第27章 深層の食材4
四人が肉を持ってきたのは、次の日の営業が終わってからだった。
紬が、背負っていた保冷容器を床へ下ろす。重い音がした。
全員いる。紬の白い鎧には浅い傷が増え、眞子のへこんだ肩当ては保冷容器へくくりつけてある。里沙の青い服は土で汚れ、天音は焦げ跡と新しい擦り傷の残るカメラを胸へ抱えていた。四人とも目の下に隈ができ、椅子へ座る前からカウンターへ体重を預けている。それでも、笑っていた。
「おかえり。まず座れ」
「ただいま、晃一さん」
紬は保冷容器へ手を置いた。
「取ってきたわ。アビスバイソンの最上級肉」
「大成功だよ、晃一さん!」
天音がカメラをカウンターへ置く。眞子は、得意そうに胸を張った。
「あたしが脚を斬ったから、仕留められたんだろ」
「私が風の向きを変えたからです」
「私が囮になったから!」
「仕留めたのは私よ」
四人とも自分の手柄を譲る気はないらしい。
「つまり、全員の手柄だな」
俺が言うと、四人は顔を見合わせた。
「そういうことにしておくわ」
「やった。紬さんのお許しが出た」
「あまね」
紬が天音を睨んだあと、俺へ向き直った。
「これで、同じ肉で勝負できるわ」
「だから、俺はまだ受けるとは――」
「晃一さんなら絶対に勝つ。私は、晃一さんがアドリアンに勝つところを見たいの」
紬は迷いなく言った。
昨日は、止めることしか考えていなかった。
だが、四人は深層まで行った。運よく群れから離れた一頭を見つけても、簡単には倒せてはいない。四人がそれぞれ危険をおかして最高の肉をここまで持ち帰った。
そこまで見せられて、俺だけがやる前から逃げるわけにはいかない。
保冷容器の中にある、初めて扱う肉。どう切る。どう火を入れる。何と合わせれば、この肉はもっと美味くなる。
考え始めると、試してみたいことが次々に出てきた。
久しぶりに、料理を作る前から胸が弾んでいる。
「分かった。やるよ」
紬が目を見開いた。
「勝負、受けるの?」
「ああ。こいつで、アドリアンより美味い料理を作る」
「絶対に勝てるわ!」
天音が両手を上げた。眞子も拳を突き上げ、里沙が笑う。紬は満足そうに俺を見ていた。
「で、何を作るの?」
天音がすぐに聞いてくる。
「それは、まだ教えられない」
「ええっ、私たちが取ってきたのに?」
「じゃあ、味見はさせてくれる?」
「初めての食材は研究しないといけないから、すぐには無理なんだよ。出来てからな。つまみ食いは駄目だぞ」
「味見ならつまみ食いじゃないよね?」
「あなたの場合、同じです」
里沙が最後に注意すると、眞子が口を挟んだ。
「里沙、そこは天音の味方をしてやれよ」
「まこも食べたいだけでしょう」
おふくろから直伝のレシピを、どう活かすべきか色々と頭の中をレシピが巡る。
俺の腕で本当に勝てるのか?
もう、逃げるわけにはいかない。




