並行宇宙
その時だった。ヴァロランは爆散した。だが、それと同時にワームホールが現れる。俺の光のエネルギーと、ヴァロランの爆発のエネルギー…どちらも、高エネルギー…高エネルギー同士がぶつかり合い、化学反応のような何かを発生させ、ワームホールを出現させたのだろう。
俺は逃げようとするが、それの力は強く、俺はそれの中に引き摺り込まれてしまった。澄火瑠さんは何とか耐えたが、シャドーは耐えきれず、俺の後に続くようにワームホールの中に入って行った。
俺は今、目を開けられなかった…いや、開けなかった。俺は今、どこにいるんだろう…俺は今、何をしているんだろう…俺は今、どうなっているんだろう…俺は死んだのか?それとも生きているのか?分からない…分からなかった…それを知りたいという好奇心はあった。だが、それ以上に俺は休息を取りたかった。
誰かの声が聞こえる。聞いた事の無い声だ。もう少し寝かせてくれ…頼むから起こさないでくれ…だが、その声は止む事は無かった。俺は仕方なく目を開けた。
俺は家のような物の中に居て、最初に目に入ったのは天井と見知らぬ女だった。
「良かった〜…生きてた…」
「…お前は?てか、ここどこだ?」
「ここは私の家です!そして私はムニです!」
「ムニ?」
「はい!あなたは…?」
「稲妻の覇者…」
「稲妻の覇者?かっこいい名前ですね!」
「てか、俺、多分この星とは違う星から来たのに、良く話せてるな…」
「恐らく、その手飾り?みたいな物の力だと思います!私が話すたびに、宝石部分が光ってるので!それで、違う星から来たんですか?」
「あぁ…詳しく言えば、別宇宙の星だけどな…」
「別宇宙?!」
「まぁ、ちょっと訳があって、戦いの最中にワームホールに吸い込まれちまってな…」
「なるほど!」
「ここは何の星なんだ?」
「火星です!」
「火星?聞いた事ないな…」
「太陽系の四つ目の星でした!」
「太陽系?でした?」
「太陽系と言うのは、太陽という恒星の八つあった惑星の事です!本当は水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と言う八個だったんですけど、今は地球が壊されて七つになったんですよね…今、この火星に居るのは、皆先祖を辿れば地球人なんですよ!」
「なるほどね…」
「ところで、あなたは何者ですか?約半年寝たっきりでしたけど…」
「光に選ばれた、勇者になる器の、ただの宇宙人だよ」
「勇者さんだったんですか?!」
「勇者になれる器ってだけだ…勇者とは程遠い存在だよ」
ムニは「この人は何を言っているんだろう?」と言わんばかりの顔をしていた。純粋と言うべきなのか…?
「簡単に言えば、勇者になる資格はあるってだけだ」
「なるほど!理解しました!」
「ところで、その地球?って言う星は何で無くなったんだ?」
「『宇宙の食いしん坊』と呼ばれている怪物のせいです…名前は『レマルギア』…」
「レマルギア…」
「はい…顔以外にも背中と尻尾の先に口があるんです…それで、あらゆる生命を食べるんです!」
「生命を食べるだけなら、星は死の星となるだけで消滅はしないだろ」
「そこなんです…地球に残っていた人たちは、これ以上レマルギアが暴れられないようにするため、地球に残っていた平気全てを使ったんです。その結果、地球は兵器の影響で耐えられなくなり、爆散してしまったんです…」
「なるほどな…それで、レマルギアは死んだのか?」
「…いいえ…まだ生きています…今は兵器のせいで負ったダメージを回復するために活動停止をしていますが…」
「…そいつ、幾つの星を破滅させたんだ?」
「分かりません…それを理解させる前に、地球は無くなったので…」
「俺の星には居なかったな、レマルギアなんて言う奴は…」
「そっちの宇宙の方が良いかもしれませんね!」
「馬鹿言え…こっちには『影法師のシャドー』とか『宇宙の寄生虫』とか…結構色々面倒な奴が多いんだぞ」
「なるほど?」
「理解してないだろ…」
「はい!」
「返事はめっちゃ良いんだよな〜…まぁいいか…話を戻すが、レマルギアはいつ起きるんだ?」
「…後少しです…」
「…は?」
「実は、地球が消えたのは約二年ほど前でして…」
