無傷で勝てるとは思っていなかった。当然傷つき、回復しなければならない時が来るだろう。その時に魔王が素直にドラゴンの超回復を待ってくれるとは思ってはいなかった。
ロジェから、差し出された聖王の息吹……
喉から手が出る程、今の俺にとって必要な物なのは確かだった。
でも………
「リュウイさんは、唯一の回復手段を惜しみなく俺に使ってくれた。だから、俺が持っていた聖王の息吹を受け取ってくれ」
「……」
「何を悩んでいるの? 素直に受け取りなよ」
「いや……でもさ……」
素直に受け取っていいのだろうか? これを受け取ってしまったらロジェは、どこか遠くへ行ってしまうのではないか? と、心のどこかでそう思っている自分がいて、差し出された聖王の息吹を俺は受け取る事が出来ないでいた。
「むんっ!!」
中々受け取らない俺に対して、ロジェは無理矢理俺の手に握りしめていく。
「ロジェ……俺はっ!!」
「いいから、必要な時になったら遠慮しないで使いなよ!!」
「いやっ! でも……!!」
ロジェの顔は俺に恩を返せた事に、満足したかのような顔をしながら俺を見つめていた。
そんな顔をされたら、俺はロジェの気持ちを無下にする事は出来なかった。
「……わかったよ。遠慮なくもらうけど、これのお陰で魔王を倒せたとしても後悔するなよ?」
皮肉を込めて言ったつもりなのに、ロジェは答える事はなかった。変わりに今まで俺に見せた事もない笑顔でニコッと笑いながら俺のすぐ側にある、小窓の方へと移動して行くのであった。
おぃおぃ、その小窓は……
俺は顔ぐらいしか通らないけど、ロジェは落ちてしまうから危ないぞ……
「……俺はリュウイさんと戦い、そして負けた。その挙句に、命さえも助けられた」
「……おい?」
嫌な予感がする中、俺はロジェがの行動を黙って見ている事しか出来ないでいた。そして……
「変わらずに仲間と言ってくれたリュウイさんの言葉と、そしてその行動力に俺は凄く嬉しかった」
なっなにを言っているんだ……? まるで……
「でも、俺は魔王様を守る魔族四天王フォス族の種族王ロジェなんだ。そのケジメは、ちゃんと付けなければならない」
「ロジェ……?」
ニコッと笑いロジェは、小窓に手を乗せ勢いよく身を投げ出して行く。
「おっおいっ!?」
咄嗟に動いたのは、右腕だけだった。
腕を伸ばしロジェを捕まえようとしたが、僅かばかり届かず指先にロジェの服を捉えていた感触だけが残り、虚しく空を切っていた。
「ロッ……ロジェェェェェェェェェェ!!」
小窓から顔を出し、下を眺めながら叫んでいた。
なんで、なんでだよっ!? 何がケジメはつけるだ!!
「ばっばかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺の言葉は、エコーのように響き渡るが、誰も答えてはくれない。
「ロッロジェ……」
せっかく助かった命、何故無駄にする。
それが、お前の魔王に対する忠誠心の表れなのか?
そんなの俺は認めない。
くそっ!!
くそっ!!
くそっ!!
なぜ、気がつかなかったんだ俺は……
ロジェが、こうする可能性だって十分考えられたじゃないかっ!!
俺は……無力だ……大事な仲間一人助けられないなんて……
「ドラゴぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
無意識に俺はドラゴの名を叫んでいた。
本日19時ごろにも更新します。
短めですが……




