第12話 初めてのダンジョン エクストラ 隠しイベント編
入り口に戻れると言われて、マホは迷っていた。
「なんかチュートリアルでも似たような感じで続けたよね……」
あの時は続けるかと聞かれてチュートリアル継続を選んだ。
「それにワードが見れないのもモヤモヤするし……」
そのダンジョンマスターの声がしてからメニューのウィンドウが閉じられ、操作できなくなっていた。
手に入れたワードの確認を中断されたのも妙に心に残った。
「どうするのー? 残ってもいいけど、ダンジョン内はログアウトできないからねー?」
ダンジョンマスターが急かしてくる。
そしてログアウトできないと聞いて更に迷う。
既に15時を過ぎていて、また来た道を戻るとなると一時間はかかる。
さすがに戦闘不能になって強制的にホームポイントに戻される、所謂デスルーラなんて発想はマホにはなかった。
「うーん……! 残ります!」
決めたのはなんとなくだが、チュートリアルのようにまだ何かあるかもしれないという予感だった。
「ありゃりゃーいい勘してるねー」
「えっ? やっぱり何かあるの?」
「おめでとー! 君はこのダンジョンの秘められた装備の開放条件、初挑戦での全モンスター討伐をクリアしてるよ!」
ダンジョンマスターがそう言うと、マホのアバターがピカッと光り自動的に装備が切り替わる。
それと同時に、「マホは魔導師のローブ、魔導師のマント、魔導師の帽子を手に入れた」と右下に表示が出る。
「わわっ! あれっ? 装備の表示はOFFなのに……」
マホの装備は黒く先の長い三角帽子に地面に付きそうな長さの黒のマント、やや紫がかった黒いローブのまさに魔法使いといった物になっていた。
「ふふふ、今だけ特別に装備表示OFFでも君にだけ見えるようになってるよ。ダンジョンを出たら設定通りになるからね」
これはせっかくデザインしたのに一度も表示されないこともあり得ることからきた運営のこだわりだった。
「へぇー。これいいね! ONにしてもいいかも」
マホもこの見た目は気に入ったようだ。
「それじゃ、このシリーズ装備について説明するね。まずは装備を開いてー」
「はーい」
一瞬ワードを確認しようかと頭をよぎったが、真面目なマホはダンジョンマスターの指示に従う。
手に入れた魔導師シリーズの装備を見ると、チュートリアルで手に入れた毛皮のマントとは違って色々と効果が付いている。
魔導師のローブ 防御補正+1 魔法補正+1 被ダメージ時防御補正成長+1、魔法補正確率成長+1(1%) 成長限界まで所有者数残り10
マントや帽子も内容は同じだ。
「まず、一番大事なこと。シリーズ装備っていうのは全部装備してないと恩恵を受けられないから、必ず三つとも装備してね」
「はいっ!」
「次に、このシリーズ装備は手に入れた人──今回は君だね──以降に他の人が入手することに影響を受けるんだ」
「影響?」
「例えばこの魔導師シリーズは、ダメージを受けるごとに成長するんだけど、君以降に10人これを手に入れたらそこで成長は終わり。他のシリーズもどうなるかは違うけどあまり他の人が手に入れない方が有利になるようになってるよ」
「ええと……どういうこと?」
「だからこのシリーズをどこでどうやって手に入れたのかはみんなにはナイショだよ」
ダンジョンマスターはマホの質問に答えているわけではなく、相変わらず所定のセリフを続けているだけだ。
マホがいい感じに質問を入れているので会話しているように聞こえるが、実際には微妙に噛み合っていない。
そしてこのシリーズ装備こそ、リョウヤが掲示板で隠していたことで、リョウヤの騎士風の装備もその一つである。
ただし、リョウヤもこのダンジョンのシリーズ装備開放条件を知っていたわけではなく、未だ入手者が出ないことから初見が条件ではないかと予想していた程度だった。
なので初見以外の者とパーティを組まないように誘導したというわけだ。ただマホ以外誰も初見になるプレイヤーはいないことから──本人も言うように脅す形にはなったが──ソロを勧めたのだった。
更に偶然レアモンスターと遭遇、討伐できたことで条件を満たし、入手することができた。
そして、このシリーズ装備。各ダンジョンに用意されているのだが、その存在すら運営からも何の情報も出されていない。
手に入れるのに必要なのは運と勘。
入手者が後発プレイヤーに情報を出したくならない設定にすることで、それを強く推していた。
リョウヤ他僅かな入手者も、それを理解し、またはこの説明を受けて一切情報を公開していない。
ちなみにリョウヤの騎士シリーズは以降の入手ごとに補正成長するが、その間隔が空くほど補正値が上がるというもの。10人で成長が止まるというのはマホのものと同じだ。
なのでリョウヤはあえて装備を表示し、それを理解できるシリーズ装備入手者にのみ教えることで高い補正値を得ていた。
「なんとなくわかった! この装備は他の人が手に入れない方が得ってことだね」
ただし、現時点で三つ合計の防御補正は+3。毛皮のマントは単体で+20なので、それに比べてかなり低い。
マホは買っていないが、店売りの防具でも揃えれば+60を超える。
なのでそれなりの性能を持たせようと思ったら結構な回数被弾する必要があった。
それに両親が気付いてからはしばらくダンジョンに籠ることになるのだった。
「それじゃ、またどこかのダンジョンでね! 見つけてくれるのを待ってるよー!」
そう言ってダンジョンマスターからの反応はなくなった。
「あ、ほんとにここからは自力で戻るんだ」
ちょっとだけまた入り口に戻るか聞いてくれるのを期待していたマホは、残念なような複雑な表情になる。
「まいっか。さっきのワードも確認しておこっと」
気持ちを切り替えてメニューをいじる。
斬 スーパーレア 補正
「うーん……魔法で斬るなんて言わないよねぇ?」
使い道が思い浮かばなかったマホはメニューを閉じて入り口を目指す。
道中にまたモンスターと遭遇すると、あえてダメージを受けてみる。
「あっ! ほんとに防御補正が増えてる! 帽子は魔法補正も! やった!」
まだ微々たるものなのだが、新しい要素がそれだけで楽しく感じる。
そうしてやや時間をかけつつダンジョンを出ると、そこにリョウヤが待っていた。
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