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魔弾の狙撃手リィン  作者: ルピナス
第3章「上昇編」

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第26話「王都」

ロレッタ「気持ち悪いですわ……」

ぐったりとした声だった。

馬車の中、揺れに合わせて身体が左右に振られている。

ロレッタは座席にもたれかかり、顔色を悪くしていた。

カイル「だ、大丈夫ですか……?」

ロレッタ「全然大丈夫じゃありませんわ……」

完全に酔っていた。

リィン、ロレッタ、カイルの三人は、王都行きの馬車に乗せられていた。

ガタガタと揺れる荷台。

乾いた土の道を進む音が、一定のリズムで響いている。

王都は、拠点にしていたローマン街から約5日の距離があった。

すでに長い道のりを越え今日が、最終日だった。

カイル「長かったですね……」

カイルは小さく息を吐く。

カイル「魔物とか出てきませんよね……?」

不安そうに周囲を見渡す。

リィンは何も言わなかった。

ただ、銃を抱いたまま目を閉じている。

ヘイム『ビビりすぎだろ、お前』

カイル「だ、だって怖いものは怖いじゃないですか……!」

ロレッタ「……揺れが……内臓にきますわ……」

そのとき

「見えてきたぞ!」

御者の声が響いた。

リィンがゆっくりと目を開く。

そのまま馬車の幌をめくり、前方を見た。

巨大な都市が、視界に広がっていた。


パレンシア王国王都パレンゴート。

中央には、荘厳な王城がそびえ立っている。

それを囲うように、二重の城壁がそびえ立つ

内側には整然と並ぶ貴族街。

外側には、広大に広がる平民街。

街全体が、一つの巨大な要塞のようだった。


ヘイム『……でけぇなぁ』

リィンは無言で見つめる。

ロレッタも、ゆっくりと顔を上げた。

ロレッタ「……懐かしいですわ……」

ロレッタ「……嫌な思い出も多いですけど」

その声は、いつもの調子ではなかった。

カイルが目を丸くする。

カイル「ロレッタは貴族様なの?」

ロレッタは少しだけ笑った。

ロレッタ「昔の話ですわ」

ロレッタ「冒険者になるときに、勘当されましたから」

さらりと言った。

だが、その言葉の奥にあるものは軽くない。

カイル「そ、そうなんですか……」

気まずそうに目を逸らす。

リィンは何も言わない。

ただ、もう一度王都を見た。

リィン(……ここが)

リィン(“上に行くための舞台”)

その瞳は、静かに細められていた。

馬車は、そのまま王都へと進んでいく。


“灰狼の牙”は新たな舞台へ、足を踏み入れようとしていた。


王都に到着した。

巨大な城門の前で、馬車はゆっくりと止まる。

行き交う人々、荷車、兵士の声。

地方とは比べ物にならない喧騒だった。

ロレッタ「……うぅ……」

ロレッタは青い顔のまま、カイルの肩を借りながら降りてくる。

カイル「だ、大丈夫ですか……?」

ロレッタ「揺れが……まだ残ってますわ……」

リィンは先に降り、城門の前に立った。

城門は高くそびえ立ち、まるで威嚇しているようだった。

リィン「……」

ヘイム『ここがスタート地点だ』

リィンは見上げた顔を戻した。


三人は列に並び、検問を待っていた。

すると、若い門番が話しかけてくる。

門番「身分証を」

リィンたちは、それぞれ冒険者証を差し出した。

門番は一枚ずつ確認していく。

門番「Cランク2人と……」

視線が止まる。

門番「……Bランク!?」

門番はゆっくりと顔を向け、リィンを見る。


一瞬の沈黙。

だが、すぐに表情を引き締めた。

門番「……通ってよし!」

道が開ける。

リィン達3人は王都へと入って行った。

背後で、門番が小さく呟く。

門番「あんなに可愛いのに……恐ろしいねぇ」



王都の中は、まるで別世界だった。

石畳の道、整然と並ぶ建物。

人の数、情報の量、活気、全てが圧倒的だった。

カイルが周囲を見渡す。

カイル「とりあえずは冒険者ギルドですか?」

リィン「……うん」

短く答える。


三人は歩き出した。

カイル「広すぎて迷いそうです……」

不安そうにきょろきょろと視線を動かす。

その横で、ロレッタがゆっくりと姿勢を戻していた。

ロレッタ「……少し良くなりましたわ」

ロレッタは深呼吸を一つ。


ロレッタ「私が案内致しますわ」

その声には、いつもの余裕が戻っていた。

リィンは小さく頷く。

ロレッタの案内で、三人は王都の通りを進んでいく。

やがて、巨大な建物の前に辿り着いた。

王都冒険者ギルドだった。

ロレッタ「ここですわ」

リィンは扉に手をかけた。

そして、押し開ける。


中にいた冒険者たちの視線が、一斉に向けられる。

静かに、値踏みするような視線。

カイル「……っ」

カイルは思わず一歩下がる。

カイル(……強い奴ばっかりだ……)

カイル(ここ、間違いなく死ぬ場所だ……)

ロレッタはその視線を受けながら、にこやかに笑っていた。

リィンは何も感じていないかのように、そのまま受付へ歩く。

足取りを変えずに堂々と歩いていく。

ヘイム『おうおう。見られてるなぁ』

受付嬢「冒険者証を」

リィンたちは証を差し出した。

受付嬢はそれを受け取り確認する。

次の瞬間、目を見開いた。

受付嬢「……少々お待ちを!」

そのまま奥へ走っていく。

カイル「な、何かやらかしましたか……?」

ロレッタは楽しそうに笑っている。

ロレッタ「心配ありませんわ」


やがて――

受付嬢が戻ってきた。

その後ろには、一人の女性、整った顔立ち。

落ち着いた佇まい、そしてスレンダーなプロポーション。

場の空気を一瞬で支配するような気品があふれていた。

マリーナ「あら」

マリーナがリィンを見る。

マリーナ「あなたが噂の“魔弾”ね」

その声音は柔らかいが、鋭さを含んでいた。

マリーナ「緊張しないで」

マリーナ「イシュタルから話は聞いてるわ」

リィンは無言で見返す。

マリーナは微笑む。

マリーナ「話したいことがあるから、部屋へどうぞ」

三人は奥の部屋へ通された。


扉が閉まる。

外の喧騒が、嘘のように消えた。

マリーナは椅子に腰を下ろす。

そして、三人を見渡した。

マリーナ「私はマリーナ・ロクサーヌ」

マリーナ「王都の冒険者ギルドマスターをやってるわ」

マリーナはゆっくりと問いかける。

マリーナ「あなたは何をしに王都に来たのかしら?」


リィン「……上に行くため」

リィン「Sランクになる」

マリーナは一瞬だけ目を細めた。

マリーナ「……いい目ね」

マリーナ「なら、やってもらいたい依頼があるわ」

読んでくださり、ありがとうございます。

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