「…倒してくるか?」
「…はい?はいぃぃぃ?!」
「何そんなに驚いてるんだよ?」
「そりゃ驚きますよ!私の母星の人が誰も勝てなかったんですよ?!」
「いや…俺地球出身じゃないし…」
「なら何星なんですか?!」
「俺の出身の星なんてどうでも良いだろ…」
「そ、そうだけどさ…」
ブレスレットから、光の剣が現れる。
「きゃっ?!何それ…!?」
「ん?剣」
「それは分かるよ!」
「このブレスレットの力みたいな物だ。地球があったのはどの方向だ?」
俺はその家を出て、聞いた。その時、空から何かが降ってきた。人型だが、手は爪が太く伸びており、顔には目と異常な程大きく牙が無数にある口、長い尻尾、そしてその尻尾の先にある捕食器官…
「お前がレマルギアだな?大方、今までの奴よりは強い奴が出たから回復中だったのに回復中断して来た、って感じだな?」
俺は剣をレマルギアに向けて構えた。レマルギアは俺を睨みつけて身構えた。
俺は走った。奴は尻尾の捕食器官で俺を食べようとしてきた。俺は尻尾の捕食器官に食べられないように跳び、捕食器官と尻尾を別けるように、斬った。そして、剣から光線を放ち、捕食器官を焼き消した。
「さぁ、お前の十八番の一つは無くなったぜ?レマルギア!」
俺はレマルギアの方に振り向く。レマルギアは怒ったように地団駄を踏み、咆哮を上げた。
「さぁ、敗北までのカウントダウンを数えろ!」
俺はレマルギアの方に走った。レマルギアも俺の方に走った。レマルギアが両手の爪で攻撃してきた。俺はバク宙をしてそれを避け、着地する前にレマルギアの胸部に蹴りを一発当てた。
俺は着地した。そして、怯んでいたレマルギアの頭を掴み、背負い投げをした。そして、倒れたレマルギアに巴投げをした。そして倒れているレマルギアの首を掴み、近くにあった岩石に投げつけた。
レマルギアがゆっくりと起き上がる。そして俺の方に走ってきた。俺は剣でレマルギアの腹部に一直線の切り傷をつけた。そして、跳んで、その最中で回し蹴りをし、レマルギアの胸部に当てる。
レマルギアが数歩下がった。俺はレマルギアの肩を掴み、大外刈りをして転ばせる。そしてレマルギアの上に乗り、レマルギアにタコ殴りを開始した。そして、レマルギアの頭を掴み、地面に叩きつけた。そして後ろに跳んで、ムニに近づく。
「何で逃げないんだよ」
「君が強すぎて呆然としてたの!」
「なるほど…って、早く逃げろ!食われるぞ!」
レマルギアは立ち上がり、俺らの方を向く。俺は剣を伸ばした。そして、遠くの距離から斬ろうとした。レマルギアは後ろを向き、背中にある縦向きの縦長の口で剣の先を食べ始めた。そして、どんどん剣を食べていく。俺は剣を引っ込める。
レマルギアが俺の方向を向く。ディノールやバサールとは全く違う強さだな…あいつらがシンプルな暴力を思わせるのに対して、これは理不尽で解決可能な暴力…
「やばいよ!あの剣はもう使っても意味が無いよ!」
「大丈夫だ…勝つ道が見えた」
「え?何をする気なの?」
「できる、できない、それは違う…やるか、やらないか…するか、しないか…そんなの、行動する一択だぜ!良いか、ムニ!この世は殺るか殺らないか…常に死が隣にあると思って、行動するもんだぜ…!」
勝てる…俺はそう確信した。そして、ブレスレットを相棒にした。
「何をする気か…あいつの口の中に入る…そして、あいつの体の中から斬り刻む!」
俺は相棒を握りしめ、飛んだ。レマルギアは後ろを向き、口を大きく広げた。お前の口の中に入ってやるよ!俺は奴の口の中に入った。そして、奴の体内に入った。
ブラギラスクとレギラスドから学んだスピン攻撃…俺はそれをここでも実践した。そして、コマのようにこいつの身体の中を回りながら壁という名の肉に当たり、切り裂いていく。
そして、無数の傷をつけた。そして、一つの場所を重点的に斬り刻み始めた。数秒後、そこは完全に斬れて、外と繋がるようになった。俺はそこから外に出た。そして、全身に血がついた状態で、ムニの方まで飛んで戻る。
振り返ると、ヨロヨロ歩くレマルギアが見えた。俺は相棒を投げた。相棒はレマルギアを外側からも斬り刻んだ。そして、レマルギアは倒れる。相棒を俺の手元に戻す。そして、ブレスレットに戻す。
