第9話 初めてのダンジョン その① 準備編
次の日曜日の正午すぎ、また掲示板でのこと。
653 名無しの言葉
マホちゃんはダンジョンに向かったみたいだな
654 豪声なリョウヤ
>>653
ああ。ちょっと脅したみたいになったけど、なんとかソロのまま向かってくれたよ。
655 チュリさんは俺の嫁
大丈夫なのか?
それにわざわざソロで行かせるのはなんか意味あんの?
656 名無しの言葉
あ、それ俺も気になった
ダンジョンにソロ攻略で追加報酬とかそういうのなかったよな?
657 豪声なリョウヤ
>>655 >>656
あ、いや特にソロだから何かあるってわけじゃないんだ。
今あそこを知らないやつなんていないだろ?
初見プレイを楽しんでもらいたくてな。
658 名無しの言葉
>>657
なんだよ
意味深なこと言うからなんかあるのかと思うだろー?
659 豪声なリョウヤ
>>658
はは、悪い悪い。
それと攻略自体は多分大丈夫だと思うぞ。
最近草原で変な爆発起きてるって噂あっただろ?
あれ、マホちゃんの魔法っぽい。
660 チュリさんは俺の嫁
マジか
もしかしてチュートリアルのあの宝箱で当たり引いたのかな
661 名無しの言葉
あれってノーマル以外出るんだな……
10回リセマラして全部ノーマルだったからその後補正引いて止めたよ
662 豪声なリョウヤ
>>662
あんなの粘ってたらゲーム始まらないよ。
白箱引きまくった俺だってノーマルしか出たことないからな。
663 俺の声を聞け
今北産業
664 名無しの言葉
マホちゃんが
草原で爆発起こして
ダンジョン行った
665 チュリさんは俺の嫁
>>664
マジでこれだから困る
666 豪声なリョウヤ
戻ったらまたアドバイスしてみるよ。
まぁ、チュートリアルちゃんとやったマホちゃんならアレにも気付くと思うけど。
667 名無しの言葉
俺は初見じゃあのキーアイテム見つけられんかったけど
668 俺の声を聞け
あー、アレね。罠で終わりと思うよなー
俺も騙された
669 チュリさんは俺の嫁
俺は取ってくると思うぜ
賭けるか?
670 豪声なリョウヤ
>>669
やめとけ賭けにならん。
671 名無しの言葉
だな
672 俺の声を聞け
しかしやっとグレードEか
結構かかったな
プレイ時間的にやっぱり学生さんかな?
673 豪声なリョウヤ
>>672
そうかもしれんが、あんまり詮索するなよ?
674 俺の声を聞け
わかってるって
でもノーマル買い揃えてからが本番だからなー
しかも魔法メインじゃ金策大変だろうな
675 名無しの言葉
意外とピンポイントで必要なワードだけ買って一気に攻略したりしてな
676 チュリさんは俺の嫁
ありうる
俺もそろそろグレードA目指すかね
ちょっとクエストやってくるわ
677 俺の声を聞け
くっ、俺もBで躓いてる場合じゃねーな
行ってくる
678 名無しの言葉
なんか活気付いてきたな
俺も乗るか!このビッグウェーブに!
679 豪声なリョウヤ
俺もみんなに続くとするか
703 方言の魔女
……男って単純やね
既存の女プレイヤーだっておるんにさ
盛り上がっていた連中が挙ってログインしていった後、ボソリと呟いたプレイヤーが一人。
そしてリョウヤははぐらかしたが、あることを隠していた。
話はその日の午前に戻り、当のマホはというと、デイリークエストをこなしていった結果、RPが500を越え、グレードEへの昇格クエストを受注可能となり、更にここまで貯めたお金でワードを購入しようとワードショップへやってきていた。
このRP500というのはある程度プレイする時間をとれる者なら二日程で到達可能で、マホのまる一週間というのは掲示板で言われている通り遅い部類に入る。
ちなみに両親との新たな約束として、長時間のプレイは土日のどちらかのみ。また、祝日や大規模なイベントが行われる際は応相談、ということになった。
それと昇格クエストが北のダンジョンボス討伐だったというのもあって、この日に合わせた形になっていた。
そして、ふとショップ内の本棚に目を向けると、偶然そこに最初から使っている『火』の本があったので、導かれるように手に取った。
「あ、こういうのも見れるんだ」
そこには前回『必殺』を見た時にはなかった、『火』の過去に使用された言い回しが並んでいる。
火、炎、ファイア、フレイム、そして先日からマホが使っているフレア、などなど。
「ん? 次のページ?」
よく見ると、それ以外にページをめくる為のボタンが表示されている。
それを押すと自動的にページがめくれる動きをして、また異なる情報が見れた。
「あ、なるほど! 補正の『火』もあるんだ」
マホがチュートリアルで手に入れたのは起動ワードの『火』。
次のページに書かれていたのは補正ワードとしての『火』の情報だった。
火 レア 補正 使用ワード 火 炎 ファイアetc…
「さすがに買えないのかぁ」
レアリティは一つ上がってレア。これは汎用性が高い故だ。
武器攻撃時に使用すれば、所謂魔法剣のようなことが可能になる。
ノーマルではないのでこの店で買うことはできないとわかり落胆するマホ。
「お? まだ次がある……」
更に次のページをめくると、今度はスーパーレアの『火』が表示される。こちらは起動と補正両方を備えている。
「あれ? じゃあ水とか風とか……もしかしてこっちを手に入れたらここで買ったノーマルって……無駄になる?」
これは経験者でも割と悩む誘惑だ。「後で手に入るかもしれないから買わない」のか、「どうせ手に入らないから買う」のか。
マホの選択は後者だった。
何しろここまで手に入る要素が何もなかった。
というかそれはこれからなのだが、実際スーパーレアをすぐに入手できるかというと、かなり厳しいものがあり、このマホの選択は正しかったといえる。
マホはこれまでに貯めた50000Gを使って、起動ワードの『水』、『風』、『雷』、『岩』、そして『球』を購入した。
『球』か『矢』でかなり迷ったが、これに関しては「次に『矢』を買えばいいや」、と判断して『球』を選んだ。
属性と判断できたワードを買い揃えたマホは、道具屋へ行き余ったお金で回復薬を三つ購入する。
これは事前にリョウヤから「ダンジョンではHPの自然回復がないから念の為にいくつか持っていくといい」とアドバイスされたから。
ただ、「大量には必要がない」とも言われていたので余りで買えた三つだけだ。
ちなみに回復薬は一つ1000Gだった。
その後にギルドへ向かって、昇格クエストとダンジョンのモンスター5体討伐というクエストを受注する。
後半のクエストはデイリークエスト達成用だ。
「よーし、準備もできたしさっそく……あっ、そうだ。お昼ごはん食べなきゃ!」
これも両親との約束。食事を忘れないこと。
このゲームはログインすると必ずホームポイントに飛ばされる為、中断というのが難しい。
そういうゲームは少なくないので、両親も集中すると長くなってしまうことへは理解を示したが、食事を抜くことだけはないようにと再三注意した。
どうやらこれは経験からの忠告らしい。「良いプレイは栄養ドリンクなんかじゃなくて、ゆっくり、ちゃんとした食事から」だそうだ。
そんなわけで、あと出発するだけというところで一旦食事休憩を挟んでから初めてのダンジョンへと向かうことにした。
お読みいただきありがとうございます。
次回は攻略編です。