巫女と神子①
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結局ジャスミンではたいした情報は得られず、シルフィーリたちは先行していた一団とラージェンの王都だったラピテイル近くの小さな村で合流した。
小さな村といってもここは元々神殿が管理していたらしく、神官たちの保養所として豪華な宿が建てられていた。
いかにも、という建物を見たシリウスは悪趣味だなと思ったが、温泉が湧いているとのことだったので一泊することになった。
ラピテイルは古い言葉で、ラピテル神の居る場所、という意味があり、ここにラージェン王国の全てが集まっていた場所だった。
門を入ってすぐの広場にはラピテル神の大きな像が建ち、来る者を見守っている。
他にも奥には大神殿や王宮、貴族たちの邸宅など重要な施設が揃っていて、街も賑わっていた。
一方で、端の方には貧民街が広がっていて、シルフィーリたちのようなまだ心ある神官たちが彼らに炊き出しなどを行っていた。
「なるほど。その炊き出しも今はこちらで行っているのですね」
商人の姿から帝国の大公に相応しい姿に戻ったシリウスは、先にラピテイルに入っている者たちからの報告書を読んでいた。
ちなみに、シルフィーリは侍女たちに連れて行かれた。
今頃、温泉で磨かれていることだろう。
明日はシリウスの婚約者に相応しい姿をすることになっている。
義母からの贈り物は彼女にとても似合うだろう。
「そのようです。一部の神官たちはこちらに協力的で、共に炊き出しをしているそうです」
「あぁ、シルフィーと一緒に奉仕活動を行っていたという神官たちですね」
「はい。ですが、そのせいか彼らの神殿での地位は高くなく、帝国に協力的なのは媚びているからだ、とか、ラピテル神に仕える身でありながらフィアドラ神を信仰している者たちの下に付くとは何事だ、などと残っている者たちから言われているようです」
「おや、どうやらその神官たちは、ラージェンが国としてなくなったということを理解していないようですね」
「国がなくなっても、自分たちは関係なくて安全だと思っているのではないでしょうか」
「ラージェンに協力していた神官たちは処分したはずですが」
「残った者たちの言い分としては、彼らはラピテル神に背いていた者たちで自分たちは真に神に仕える者だ、ゆえに帝国は神殿の在り方に口出しするな、だそうですよ」
「うん、お馬鹿さんたちですね。そんな言い訳、見苦しいだけです。神官たちとラージェンの上層部との癒着ぶりは、資料を見ただけでもずぶずぶ過ぎて呆れるくらいでしたよ。神殿に口出しするな?ふざけたことを言わないでほしいですね。今までと同じように生きていけると思っているようでしたら、痛い目に遭わせるだけです」
神官たちはずいぶん好き勝手にラージェンの政治に介入していたようで、その癒着ぶりは庶民でも皮肉を言うくらいだった。
庶民が逆らえなかったのは、信仰ゆえだ。
破門、という最終手段を持つ彼らに庶民は聞こえないように文句を言うくらいしかなかった。
フラフィス帝国は、どの神を信仰しようが自由だ。
帝国の政治の邪魔をせず、誰かを傷つけるようなことをしなければ、誰がどんな神を信仰していようが問題にはならない。
神官たちの横暴が目立ち始めた神殿では信者たちが別の神を信仰し始めたり、同じ神を祀る神殿でも自分の好きな神官がいる神殿で祈ったりする者もいる。
それを咎めることはしない。
だが、ラージェンでは神として認められているのはラピテル神のみで、その全ての信仰は王都にある大神殿に集めていたので、そこで権力を握っていた神官たちは、下手をしたら国王よりも権力があったのだろう。
「自分たちの名ではなく、ラピテル神の名で好き勝手する者たちに遠慮する気はありません。私のシルフィーを困らせていたようですし、さて、どうしてやりましょうかねぇ」
にこやかな笑顔が、不気味な怖さをさらに倍増させている。
笑顔って怖いんだな、というのを部下は改めて思い知ったのだった。




