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第35話 GWイベント その⑦ 決断編

 マホ達第二陣が2回目の出番を終えたところで、朱雀のHPは半分以上減っていた。

 その時点で17時を回っていたこともあり、マホは食事の為ログアウトしていった。


 そして昨日と同様お風呂まで済ませたマホが戻ってくると、紅蓮からのメッセージが届いていた。


「何かあったのかな?」


 そう呟きながらメッセージを再生する。


『マホちゃん、戻ったらすぐにコールして!』


 マホがログアウトして30分後くらいに送られていたそのメッセージはかなり慌てた様子だった。

 その雰囲気を察したマホはすぐにフレンド通話で紅蓮を呼び出す。


『マホちゃん! ナイスタイミングだ! すぐに戦場(こっち)に来て!』


 ここでも紅蓮は焦った声を送ってくる。


「どうしたんですか!?」


 何やらトラブルでもあったのだろうとはわかったが、ここまでそれらしいことは何もなかった。なのでマホには何が起こっているのか全く見当もつかない。


『第三陣が()()()! それで常駐組にも離脱者が出始めてて火力が足りない!』



 それは紅蓮がマホにメッセージを送る数分前──。


「やはりクワトロのクランがいる第一陣で無理なのにこっちのクランが止められるわけないよな……」


 その時朱雀は火球を放つ為の飛翔モーションに入ろうとしていた。既にHPが半分を切っている為、放たれる火球は二発に増えている。

 今回偶然の一度を除いて、火球を止められたのは全てマホの魔法だった。そして、その一度も『躍進』のいる第二陣の時だ。


「後衛は一旦街の中に退け! どうせ耐えられねーんだ、ダメージを減らすぞ!」


 紅蓮が声を掛けて可能な限りのプレイヤーが避難する。

 そして火球が放たれたであろうタイミングを見計らって戦場に戻ると、昨日も見たほとんどのプレイヤーが戦闘不能になり噴水へ飛ばされた悲惨な光景が広がっている。

 ただ、ここで昨日とは異なる事態となる。


「ん? あいつら戻って来ねぇな……」


 戻ってきたのは常駐組の非協調クランやソロプレイヤーだけで、第三陣の姿がない。

 いるのは連絡係として後方に待機していて一緒に街へ避難した後衛数人だけだ。


「あの……紅蓮さん」


 その内の一人の男性プレイヤーが紅蓮に声を掛けてきた。


「どうしたんだ? 他のメンバーは?」


「そのことでご相談があります」


 そう切り出された時点で紅蓮には何を言われるのか大体の予想はできていた。


「わかった。おーい、ちょっと通話切るなー」


 紅蓮はパーティ通話にそう言ってメニューを閉じてその男と向かい合う。


「あの子は……あの子の援護を頂けませんか?」


 あの子、とはもちろんマホのことだ。


「だからあの子はうちのクランのメンバーじゃねぇ……って言いたいところなんだがな。状況的に必要だとは俺も思う。だけど、ついさっき食事でログアウトしたばかりなんだ。……ああ、さすがにまだオフラインだな」


 紅蓮も今マホがいるのなら呼びたい。その気持ちは同じだった。

 フレンドリストを確認するが、やはりマホは戻っていない。


「そうですか……」


「メッセージは送っておくが……あと1時間は戻らないだろうな」


 紅蓮がそう言うと、男もパーティ通話でなにやら相談を始める。

 そして、


「リーダーからの言葉をお伝えします。「これ以上の参加は無駄に受けるダメージを増やすだけになってしまう。この街が勝つ為にできることの見直しをしたい。だから今日はここで撤退させてくれ。これは第三陣の総意だ」──以上です」


 この男のクランを含め第三陣のメンバーが噴水前で集まって話し合っていた。

 その結論が正攻法での参加では無理、ということだった。


「クソッ!」


 紅蓮のそれは第三陣に向けたものではなかった。

 その判断に「ありがたい」と思ってしまった自分自身に向けてだ。


「いつもの自分のスタイルで参加したいだろうに……すまないな」


 このゲームは基本的に自由だ。

 だが、このレイド戦では……集団で競争している現状で勝利を目指す為には、どこかで折れなくてはならないのも事実だった。

 それを知っている紅蓮が「ありがたい」と思ってしまうのは仕方のないことだ。

 それでもそう決断した第三陣には申し訳なさの方が強かった。


「いえ、それは朱雀と……今ここにいる紅蓮さんも同じことでしょう?」


 その男は紅蓮が『火』を得意としていることを知っているようだ。

 そしてその紅蓮も今は連絡係をしているが、いざ戦おうとしても「自分のスタイル」では戦えない。


「まぁ、確かにな」


 そこを突かれた紅蓮は認めるしかなかった。


「だから……気にしないでください。むしろきっと何かの形で役に立ってみせますから!」


 彼らも折れたのはそこだけで、イベントの参加自体を諦めたわけではなかった。


「わかった。じゃあまずは第一陣と第二陣で動けるやつを呼ぼう。何もしないのはそれこそもったいないからな」


 そのことがわかり、紅蓮も切り替えた。


「はい! それと、今噴水にいる他のプレイヤーも動きを変えてくれるようです。みんなで勝ちましょうね!」


「ああ!」




 ──そして第三陣の残りを臨時のメンバーで凌ぎ、本来の第一陣の番となって今に至る。


「お待たせしました!」


 マホが戦場に到着すると、紅蓮はまず改めてマホをパーティに誘う。


「さっき二巡目の4ループ目が終わったとこだ。次の火球を止めてくれ!」


「はいっ!」


 さすがに第一陣はマホの水球の魔法には対応できない為、通常の攻撃魔法と「ウォータージャッジメント」だけの援護に留める。


「次の第二陣で仕留める! アレをフル回転でやるぞ!」


「わかりました!」


 第三陣が抜けたことで、紅蓮は今日は撃退を最優先とすることを第一陣のクランと話し合って決めていた。

 ここまで紅蓮が連絡係に徹していたのはある意味幸運だった。

 戦闘しながらではこういった話し合いをする余裕もなかったかもしれない。

 『躍進』ツイン組のまとめ役として来ていた紅蓮に、マホとの繋がりがあったことも大きかった。



 そして、本来第三陣が3回目の出番を迎えるはずのところも第二陣が継続して戦いつつ、そこに第一陣が合流する。

 これはマホの水球の魔法を経験しておく為だ。

 第一陣だけのときは混乱を招く為避けたが、この時ならばたとえ第一陣に混乱が起きても、もう何度か経験している第二陣が攻撃できる。


 常駐組が減ったことで、攻撃できずに溢れる者も少なく済み、結果的にはこれまでで最高のダメージ効率を出すことができたのだった。


 しかし、この日は最後の第一陣の二巡目以降以外の全ての第一陣と第三陣の戦闘で火球を被弾してしまったことでツインの順位は最下位に沈んだ。

 ただ、継続ダメージも発動者の与ダメージとして判定され、2日目のMVPをマホが獲得した。


 ちなみにこれはその日だけの結果で、総合での順位は最終日の翌日発表される。


 その他の順位は一位が変わらずトライアングル、三位もオリジン、そしてクワトロが二位まで上昇していた。そしてツイン以外のMVPは全て前日と同じ三人が獲得した。

お読みいただきありがとうございます。


以降はほとんど同じことの繰り返しになるのでダイジェストでお届けする予定です。


トライアングルとオリジンの戦闘に関してはMVPのプレイヤーに出番があれば軽い回想が入ると思います。

というかトライアングルはこの先行くことになるのでその時に出るとだけ言っておきます。

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