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第46話 関西弁の乙女(?)

 噴水へ向かう『気まぐれ』一行はその道中に呼び止められ、揃ってその声の方へ振り向く。


「えっと……誰……ですか?」


 その人物に心当たりのなかったマホは恐る恐る問いかける。


 頭上にHPバーと【スマイル】というプレイヤーネームが表示されていて、NPCでないことはすぐにわかった。

 そこから視線を下げていく。


 ピンクの太いツインテールを留める主張の激しい赤いリボン、大きな猫目に薄紫の瞳。そして防具は足のほとんどを隠す黒のワンピースロングスカートに肩掛けと腰には大きなバックルの白いベルト。そのベルトには茶色の四角いポーチが装着されている。

 更に背中にはマホと同じ杖を装備していた。


「ぐっ……知られてると思ってたのはウチの思い上がりやったか……」


 それなりの知名度を持つプレイヤーなのだが、マホが知らないとわかりガックリと肩を落とす。


「マホっち、スマイルっていったらイベントでトライアングルのMVPだったプレイヤーだよー。ほら、毎日MVPだったっしょ?」


「えっ、そ、そうだっけ……。ごめんなさい。私、自分のいたところの結果しか見てなくて……」


 ヘヴンリーに言われて、スマイルのことに気付かなかったことを謝罪する。


「あー、冗談や。初対面なのに悪かったなー。ウチはスマイル。よろしゅうな」


 まさかそこまで気にされるとは思わずスマイルも慌てて白状し、改めて自己紹介する。


「は、はい! マホです! よろしくお願いします!」


「はは、そんな畏まられるんニガテやねん。ラクーにな」


 カッチカチのマホの挨拶に思わず苦笑いが溢れる。


「その子は前のイベントでも上位だったんだよ。確かクランはどこにも入ってなかったよね?」


 ティエラ含め『躍進』のメンバーはスマイルとは初対面だが、ランキングに載るプレイヤーのチェックはしていたので多少の情報は持っていた。


「せやけど……“子“て。確かに背は低いけど子供扱いせんといてーな」


 身長はマホとさほど変わらない。

 ちなみにマホの身長は149cmと平均より低めだ。逆にヘヴンリーは168cmと平均以上で女性陣では一番高く、ティエラが155cmと続く。

 男の方はリョウヤが172cm、そしてハートが177cmとパーティでも一番高い。


 これはVIS本体に入力したデータを再現しただけだが、現実と大きく異なると脳が混乱を起こす可能性がある為、現実の数値を入力することが推奨されている。

 そもそも現実との乖離はPSの低下に繋がる為、わざわざVRゲームをするようなプレイヤーはほとんど現実通りの身長、体重を入力していた。

 マホはデフォルトが自分に近かった為ほとんど弄らなかったが、当然ながら体型は初期設定時に変更し、現実に近付けることが可能だ。



「だって、そんな髪型して……ねぇ。どう見ても年下だよね?」


「これはこのリボン装備したらこうなったんや! せやけど効果良いしこっちの装備は表示したいしで仕方なくな。ホンマはゆるふわなオトナなアバターなんやで?」


 スマイルは魔女のような防具は気に入っているが、それを表示したいが為に髪型の変化するリボンも一緒に表示することになってしまっているらしい。


「あたしより年上? なら……おばさん、かな」


 先程のリョウヤに対してもだが、ティエラの毒舌が冴え渡る。


「なんでやねん! うら若き乙女つかまえて、言うに事欠いて「おばさん」て!」


「うら若き乙女?」


 スマイルの反応を楽しむように言葉を拾うティエラ。


「つまり処──」

「言うなぁー! 確かに経験はないけども!」


 ヘヴンリーが吐きそうになった暴言を遮るが、自爆してしまう。

 それを聞いたティエラとヘヴンリーは辛うじて声を出すのだけは堪えたが、腹を抱える。


 そしてそんなやり取りについていけず傍観している男二人。



「あっ、私も初心者なんだ!」


 そこにマホが斜め上から切り込む。

 経験がないというのをゲーム初心者だと思ってしまったらしい。


「ちょっ、マホっち! ぶはっ!」


 堪えていたヘヴンリーに限界が訪れた。

 実は楽しんでいたスマイルもその反応には冷静さが戻る。


「そうやのーて……ウチはこのゲームは長いんや(この子天然か?)」


 弁解しつつティエラにこっそり確認を入れる。


「(それもあるけど、たぶん思ってるより若いよ)」


 ティエラも合わせてこっそり教える。ただし、実年齢等の詳細は避けた。


「(そうかーそら話題が悪すぎたなー)」


 それを聞いてスマイルも反省する。


「そ、そうなんだ……」


 そんなやり取りには気付かず、初心者仲間かと思ったマホは少し残念そうに身を引いた。



「それで、何か用なのか?」


 姦しい話が途切れたのを見計らって、リョウヤが問いかける。


「あーそうやった! 『躍進』の三人にイベントで見た名前やったからな。みんなイベントガチってたんやろ? 一言謝ろー思てな」


 悪ノリしすぎて本来の目的を忘れかけたスマイルはそう告げた。


「謝る? 何に?」


 元『躍進』の三人はなんとなく察したようだが、マホにはスマイルから謝罪を受ける理由が全く思い当たらず、その理由を問う。


「こっちの白虎戦なー。ほぼハメやってん。けど、他に対応策もなくて結局最後までやってもーた。それについてや」


 どうやらイベント後も明かされなかったトライアングルがずっと一位を獲り続けた方法にスマイルは申し訳なさを感じていたらしい。


「なるほどな。だが、おそらく誰も気にしていないぞ? バグや違反なら運営が対応していたはずだからな」


「それでもや。ウチはあんな攻略するつもりはなかってん」


 違反をしたわけではないが、それでもスマイルのゲームプレイヤーとしてのポリシーには反していたらしい。

 さっきまでの喧しさはどこへやら、神妙な面持ちに変わってしまった。


「ならどうやって一位を獲ったのか聞かせてくれないか? それが聞ければ俺は満足だ」


「うん、あーしも気になってたし、それでいーよ」


「あたしも」


 元『躍進』の三人がそう促すと、スマイルはイベント時の出来事を語り始めた。

お読みいただきありがとうございます。


身長に関しては今更感ありますが、どこかで入れようと思ったままここまで来てしまいました。


ちなみに今後も出す予定のない年齢設定(進行中の年で)

リョウヤ 26歳

ハート 23歳

紅蓮 25歳

武蔵 24歳(早生まれで紅蓮と同世代)


ついでに、後で出るかもしれませんがスマイルは26です。

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