第82話 無限ダンジョンイベント攻略 その⑩ ご褒美フロア編
「100っ!」
「層っ!」
「とうちゃーく!」
次の土曜日、マホ達は遂に地下100階へと到達した。
マホ、スマイル、ヘヴンリーがテンション高く声を並べる。
「まさか一週間でここまで来るとは思ってなかったわ」
「『躍進』に釣られたな」
「もうちょっとっス! 追いつくっスよ!」
「正確には今日開始時点で4層差ですね。大分縮まりました」
マホ達がログインした時に表示された最高到達階層は地下102階で、マホ達は昨日地下98階まで進んでいた。
「それにしても道幅もかなり広くなりましたね」
「そうだねー。ちょっと進んだらモンスターがウヨウヨいるもん」
この無限ダンジョン、無のフロア以外は10階層進むごとに少しずつ本筋の道が太くなり、天井もかなり高く、鳥型モンスターが特に厄介になっていた。
さらにモンスターの数も増え、真ん中を突っ切るとその全てと戦うハメになりかなりの時間を要した。
先を急ぐマホ達は試しに壁側に寄って進んでみたところ、その戦闘を半分程度まで抑えることができたので、それを継続している。
たまに徘徊している中央側のモンスターから反対側までリンクしてしまうこともあったが、その時は運が悪かったと諦めて殲滅した。
「差が縮んだのは『躍進』より戦闘を回避できているからだろうな」
「だねー。あっちの人数であーしらみたいにコソコソとは行けないっしょ」
リョウヤとヘヴンリーの予想は当たっていた。
道中のモンスターもだんだんと強さが増していて、攻撃力だけなら通常ダンジョンのボスクラスと、雑魚が雑魚でなくなっており、戦闘を極力減らしているマホ達ですら警戒を怠れない。
そんなモンスターを『躍進』はほとんど倒しながら進んでいたのだった。
「しっかし、この階は静かやなぁ。もしかしてボーナスステージやったりして」
前の地下99階なら既に会敵していてもおかしくない辺りまで進んでいるのだが、モンスターの気配が全くない。
「ね、ハーちゃんは後ろから見てて何か違いある?」
スマイルの言ったこの階の雰囲気の違和感に、同じことを感じたマホが最後尾を歩くハートを振り返る。
「そうですね……特には──」
「なんかいる!」
マホは答えようとしたハートを遮って声を上げる。
振り返ったマホにはハートの背後の奥に何やらキラキラと光るものが見えていた。
「どこ!?」
ヘヴンリーもそれに反応して振り返る。
「どうする? 一旦戻る?」
先を急いでいる状況ではあるのでティエラはその後方で光るモノを調べるのかどうか、マホに判断を委ねた。
「行ってみよう!」
即決だった。
迷うことなくそう言ったマホに従って『気まぐれ』は来た道を戻る。
「あ、あれは!」
「モンスターっス!」
レイとアークの兄妹が指差した先には金色に輝く犬型のモンスター。
「ゴールデンドッグ! しかも☆付きってことはレアモンスターやん!」
その名前を見たスマイルが興奮しながら叫ぶ。
「そんなフロアがあるのか」
「100階のご褒美かしらね」
道中のモンスターはボスと同じ属性だと公式に明言されている。
つまりこのフロアはレアモンスターのみの階層ということになる。
「逃げてくよ! ティエりんお願い!」
「! 任せて!」
通常のレアモンスター同様に逃走しようとするゴールデンドッグに対して、マホがこの中で一番遠距離への攻撃速度の速いティエラへ託すと、その信頼に応えるべく弓を構え、射抜く。
「よし、止まった! ヘヴンリー行くぞ!」
「おっけー! レーちゃんも行こー!」
「はいっ!」
ワードなしの矢はダメージはそこまでなかったが、ゴールデンドッグの動きは止まる。
その隙をリョウヤ、ヘヴンリー、レイの三人で突撃して倒した。
「魔法の出番はなかったかぁ。ホンマ強いわこのクラン」
「一瞬だったっスね。自分も投げる暇もなかったっス」
参加し損ねたスマイルとアークは少し悔しそうに、しかし頼もしそうに仲間を見る。
「ドロップは10000Gですか。太っ腹ですねぇ」
いつの間にか最前線に追いついていたハートがドロップを確認している。
「地下90階から1匹あたり900Gだったって考えたら美味しいわね」
お金のドロップは地下11階以降10階層進むごとに100Gずつ増えていた。
「イベント終わったらノーマルのワード揃えられそう」
このイベントが始まってから稼いだお金は結構な額に達している。
1ワード10000Gで、まだ購入していないワードを買い揃えるにはまだまだ時間がかかると思っていたマホもようやくコンプリートが見えてきていた。
「そういやイベント前にいくつか買ったんだっけ? 前回のイベントの報酬まだ使ってなかったのは驚いたけど」
