第84話 無限ダンジョンイベント攻略 その⑫ 最終日の攻防編
無限ダンジョンイベント最終日、ダンジョンが解放される少し前にマホがクランハウスにやってくると、既にみんな揃っていた。
「おはよー、マホっち。今日は地下118階からだよー」
「おはよーヘヴンリー。あ、じゃあみんなで117層いけたんだ」
マホに気付いたヘヴンリーから挨拶を交わし、さっそく昨夜マホが抜けてからの話になる。
マホが抜けるとなった時点ではやはりみんな不安が大きかった。
「けっこーヤバかったよねーティエりん」
「ガーゴイルはともかく雑魚がね……人型はハーちゃんに動いてもらってなんとかボス部屋まで行ったんだけど……」
ハートも撮影よりも攻略を優先してくれたらしい。
そして忍者シリーズの特性を活かして雑魚を減らすのに貢献したようだ。
しかしやはりというかボス自体も苦戦したらしく、ティエラの声音も落ちる。
「やはり俺達だけじゃボスへの火力が足りなくてな。とんでもない反撃を受けた」
「シリーズ装備のリョウヤとレーちゃんがなんとか生き残っただけやったもんな。やっぱ普通の装備じゃ耐えれんかったよ」
「あれ? ハーちゃんは?」
耐えたのが二人だけと聞いて、同じシリーズ装備のハートがどうだったのか気になったマホ。
「僕の忍者シリーズのダメージカット特性は既に半減してますからね。さすがに耐えきれませんでした」
忍者シリーズは入手者が出るごとにカット割合が10%減っていく。
忍者プレイの為にマホ他当時のメンバー全員が入手したことで40%まで下がっていた。マホ達より前にも一人いたらしい。
同時に防御補正も上がるのだが、こちらは現時点ではメンバーの誰よりも低く、ダメージカットをしても元の被ダメージが大きすぎて生き残れなかったようだ。
「じゃあ、やっぱり100%カットのヘヴンリーは切り札だね」
これが昨日ハートが言っていた裏技。
最後に入手したヘヴンリーの忍者シリーズはダメージ全カットというチート状態を保っている。
「予想通りトップと1層差ですし、マホ姉さんがいても倒しきれないようならお願いします!」
「オッケー! 任せて! てゆーか、『躍進』でも2フロアがやっとなんだねー」
ログイン時の情報で『躍進』との差があと僅かとわかって、ヘヴンリーも勝つための手段として受け入れている。
「今『躍進』にはシリーズ装備なんて持ってる人いないっスからね。というかここに来て初めて知ったっス」
「そうね。雑魚はいけそうだけど、ボス戦が大変そうかな。反撃は全体攻撃だし」
「人数が多くてもまとめて被弾してしまってはな。改めて地下101階以降がエグいと思う」
「だよねー。もしかしてあーしらの下も近い?」
「それがわからんのが今回のおもろいとこやなー。クワトロのクランは『躍進』が一番有名やけど、他はどんなもんなん?」
『躍進』の状況予測から他の上位を争っているであろうクランへ話が及ぶ。
「俺と同じ騎士シリーズを持つハイターというやつが率いてる『黄金鉄』というクランが二番手だったな。ハイターは忍者シリーズを持っていたから取り方を教えたんだ」
「あー、そういえば言ってたね。シリーズ装備持ってる人には教えてたんだっけ」
「ああ。俺が入手したのはたまたまだし、次の入手者を待っていたらいつまでも強化されないからな」
リョウヤの騎士シリーズは他と違い、他者が入手することで強化されるが、その間隔が長ければ長いほど上昇率が上がる。
なので教える相手をシリーズ装備を持つ者に限定することで秘密を漏らさないようにしていた。
「後は団子状態だね。『楽園』に『ハヤブヤ』とか。突出したところはないかな。あたし達は結局そうなった感じだけど、最初から探索度外視で進んでるところはあるかも」
「なるほど……。トップ以下はわかんないからもしかしたらそういうところが並んでるかもしれないんだね」
「ま、気にしても仕方ないよー。あーしらはあーしらで行けるとこまで行くだけだかんねー!」
考えてもわからないところは気にしない、とヘヴンリーが深みにハマりそうなマホを励ます。
「うん! 今日はギリギリまでやっていいって言われてるから最後までやるよー!」
両親も「トップが取れるならやってこい!」と送り出してくれた。
「それなら目標は今日も3フロア、地下120階ですね!」
「よし、都度休憩をしながらやっていこう!」
「やってやるっス!」
「そろそろ時間やでー! 準備はええかー?」
「「おおー!」」
“参謀“スマイルの最終確認に元気よく答える『気まぐれ』メンバー。
そして時間になると水晶玉が現れ、マホ達は無限ダンジョンへと入っていく。
そして約3時間後、マホ達『気まぐれ』が地下118階のボスを倒し次へと進んでいた頃、『躍進』は地下119階のボス部屋前でガーゴイルを倒したところだった。
