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第63話 突入前の最終確認

 日曜日、メンバーが揃った『気まぐれ』はトライアングルの街を東に出て、ピラミッドのあるエリアも越えて更に歩く。

 まだみんな装備は普段のままだ。


「見えてきたぞ」


 リョウヤが指差す先には砂岩のブロックで作られた祭壇のようなものがあり、その上に水晶玉が浮かんでいる。


「あー、まだいるねー」


 その周囲にはエリアボスに挑もうとするプレイヤーが何パーティか順番待ちしている。

 ヘヴンリーが言っているのはその人達のことだ。


 『気まぐれ』の移動手段は割と目立つ。

 それが全員忍者シリーズ装備となればなおのことだ。

 なのでなるべく順番待ちの少ないタイミングで、と装備も一旦戻して歩いてきたのだった。


「さすが日曜日。12時解放でまだいる」


 エリアボスは挑戦回数に制限があるので、バトルフィールドも12時から24時までと解放時間が決まっていた。


「ですが後続はいないようですし、僕らの番もすぐでしょう」


 バトルフィールドはパーティごとに独立しているので、順番待ちといっても前のパーティが入ってしまえばすぐに次が入れる。

 移動手段を使って向かってくるプレイヤーもいないようで、ハートの言う通り抜かされて更に待つようなこともなさそうだ。


「そういえばヘヴンリーはどんな短剣にしたの? あれって色々選べたのかな?」


 マホは操作ミスで入手したインビジブルナイフ以外は四種しか見ることが出来なかったので、他の選択肢にどんなものがあったのかも気になったようだ。


「けっこー色んなのあったよー。それにさ、マホっちは柄そのままだったじゃん? あれ、ホントは刀身変えたら柄も変わるっぽいよ。見る?」


「見る見る!」


 マホがノってきたのところでヘヴンリーはメニューを操作し装備を変更すると、背中の大剣が消え、腰に短剣が現れた。


「ん? ヘヴンリー、これ短剣?」


 反応したのはティエラ。

 見えている柄が武器というか、ただの綺麗に加工された木の棒なのだ。


「ははっ、だよねー。あーしもビックリしたもん。ホラ」


「包丁やんけ!」


 ヘヴンリーが鞘から抜くと、スマイルが即ツッコミを入れた。

 ヘヴンリーの持つ短剣は先の尖った包丁だ。刃の部分が直角三角形の形をしている。


「名前もカニ包丁だって。ウケる」


「カニって……はははっ。カニって……ふふっ」


 武器名を聞いたマホはツボに入ったらしく、腹を抱えて身悶える。


「ヘヴンリーらしいと言えばらしいんだけど……。まぁ、サソリにも使えそうでよかったね」


 そう言うティエラも笑いを堪えている。


「ちなみに効果の方はどうでした? ふふ……失礼」


 ハートですら吹き出しそうになりながら問いかける。


「もーみんなして! ホントに使えそうなんだってば!」


「はは、悪い。こんなネタ装備俺も初めて見たからな。で、どう使えそうなんだ?」


 ムキになるヘヴンリーにリョウヤも手を挙げて謝りつつ、効果を確認する。


「マホっちの物理版かなー。基本の攻撃が500で、補正ワードが増えるとダメみたい。それとは別に突き攻撃が敵の物理防御に反比例するんだって」


「へぇ。硬ければ硬いほどダメージ入るんだ?」


 ヘヴンリーの説明を聞いてティエラはすぐに理解する。


「あーしも尖ってる方がサソリに効くかなーって思ってこれにしたんだけどさ、効果だけなら大当たりっしょ」


 見た目はアレだが、ヘヴンリーもハズレを引いたとは思っていない。


「まぁ、そうだな。しかし柔い相手には効かないのか。コンニャクが切れない斬鉄剣みたいだな」


「リョウヤ、たぶんマホには伝わらないと思うよ」


 リョウヤが思い浮かんだものを挙げるが、ティエラが冷静にツッコむ。


「え? なんのこと?」


 ティエラの予想が当たったらしい。


「あー、すまん。忘れてくれ」


 ジェネレーションギャップにショックを受けるリョウヤだった。



「さ、あのパーティで最後みたいですよ。僕らもそろそろ行きましょう」


 ハートが促し、『気まぐれ』は祭壇の前に移動する。


「マホっちはあの水晶玉に触って出たウィンドウで「挑戦」を選んで。そんで魔法陣が出るから、みんながその中に入ったのを確認して「突入」って言えば入れるよー」


「うん、わかった!」


 バトルフィールドへの突入方法をヘヴンリーが説明し、マホは拳を握る。


「最後に確認ですが、リョウヤさん達の忍者シリーズは入手順ってどうなってます?」


「リーダーだった俺が最初で、後はパーティに誘ったティエラ、ヘヴンリーの順だな」


 ハートの質問にリョウヤが答えると、ハートは顎に手を当て考え出す。


「ん? ハーちゃんどしたん?」


 その様子にスマイルが顔を覗き込む。


「今回はその一番最後……割合が落ちてないヘヴンリーさんを主力で行きましょうか。ちょうどいい武器も手に入ったみたいですし」


「あそっか! あーしは無敵!」


 忍者シリーズのダメージカット割合は10割からスタートする。

 つまり被ダメージがない。


「油断してビーム喰らわないでね」


「わ、わかってるってー!」


 昨日ハートからビームはその効果すら無視すると説明された。

 そのことを忘れかけたヘヴンリーにティエラが釘を刺す。


「あ、前のパーティがいなくなったよ! みんな装備用意!」


「はーい! マホせんせー!」


「ふふっ」


 マホがしっかりとリーダーシップを発揮して、全員が忍者シリーズに着替えると、武器も切り替えて祭壇に登った。

お読みいただきありがとうございます。


次回はボス戦です。


サソリの敵というとFF7の最初のボスかモンハンのアクラ・ヴァシムのイメージ。

なのでそんなのが出ると思います。

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