第67話 新イベントの告知
トライアングルの噴水前に突如として現れた6人の忍者は、しばらくの間この街を拠点とするプレイヤー達の話題の中心となっていた。
他者のプレイを見ることが全てで自分が見られることを気にしないハートですら、普段の装備表示をOFFにし、忍者プレイの動画を投稿するのを保留していたくらいだ。
その動画は6月に入る翌週の土曜日にクランハウスに集まったメンバーで鑑賞会を行った。
そして約2時間程に編集されたその動画を見終えて感想を言い合ったところでリョウヤが切り出す。
「そういえば「公式の言葉」は見たか? 次のイベントの告知が来てたぞ」
「えっ? うそっ!?」
それを受けて、確認していなかったヘヴンリーは慌ててメニューを開く。
「あたしは昼に見たよ。なんとなくだけど、マホに合わせてるなって思った」
「私に? ちょっと見てみよっと」
ティエラがそう言ったことで時間的に明日確認しようかと思っていたマホもウィンドウを開く。
「なんや……? 無限ダンジョン?」
スマイルも未確認だったらしく公式ページを開いて確認している。
「なるほど、クラン対抗イベントですか」
ハートも同様だ。
「未所属でも参加可能だが、クランランキング対象外らしい。MVPを含めてその他の報酬は変わりないがな」
「クランを一つのパーティ扱いにして挑戦するダンジョンで、攻略階層を競うみたい。未所属は人数無制限のパーティになるんだって」
先に確認していたリョウヤとティエラも一緒にウィンドウを開いて説明していく。
その内容は、まずイベント期間は第二土曜から第四日曜までの16日間で、イベントダンジョンの解放は平日が17時から翌朝5時で土日は12時から24時の12時間。
イベント期間中はクラン・パーティの解散及び脱退不可(ログアウトしてもパーティ継続)となり、そのパーティでの無限生成ダンジョンの攻略が目的となる。
ダンジョンは階を進むごとに難易度が増すタイプで、各階層にボスとして属性エレメントがおり、その階層のモンスターはボスと同じ属性のものが出現する。
階層ごとに属性はランダムで、一度入った階層の属性は以後固定。
ボスのドロップ品の◯(属性が入る)のカケラを集めると、イベント後にその属性のワードと交換できるようになる。
なお、ワードのレアリティによってその必要個数は変化する。
カケラはボス部屋にいるメンバー全員が入手可能。(トレード不可)
「なるほどねー。でも、これがマホっちに合わせてる?」
説明を読みながら聞いたヘヴンリーは首を傾げる。
「だって、前のイベントからクランを作った途端にこれだし、メンバー的にランキングも狙えそうっていうのもあるけど、属性ワード交換だよ? あえて周回して特定の属性を集めてもいいわけでしょ?」
ティエラは感じたことをそのまま伝える。
「なるほどなー、まだワード揃ってないマホっちにはちょうどええイベントっちゅーわけや」
マホは属性を一通り持っているとはいえ、そのほとんどがノーマルだ。
特にレアのワードは狙って得ることが難しいのが、このイベントなら欲しい属性だけを集中して狙うということが可能になる。
「でも、どうせならランキング狙いたいなぁ」
「ええ、カケラはオマケと考えてもよさそうですよ。ほら、下の方に「カケラは今後のイベントでも入手できる予定です」とありますから」
マホの希望を後押しするようにハートがそう言う。
「俺もそう思う。報酬はまだ公開されていないが、おそらくそこにもカケラがあるんだろう。それに交換に必要な個数もまだ発表されていないんだ。俺なら、もしそれを狙って集めた結果足りなかったりしたら絶対に後悔するな」
リョウヤも続く。
「じゃー、攻略していくってことで作戦会議だー!」
張り切ってヘヴンリーが拳を突き上げるが、
「ヘヴンリー、そろそろマホがおねむの時間」
「あっ、そうだった! ごめん、みんな!」
ティエラに言われて時計を見ると、既に21時を過ぎていた。
「しゃーないしゃーない。ほな、続きは明日にしよか。リーダー抜きで攻略方法話すのはナシやで」
「そうだな、そうしよう」
「ええ、それがいいです」
スマイルが気にしない、とマホの頭を撫でてからメンバーに顔を向けると、リョウヤもハートも了承する。
「あ、マホ」
慌てながらログアウトしようとするマホをティエラが呼び止める。
