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(後編)

ここからTS描写です。

「結論から申し上げますと、その体を戻す事は不可能だと思われます」


 少女の体になって次の日、王宮魔術師の研究所にて、魔術ギルドから派遣された錬金術師と王宮魔術師が丸一日かけて調べて出した結論はそれだった。


「何故不可能なのか、俺にも分かるように説明できるか?」


 なんとなくそんな気はしていたが、やはりちゃんと説明して貰えるならそれに越した事は無い。


「簡単な事です。ライアス殿の前の肉体は完全に分解され、そして分解された体を素体にその体が再構築されたのでしょう」


 紙に図を書き説明をしてくれる、簡単な図だが分かりやすくて助かる。


「今回は一時的な変身では無く、完全に作り換わっているので、仮に元に戻すにしても、もう一度分解再構築する必要があると思われますが、リスクが高すぎるので勧められません。と言いますか、今のその体が成功してる事自体奇跡みたいな物ですよ」


 錬金術師が渋い顔をする。それ程までにこの体は偶然の産物なのだろうか。


「しかし、何故少女の姿なんだ?」


「さぁ、それは分かりませんけど・・・、単に術者の趣味だったんじゃないですかね?どうせ体を再構築するなら、この際に自分の理想となる様に」


「うげ、それを聞くと複雑な気分になるな」


 自分の体が他人の理想形とか気分は良くない。ちなみに今日の格好も練習着だ、着れる服が無かったので仕方が無い。


「術式は不明ですが、状況を整理し、今日ライアス殿の体を調べ結果と、奴の行った事を推測すると。魔法陣で地脈と繋ぎ、その力を吸い上げ、分解した体を再構築する際にその力を一緒に閉じ込めてしまうと言った感じでしょうか」


 とんでもない話過ぎて理解が追いつかない。


「それで、何故俺はこんな姿になったんだ?やはり魔法陣の中心を奪ったからか?」


「多分そうでしょうね。こういう術式は大抵中心に集まるようになっていますし」


「すると、俺のこの身はその凄い力が備わっているのか?」


「可能性は非常に高いと思います。ですが、詳しい事はまだまだ不明ですので、しばらくは時間を下さい。現場の方も調べて解析しますので」


 一日で分かった内容としては上出来の部類だろう。ウチの国の識者達は腕が良いようだ。


「わかった、引き続き頼む。俺は今日の所は引き上げるよ」


「了解です、お疲れ様でした」


 少し埃っぽい研究所の部屋から出て、帰路に着く。ここに来る前の打ち合わせで、俺の騎士団での作業は当分様子見という事となったので、しばらくはゆったりとした日々が続きそうだ。




「ただいまー」


「パパ、お帰りなさい!」


 アメリアが勢いよく飛び込んでくる。普段ならこの小さい体がぶつかって来ても受け止められるのだが、今の俺の体は娘より少し大きい程度だ。

 当然俺は受け止めきれずに、娘と一緒に転んでしまう。


「いたた、すまないなアメリア。パパこんな体だから少し手加減してくれると助かるよ」

「うん、パパごめんなさい。次は気をつける」


 素直に謝れる子に育ってくれて父親としては嬉しい限りだ。


「アナタお帰りなさい。どうでした、何か分かりましたか?」


 アメリアに遅れてシエナも奥から出てくる。


「あぁ、それなんだが・・・」





「つまり、元に戻るのは非常に難しい。と言う事でいいのでしょうか?」


「そういう見解のようだ、少なくとも簡単には行かないだろうし、当面はこのままだな」


 今日の結果を話し終え、俺は注がれていたコーヒーに口を付ける。

 苦っ!味覚まで子供になってるのか、ブラックが飲めない。仕方なく砂糖を足すが、その様子をシエナがニコニコしながら見ている。


 俺の妻、シエナは今三十二歳。髪は赤茶色で、肩までのセミロング。少し身長は低めだが、胸部の盛りは大きめだ。俺がとある商店で働いている彼女に惚れ、歳の差はあるが口説き落とし、結婚にまで至った。そして彼女には趣味があった、可愛い物好きと言う趣味だ。


「そんな風にじっくり見られると恥ずかしいんだが・・・」


「可愛くていいじゃないですか。昨日も言いましたけど、娘が増えたみたいで私は楽しいですよ」


 本当に楽しそうにそう語るが、こっちは父親の威厳が代価である。交換レートとしては不適当ではないのだろうか。


「それにあの子が兄弟が欲しいって言ってましたし、丁度いいのでは?」

「あのなぁ・・・」


 流石に娘の姉になるという、意味不明な状態は無しと言いたいが・・・。


「ところで、明日は非番なんですよね?」

「うん?そうだが」


「なら、家族三人でお買い物に行きましょう!」


 ノリノリのシエナの提案に、特に問題も無いので了承する俺。

 しかし、この時軽はずみに了承した事を、俺は明日後悔するのであった。





「アナタ、よく似合ってるわよ」

「パパかわいー♪」


 上機嫌の二人に対し、俺はこっ恥ずかしくて下を向いている。何故かと言うと、ここは女物の服を売っている店で、俺はもちろん女物の服を着せられている。


「いや、確かに今は女の体だけどさ。別にこんな女の子の格好しなくてもいいんじゃないか?」


 薄い青のワンピースで、各所にレースとリボンが付けられており、少女っぽさが引き立っている。鏡で自分の姿を見ると文句無しの美少女なのが余計に恥ずかしい。


「パパとお揃いだし、私は嬉しいよ?」


 アメリアは俺と同じタイプのワンピースだが、色は薄桃色で可愛らしさが引き立つ。アメリアの髪は赤茶色のセミロング、そして今の俺の髪は金髪のロング。髪の色こそ違うが二人並べば姉妹のようにも見える。

