ハイキョガール事件 その2
その廃墟は遠目でみると少し古びた洋館だが、keep outの看板と庭や家の中に草が無造作に生えていることで廃墟とわかる。しかし、廃墟であるということもあるがとにかく怪しい。海外のアンティークっぽい装飾が所々にしてあり、玄関ドアの真ん中にはノック用のリングをライオンがくわえている彫刻が施してある。
「雰囲気あるなァ~。」
「ヒダ、そんなのんきしてていいの?アズサちゃんに頼まれたんじゃないの?」
「そうだぜ、ヒダ。おれらにも依頼の内容を教えてくれよ。」
「あァ、そうだな。学校で聞かれちゃマズそうな感じだったからなァ。ここならいいだろ。」
時は少し戻り今日の朝。
「実は…。」
アズサはじっとヒダを睨んだ。しかし怒ってる感じの睨みではない。
「何だ?」
「ヒダ、あんたって内緒話は人に言いふらさないわよね。」
「まァ、言うなと言われれば言わねェと思うが。…アズサの場合あとが怖いし。」
最後の一言は心の中で言ったつもりだったが口に出して言ってしまった。
「なんか言った?」
「いやァ、何にも。じゃあ依頼の方どうぞ。」
「実はね、うちのクラスの天王寺ハルカちゃんっているじゃない?」
「天王…寺…ッて誰だァ?」
「失礼ね。今年の春休みにこの汐留市に越してきた子よ。」
「なるほど。そりゃあ失敬。」
「じじくさ。」
「いいから、続きを聞かせてくれ。」
「普段、クラスではおとなしいタイプの子なんだけど男の子の話になるとやたらがっつくのよね。そのせいでちょっとクラスの女子から敬遠されてる感じなのよ。」
「そんなの思春期の女子にはよくあることなんじゃあないか?」
「ただ単に男子が好きって感じじゃないのよ。なんだろう。何か背負ってる感じがするのよね。」
「お前ェもいっつも何か背負い込んでるように見えるがなァ。」
「私は好きで背負い込んでんの。じゃなきゃクラス長なんてやってないわよ。でも、あの子は無理矢理背負い込まされてる感じがするの。」
「そんな根拠どこにあんだよ。」
「女の勘よ。」
「女の勘ねェ。コマチもこないだそんなこと言ってたが考えすぎだったからなァ。で、先生には相談したんか?」
「まだ確信は無いし、最悪変なおっさんとかに身体売ってるとかだったらあの子の人生に関わってくるし…。」
「考え過ぎだって。でもお前ェが心配する事って大体合ってたりするからなァ。だから付き合いの長い俺に頼んだんだろう。」
「私が調べるのは怖いしあんたたち探偵部も暇してるみたいだったから一石二鳥でしょ。」
「まァそうだな。俺もこういうタブーを暴く感じ、好きだからなァ。」
アズサはまたヒダを睨んだ。しかし今度は怒っている。
「あんた楽しんでるでしょ。私は本気なんだからね!」
「わかってるって。でもまァ、プレッシャーとか責任とか背負い込み過ぎてもいつか崩れちまうから俺はそういうのあんま意識しないで逆に楽しむようにしてる。お前ェもたまには肩の力抜かねェといつか崩れるぜェ。」
「何よ、偉そうに。あんたに説教される筋合いはないわよ。この変人。」
「フン。親切に忠告してやったのによォ。んじゃ、その天王寺ってやつ今日尾行してみるわ。」
「そう。じゃ、よろしくストーカーくん。」
「ストーカーじゃねェ!立派な探偵の仕事だァ!」
回想のシーンが長くなってしまいましたがヒダ(探偵部部長)とアズサ(1-2クラス長)の上に立つ者の違いを入れたかったのでご容赦下さい。僕はアズサみたいな子がクラスにいたらみんなに気を遣ってくれて安心できると思いますがヒダタイプの子も軸がブレてなくて憧れます。