マホの呟きにヘヴンリーはマホから聞いた話を思い出す。
「うん。使うかもっていうのを選んだんだけど……。トライアングル来たら何かで必要になるかなーって思って取ってたの」
前回イベントが終わった時点で既に次の街への移動を考えていたマホは賞金に手をつけていなかった。
今回はそのお金でいくつかノーマルワードを購入していた。
「ノーマルを揃えていないのにあんな……さすがマホ姉さんです!」
レイはマホがノーマル未コンプリートであることは初耳だったらしく、更なる畏敬の念を抱いている。
「も、もう、レーちゃん褒めすぎだよ──って、あれ!」
照れつつ前を向き直したマホは次なるレアモンスターを発見する。
「さっきまでいなかったのに。そうか、あたし達が後ろを向いたから……!」
レアモンスターはプレイヤーの視界内にはPOPしない。
ティエラは今回全員で後方のゴールデンドッグを追いかけたので、本来進んでいたはずの方向にも出現したことを理解した。
「よーし、アレも倒して先に進もう!」
次はゴールドマン。こちらもドロップは10000Gだ。
その後は後ろを気にせず前へと進む。
稼ぎをするとしても周回するようになってから、と直感で決めた。
「うわっ、ガーゴイルも金ピカやんけ!」
ボス部屋の扉の前までやってくると、これまで目の色が変わるだけだったガーゴイルも、ゴールデンガーゴイルとなって輝いている。
「通常より硬そうだな」
「それなら! ティエりん、私に合わせて!」
「わかった!」
「ほな、あー君はウチに合わせてや!」
「ウッス!」
リョウヤの言葉にマホはすぐさま作戦を立てる。
遠距離の武器と魔法で組んで倒そうという考えだ。
ダメージの均等化ならマホとアーク、スマイルとティエラで組む方が良いのだが、咄嗟のことで思わず仲の良いティエラを指名しているのは仕方のないことだろう。
「飛び上がりの誘発はあーしらでやるよー!」
「マホ姉さんのところへは行かせません!」
「おっと、セリフを奪われたな」
盾持ちのリョウヤが言うはずの台詞はレイに先を越された。
これまで幾度となく戦って、ガーゴイルの行動パターンは把握している。
回避を優先するガーゴイルは一度目の攻撃は必ず横へ避け、そこへ攻撃を続けると、次は上へと跳躍する。
まずはリョウヤとヘヴンリーが二体のガーゴイルにそれぞれ斬りかかり、それを避けたガーゴイルにレイがワードで威力と共に攻撃範囲の広がる青龍偃月刀で同時に薙ぐ。
「ここっ! 闇の魔槍よ 我が敵を貫け! ダークジャベリン!」
「高速の魔弾で狙い撃つでぇ! マジックバレット!」
マホの合図でスマイルも同時に詠唱し、ティエラとアークも構えてタイミングを魔法の発動に合わせる。
見事にそれぞれがガーゴイルを捉え、撃墜に成功する。
「おっ、金核ゲットー!」
その片方のドロップを確認したヘヴンリーが拳を突き上げる。
「本当に太っ腹ね。金核までロットなしなんて」
普段なら争奪戦になる金核が全員入手できていた。
「周回候補だな。といってもそうそう出ないもんだが」
「レアモンスター自体あんまり出ないですからね」
「そこはホラ、マホっちの豪運やん?」
「ええっ!? いやいや、そんなことないって。さっきも二体倒したけど出なかったでしょ!」
全員から期待の目を向けられて慌てて否定するマホだが、マホがレアモンスターと遭遇して金核がドロップしなかったのはむしろそこが初めてという異常さだ。
「ゴールデンモンキーでもドロップしましたしね」
「そういえばそうね。しかもその時にはもう今の杖になってたし」
「アカン、思ってたよりとんでもないわ。ウチがこの杖に強化できたん始めて何ヶ月経ってからやと思うとんねん……」
ハートやティエラの齎す追加情報にさすがのスマイルも呆れ顔だ。
「つ、次行くよ! 次!」
「その前にボスだよマホちゃん」
慣れないイジりを受けて混乱するマホに冷静にリョウヤがツッコミを入れた。
「そ、そうだった。ボスはみんなで一気にやろう! レアモンスターのボスなんてよくわかんないし!」
「ふふっ、そうね。下手なことして大ダメージなんてもったいない階だしね」
誤魔化すように作戦を出したマホに、クスクスと笑いながらティエラは同調した。
そしてこれにより完全なオーバーキルになる一斉攻撃をこの階層のボス、金のエレメントは受けることになる。
その後100000Gというこれまでにない美味しいドロップを得て、マホ達は『躍進』を追いかけて地下101階へと進んでいった。
お読みいただきありがとうございます。
本当は昨日更新したかった。。。
そしてイベントは佳境へ。
周回する暇はあるのか。