「ん? なに?」
「たぶん明日から加入希望が来ると思うけど、初めて会う人は許可しちゃダメだよ。まぁ、うちはハウスが上限のものだから大丈夫だけど」
「あー、あーしら目立っちゃったもんねー」
承認はできないが、申請は飛んでくる。
それに許可というか更なる引っ越しが必要になるので、マホ個人への接触も考えられる。
「わかった。みんなに会ってもらってからだね」
自分では相手の判断ができないという自覚がある。
「それがいい。というか……ヘヴンリー達3人の誰かでもログイン時間合わせてやれないか?」
リョウヤは女性陣にマホのフォローを任せようと提案する。
自分やハートよりも同性の方が頼りやすいだろうと思っての判断だった。
「もち! なんならみんなでログインする?」
「そうね、そうしましょう。あたし達は12時にログインして噴水前にいるからマホは12時5分に入ってきて」
ヘヴンリーもティエラも「全員」のつもりで話を進める。
「俺達もか?」
女性陣に振ったつもりだったリョウヤはハートと顔を見合わせる。
「それがええやろ。男もおるって見せんと、また女が増えるかもしれへんで?」
「ではリョウヤさん、5分前行動ですよ」
スマイルの言葉へのハートの反応は早かった。
「決まりだな。じゃあマホちゃん、また明日」
「うん。みんなありがとね。おやすみー」
マホは自分をフォローしてくれるメンバーみんなが頼もしく、嬉しかった。
「おやすみマホっち」
「おやすみ」
「またなー」
「おやすみなさい」
その全員と顔を向き合わせてからマホはログアウトしていった。
「で、どないするん? 完全拒否っちゅーわけやないやろ?」
マホのいなくなったクランハウスでスマイルが意思確認を行う。
「うーん、変な人じゃなきゃあーしはいいんだけどさー」
「どうせなら面白そうな人がいいよね」
ヘヴンリーもティエラもメンバーが増えることには忌避感はないが、人数が少ないクランなだけにこうやって交友を深めることができる相手の方がいい、とは思っていた。
「オモロいって……ウチのどこがあかんの!?」
「スマぷーはほら、オチ担当じゃん? ってゆーか、マホっちがそもそもネタ要員なとこあるし」
「そ、そうかぁ?」
オチ担当でもアリらしい。少し照れてニヤけている。
「ネタはネタでもとんでもネタだけどな」
珍しくリョウヤもこういう話題に乗っかってくる。
「そーそー。で、リョウヤちんとティエりんは真面目系っしょ? あーしがニギヤカ担当でハーちゃんが撮影係で……これに加わるってどんな感じ?」
「お嬢様? とかオネエ系?」
ヘヴンリーの分析にティエラもそこにないキャラを挙げる。
「勘弁してくれ……」
「ええ、それはちょっと……」
それには男性陣から拒否反応が起こる。
「ニギヤカ担当の男が増えればええ感じやないん?」
スマイルはヘヴンリーと一緒に盛り上げるイケイケタイプをイメージしたらしい。
「……念の為言っとくけど、あーしこう見えてチャラいの苦手だかんね? ぱーりーぴーぽーは無理なの」
それを察したヘヴンリーが素で拒否する。
「ヘヴンリー、素が出てる」
「おっと」
付き合いの長いティエラにはそれがわかった。
指摘されてヘヴンリーも表情を戻す。
「へぇー意外や」
「そりゃあゲームだから楽しくやりたいからねー。まぁ、あーしが無理なのを置いといても、マホっちにそんなの近付けたくないし?」
「過保護だねー。でも同感かな」
「まー、確かになー。ウチも言っといてなんやけど、マホっちに悪影響なのはあかんなー」
根が真面目なヘヴンリーはマホを最優先に考えていた。
それはティエラもスマイルも同じだった。
「明らかにダメなのは俺達が弾くとして、最終判断はマホちゃんの勘に任せるってのはどうだ?」
「どんなキワモノを呼び込むか気になりますねぇ」
リョウヤの提案にハートは同意し、その相手が予想できないことが楽しみになりつつあった。
「案外普通の人だったりして」
「それはそれでアリ」
「せやな。ま、増えんこともあるやろし、ウチらだけで深刻になってもしゃーないか」
話を振ったスマイルがそうまとめると、それぞれログアウトしていった。
お読みいただきありがとうございます。
新メンバーの予感。
そしてイベントの細かいところは次回の作戦会議で。
それにイベント開始から2日参加できないマホはどうするのか。




