第4話 「焼肉奉行」
肉を焼きたいが、その前に猪を解体しなければならない。
とすれば、どう解体すればいいのか。
内蔵の位置とかはよくわからないが、胃や腸を食べる気にはならない。
「………足からいくか」
悩んだ末、体の方ではなく、足を切り分け、食べることにする。
足の根元に石器を突き立てると肉の感触が石器越しに伝わってくる。
「かなり硬そうだけど、食えるのか……?」
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それから悪戦苦闘しつつも、なんとか足の部分だけは解体することができた。
空が白み、太陽の光がほのかにあたりを照らしている。
かなり時間かかったが、その甲斐あって、皮のついた硬そうな肉は、
見ているだけで涎の垂れそうな、大きな骨付き肉へと変わった。
両端から骨が突き出ているが、どうやったのか、自分でもよくわからない。
人間、死ぬ気になれば何でもできるもんだな……。おっと、目にゴミが。
「さてと......。焼くか」
骨付き肉を持ち、火に炙るようにして焼く。
そして、じっと肉が焼ける時を待つ。
......手がしびれてきた。
この大きさの肉を手で持ったまま焼くのはかなりキツい。
何か肉を置けるものが必要だ。
そこで、俺は近くの木の枝2本ほど折り、石器を使って、
2本の枝の端片側だけをY字に成形する。
それを火の近くに燃えないよう、注意して立てる。
そして、仕上げに骨付き肉を載せれば──自家製焼肉セットの完成だ。
骨をくるくる回し、肉を焼いていく。
肉の脂が焼け、あたりに香ばしい匂いが広がる。
中まで火が通ったの確認して、
肉に思いきり齧り付く。
口の中に肉の旨味が弾ける様に広がる。
「あふっ!?あかっ、熱っ!?」
ゴクン
焼きたてのため、余りの熱さに口から出しそうになるが気合いで食切る。
「あぁぁ、うまい……」
余りのうまさに思わず声が出る。
これまでの疲れがじわじわと溶けていくかのように思える。
「また罠を仕掛けるか…」
残りの肉の3本の足はバックに胴体は肩に担ぐ。
そうして、俺は次の罠の設置場所を探しに歩き始めた。
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「はぁぁぁ、生き返る……」
最初仕掛けた所とは別の場所に罠を設置したあと、
俺は湖に水を飲みに来ていた。
ペットボトルに貯めた水を飲むと、乾いた体に染み渡っていくのがわかる。
水を飲み、少し休んだ後
焚き火をした場所に戻り肉を焼く。
肉はバックに入れておいた猪の肉だ。
火が弱まってきたので枯れ枝を追加しつつ焼いていく。
今回もうまく焼けたようだ。
肉を食べ終わった時、ふと思いついたことがあり、猪を取った穴に戻った。
猪が暴れた時に少し崩れてしまった穴の中を
落ちないように気をつけて覗く。
「あった......」
穴の中に手を伸ばし、そこに落ちていた物を掴む。
穴の中にあったもの。
それは────猪の角だった。
猪が暴れた時、折れた角はそのまま猪と穴の中に落ちた。
その時には使い道がないと思ったので、わざわざ拾うようなことはしなかった。
だが、今はその猪の角をナイフに加工しようと思う。
石器で叩いて削れば、ナイフのようになるはずだ。
猪の角を地面に置いて押さえ、先端から叩いて、平にしていく。
ある程度平になったところで、石器を使って刃の部分を砥ぐ。
出来上がったもので試しに手近な木を斬りつける。
木の幹に鋭い傷が出来る。
「かなり良い感じだな」
ふと空を見ると暗くなり始めていた。
仕掛けた罠の確認に行くとしよう。
俺は作ったナイフを腰に差し、罠のある方向へ歩き始めた。
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「なんだ...これ」
罠を仕掛けた場所を見て、俺は思わず呟いた。
罠のための餌としてイノシシの胴体を置いておいた。
そして、落とし穴も前より少し深いくらいに掘っておいた。
だが、その落とし穴は乱暴に踏み荒らされ、崩れていた。
イノシシの胴体はめちゃくちゃに食い荒らされている。
そして、何より驚いたのは地面の様子だ。
食い荒らされた餌から点々と大きな足跡が続いていたのだ。
その足跡の主が通ったと思われる場所は木が薙ぎ倒され、
草は踏まれ、茎から折れてしまっている。
「いったい、何があったんだ...」
俺は木刀を持ち、恐る恐る、足跡の主のものと思われる痕跡を辿っていった。




