あのひとはいま 下
短いです
戻ってすぐにジョセフィエンヌさんが美味しいお茶と美味しいお菓子を出してくれた。
私が異世界人の事を知りたいと言うと、額に青筋を立てながら話してくれた。
「ヨリコ様の前に来られた異世界人は男性でした。元は人の姿をしたいたらしいのですが、何故か上半身が人で下半身が馬という奇妙な生き物となっていました。
下品な話なのですが、彼は己の下半身の一部分にとても自信が無かったようで馬の姿になったと気づくなり『馬並のピーピーで女を自主規制してやんぜ!ヒャッハー!!』と叫びながら城を飛び出したそうです。
彼は魔界のあらゆる種族の女性に手を出しまくり子孫を残しまくりました。皆、彼と同じ下半身が馬の姿で、それぞれの種族の特色を持ち合わせた不思議で不気味な一族が誕生したのです。
魔王様は彼らに土地を与え、今でもそこで平和に暮らしております。」
ジョセフィエンヌさんは私に出してくれたはずのお茶を飲み干し、また話し始めた。
「そこまでは良かったのです。新たな力を持つ一族の誕生に魔王様も喜んでいらっしゃったそうですから。しかし、彼の暴走は止まりませんでした。
『半分馬なら美人馬もいけるんじゃね?』と、脳に蛆がわき出したような思考でなんと魔王様の愛馬であるペガサスに手を出してしまったのです。
お怒りになられた魔王様は二度と彼が自分の土地から出てこれぬよう術をかけ見張りを立て、彼の自慢であった股間の物を切り落としました。
ようやく落ち着いた生活を送るようになった彼は、多数の妻の尻に敷かれたくさんの子孫に囲まれそれはそれは幸せ余生を送っていることでしょう。
実は私も彼の子孫の一人なのです。本来であれば彼らの土地で生活しなければならなかったのですが、私の母親が魔王様の愛馬のペガサスであった為私はこの城で働くことが許されたのです。
何故か私だけ頭部が馬の姿なので彼らの土地に行っても馴染めなかったでしょうね。」
な…なんつーか、すごい人だよ馬男!!
どんだけ子作りに励んじゃったんだよ。ジョセフィエンヌさん馬男の事大嫌いみたいだけど……まあ性に節操の無い男だししかたないか。自分の父親が淫行野郎だったら死にたくなっちゃうもんね。
魔王様も愛馬を誑かした馬男の話をしたがらなかったんだね。
私だけじゃなかったんだ、体がへんな風になったのって。私馬にならなくて良かったよ。
うん、ホントに。
「ヨリコ様、あの男は生殖行為出来なくなっただけで今では立派なセクハラジジイになっております。もういい年なのでさっさとくたばれば良いものを……。
なのでお会いしたいなどとは思わないで下さいませ。もしヨリコ様に何かあれば私、レイヴィス様とディアドラ様に殺されてしまいますので……」
何が何でも合わせはしない、そんな視線を私に送ってくるジョセフィエンヌさん。
せっかく生きた異世界人がいるというのに、どうやっても会えなさそうだ。