「よし、ナンバー3隊は休憩終了。紅蓮とナンバー1隊はボス部屋突入! ハウスに戻ったら休憩をとってナンバー2隊突入後に戻ってきてくれ」
武蔵の指示が飛ぶ。
ここに来て『躍進』はメンバーを総動員した上でパーティを3つに分割していた。
「そんじゃ行ってくる。削りが足りてても戻ってくる、でいいんだよな?」
「ああ。全滅してしまうと入り口スタートになるからな。昨日のようなミスは二度と御免だ」
ボス戦において、『躍進』では本来なら一回のワード使用で連撃が可能な武蔵が参加する方が効率が良い。
地下101階からはその難易度から探索組も呼び寄せ二分割で進んでいて、ボス部屋へは武蔵も第一陣と共に入り、死んですぐに第二陣に合流する、という風にやっていた。
ただ昨日の地下118階では死に戻りの間にガーゴイル相手に残りの第二陣は半壊し、立て直しはしたがその動揺からか直後のボス戦で倒しきれず全滅してスタート地点からやり直しという大失敗を犯してしまった。
辛うじてボスを倒すのは間に合ったものの、そのせいで地下119階を攻略することはできなかった。
なので今日の武蔵はガーゴイルに集中し、ボスを他のメンバーに任せることにした。
元々ボスへ同時に攻撃できる人数が12、3人だったというのもあり、無駄を極限まで省いたのが今日の作戦だ。
紅蓮達がボス部屋に入ってすぐにガーゴイルが最初に鎮座している扉の両脇に再び現れる。
これがボス部屋内から紅蓮達がいなくなった合図だ。
「よし、一体は任せたぞ!」
二刀を構え臨戦態勢で待っていた武蔵はすぐに戦闘に入る。
このやり方なら半分だった昨日までよりも多い人数でガーゴイルに当たることができる。
そして、武蔵が一体を倒しもう一体にも加勢すると、一気に戦闘が終わる。それでも倒し切るのに20分程かかっていた。
「よし、ナンバー2隊が突入する。紅蓮達は戻ってきてくれ」
パーティメニューを開いて指示を出す。
これでまた同じ人数でガーゴイルを迎え撃てる。
そしてまたガーゴイルが出現し、それを倒す。
「削りの方はどうだ?」
『武蔵さんが入らなくても十分なダメージ入ってます!』
ボスの反撃にやられ、ハウスに戻ったナンバー2隊から返事が届く。
「ふっ、言ってくれる。じゃあ紅蓮、すまないな、損な役回りで」
「ああ。お前たちがボスを倒したら俺はガーゴイルにやられて戻る、デスルーラだな。まぁ気にすんな」
最後に武蔵がボス部屋へ入るのが念の為なら、外に紅蓮が残るのも念の為だ。
もちろん万が一の時は紅蓮もすんなりやられるわけにはいかない。
そして武蔵とナンバー3隊、更に紅蓮以外のナンバー1隊がボス部屋へ入っていく。
「さて、地下120階もこれでいけるといいんだがな」
万が一はないと確信している紅蓮は被弾する心の準備をしつつ、その先の階層へ気持ちを向けていた。
それから更に3時間後、マホ達も地下119階のボス部屋へ突入していた。
「いくよ! 無数の光の槍よ 魔の根源たる我に応え敵に降り注げ! シャイニングランスレイン・ジャッジメント!」
マホの詠唱と魔法の発動に合わせてメンバー全員の一斉攻撃がボスの闇のエレメントを襲う。
「まだだ!」
ボスの健在に気付いたリョウヤが叫ぶ。
闇のエレメントの反撃により、部屋を闇が包む。その一瞬の間、お互いの姿も見えなくなる。
「もう一発! 光の槍よ 魔の根源たる我に応え敵を貫け! シャイニングジャベリン!」
これまでの階層で反撃を何度か見てきていたマホはすぐに次の行動に移っていた。
ボスの姿が見えると同時に魔法を放つ。
「全言葉光剣!」
「紫電一閃・貫通撃!」
そこに生き残ったリョウヤとレイも合わせる。
「マホちゃんナイス! やっぱり君は残ったね」
「な、なんとか。ギリギリですね」
マホのHPは残り1/5程となったが、もっとギリギリなのは二人の方だ。
「さすがマホ姉さん。わたしも結構補正上げたと思っていたんですけど、次は耐えられなさそうですね」
「だな。地下110階の時もそうだったが、次はおそらく雑魚敵もHP上昇度合いがまた上がるはずだ。倒し損ねて戻ってくるのは難しいだろうな」
「やっぱりヘヴンリーが頼りだね。じゃあ一旦ハウスに戻って回復するまで休憩かな」
「そうしましょう」
地下119階の攻略を終えたマホ達は休憩をとるためハウスへ戻っていった。
そしてその頃の『躍進』はまた一段と強化された雑魚敵に道を阻まれ、ボス部屋前にすら辿り着けずにいた。
お読みいただきありがとうございます。
イベント攻略自体は次で最後です。
そこで一旦更新はお休みさせていただきます。
累計1000ptと10万pv同日達成ありがとうございます!
まだまだ書きたいことはありますので是非お付き合いください。