「ほら、倒した」
「あなたは…一体…」
「稲妻の覇者って言ったろ?」
「稲妻みたいに速いから稲妻の覇者なの?」
「…さぁな?」
「自分の名前なのに、何でその名前なのか分からないの?」
「良いか?名前ってのは最初は何の意味もないもんだよ。意味があったとしても、それはただの綺麗事だ。そこから名前に意味を持たせるために、生命は生きてるんだぞ」
「かっこいい!!!」
「はいはい…」
「私は将来、君になりたい!!!」
「やめとけ」
「え?なんで?」
「…俺の一生なんて辛いだけだよ。今までも、これからも…」
「そうなの?」
「…生き物を殺す…俺らの星は他の星と違って、飯は食わなくても良かった。まぁ、娯楽程度には食うが…でも、なるべくどの生命も殺さない。殺すのは、何かを守る時だ。俺からしたら、その守る時に殺す事すら、嫌な事なんだよ。本当は言葉で理解し合いたい…でも、それができない。それに、俺が負けたら周りに被害が出る。だから殺さないといけない…こんな人生、辛いだけさ…」
「…自分のしたい事、しないの?」
「…無いんだよ、自分のしたい事なんて…」
「そんなの、つまらないじゃん…」
「まぁな…」
「なら、私を守ってよ!」
「は?」
「私を守る事。それは『しなきゃいけない事』から『したい事』にしてよ!」
「…お前と居ると、退屈になる事はまず無さそうだよ…」
「褒めてるの?ありがとう!」
「皮肉だよ…」
その時、俺は感じた。シャドーの力を…
「どうかしたの?」
「俺の因縁が、斬れてなかったんだよ…この因縁は、俺が直々に切らなきゃいけないのに、斬れてなかったんだよ…」
俺は上を見上げる。数多くある星々…大気圏がある…少し動きにくいと思ったのは、そういう事だったのか…俺らの星の住人は空気に少し弱く、そのため空気の無い星に住んでいる。
「私も、一緒に戦いたい!」
「は?」
「私も一緒に行かせて!」
「…はぁ?!」
「だって、君はこの宇宙について詳しくないでしょ?」
「それはそうだが…」
「なら道案内役が必要でしょ!」
「そうだが…危険だぞ?」
「それでも良いの!それに、私、人間の血が濃いけど、宇宙人の血もあるんだよ!」
「だからってな…」
ムニは俺の手首を掴んだ。
「さぁ!行きましょう!稲妻の覇者さん!」
「はぁ…死んでも文句言うなよ?」
「勿論です!」
俺はムニの服の襟を掴んだ。そして、飛んだ。
「大気圏外は平気か?」
「余裕です!私の血にある宇宙人は、空気不必要なので!」
「そうか…少し、手荒に行くぞ!」
俺は本気で飛んだ。そのスピードは、マッハ3。ムニが耐えられるかどうかは分からなかった。だから、ブレスレットからエネルギーを出し、それでムニを囲った。
「とりあえずどこに行く?」
「?!」
ムニは俺が空気が無い中声を出している事に驚いた。
「お前らとは身体の作りが違うんだよ」
「なるほど」と言った気がした。その時、ブレスレットの宝石部分から光が出た。そして、その光は合体していき、ワープゲートになった。
「入れ、って事か?良いぜ。お前が導く方へ…このブレスレットの…光の導く方へ、行ってやるよ!」
俺らはそのワープゲートの中に入る。中は数々の光の粒子で作られたトンネルのようになっていた。俺らはその中に進んでいく。そして、脱出口を見つけた。俺らはそこから出た。
俺らが着いた場所には、炎でできた銀河のような物があった。俺は適当な惑星に着陸した。その星には、空気があった。まぁ、薄いが…これ程度ならムニは耐えられるだろう…耐えてもらうか。光の枠を消した。
「あっ…空気ある!」
「少しだけどな」
「でも体重い…」
「まぁな…火星の重力の15倍だぞ」
「え?!そんなに?!」
「体感で分からないのか?」
「分からないよ!」
「まぁ、色々な星に行ってる様な奴しか分からないか…」
「…何個の星に行ったんですか?」
「…軽く千ぐらいかな?」
「千?!」
「千だな…そして出てこい!誰か居るだろ?」
俺は岩石の裏に隠れているそいつにそんな事を言う。すると、横に太いトカゲが現れた。
「ん?なんだあれ?」
「あぁ!きゃわいぃぃぃ!!!」
「いきなり叫ぶなよ…うるせぇな…」
「だって可愛いじゃん!」