素体元が自分の体のお陰か、顔立ちが似ているのは地味に嬉しい。違う体となっても、こうして繋がりを感じられるのは精神的に安心出来る。


「そうですよ、何時戻れるか分からないんですし、ずっと合わない成人男性の服を着てる訳にもいきませんし、この際きちんと会う服を用意しませんと」


「なら少年用の服をだな・・・」


「「だーめ」」


そうですか、優しい家族にパパ涙が出ちゃうよ。


その後数点服を選び、店から出た。追加で選んだ服はどれも少女らしさが引き立つ可愛らしい服だ。問題は、それを着るのが俺、という事で無ければ最高だったんだが。


そして次には、本日最強に辛いイベントが待っていた。


「アナタ、逃げちゃダメですからね。ちゃんとしたのを選ばないと体の方が辛いですよ」


先程の服や以上に上機嫌なシエナ。何を隠そうここは女性用下着店である。この王都でも数少ない専門店に来ているのだから、彼女の本気度も伺える。


「ねーママ、私も欲しいよー」

「そうね、アメリアの新しい下着も探しましょうか」

「やたー♪」


上機嫌な女性陣(俺も今は女だが)に対し、俺のテンションは低い。こういう下着は着てもらってこそ楽しいもので、自分が着るのは遠慮したい。



「ほら、そんなところで難しい顔してないで選びますよ」


入り口付近で引きつった顔をして立ち止まっていると、店の奥へを引っ張り込まれる。

アメリアの方は許可が出たので店の中をあちこち見て回っている、この辺は幼くても女の子と言った所だろうか。


「下着くらい何でもいいんじゃないか?付けられれば何でもいいよ俺は」


先程の着せ替え人形の行為のダメージから回復してない俺は投げ槍に拒否するも、却下される。


「ダメです、正直服よりこっちの方が重要なんですから。・・・乳首擦れ続けると痛くなりますよ」

「うぬぅ」


実は昨日今日と、もちろん何も付けずにいるので、少し前から胸に少し違和感を感じていた。やはり必須なものなのか。


「分かった分かった、もう全部任せるから好きにしてくれ」


これは一応俺の為なのだ、多分に自分の趣味が入っていたとしても妻を止めるのは俺にとっても良い事ではないだろう。おそらく。



その後、店員とシエナによって体の採寸をされ、見合うサイズの下着が選ばれていく。

せめてシンプルなタイプのにしてくれと懇願したので、要望通りシンプルな下着だが、リボン付き、柄付き、縞々等色々と数は多い。

ちなみにアメリアはと言うと、これも服と同じ様に俺とお揃いにしたかったようだが、俺の方の胸は少し有り、娘は年相応の平原なのでお揃いにできずに文句を言っていた。

娘に慕われるのは、親として嬉しいが、この状況は流石に嬉しくは無い。


 ちなみにきっちりと採寸された下着は着心地が良く、何か気分的に収まりも良かった。

 少し心の抵抗は減った気がする。便利だし、下着姿の自分も可愛いらしかったから。




「買う物も買いましたし、そろそろ帰りましょうか」


その後も小物等を色々見て回り、次第に辺りも暗くなってきていた。家族サービスだと思えばこの程度の付き合いは何も問題無いが、今日買ったものの大半が俺用の物なのでこれでは誰へのサービスなのか分かったもんじゃない。


「そうだな、流石に今日は疲れたよ」


本当に今日は疲れた。主に精神的にだが。


アメリアを真ん中に両側から手を繋ぐ。その光景は間違いなく家族には見えるだろうが、しかしそれは親子と娘では無く、母親と姉妹としか見えないだろう。

命を拾ろえただけ上等な事件だったので、体を失った事自体はそこまでの後悔は無いが、この二人と夫婦、親子と見られなくなる事だけは寂しく感じた。


「不安に思わなくてもいいんですよアナタ」


不安が顔に出ていたのか、シエナがこう切り出す。


「確かに今、アナタは見た目が大きく変わってしまいましたけど、心は私が愛したライアスそのままです。なら、何も気に病む必要はありませんよ、例え他人が変化を認めなくても私はアナタをライアスと認めますから」


 迷いの無い瞳と口調でこう語る。


「そうだよ、可愛くなってもパパはパパだからだいじょーぶ!」


 便乗してアメリアもこう言う。その言葉が俺の不安な心に染み渡る。


「ありがとう、二人共。戻る方法も探していくけど、戻らなかったらその時はこの体だけどよろしくな」


 俺は二人に感謝を伝える。二人が居るならこの体でも俺はやっていけるだろう。


「もちろんですよ。それに、別にその体も悪くないんじゃないですか?若返ってますよ、少し羨ましいです」


 シエナは茶化して言うが若干目がマジなのが怖い。


「パパ!今度また一緒にお揃いの服着ようね!」


「うっ、・・・そ、そのうちな」


 この体のままでも構わない踏ん切りはついても、流石にすぐに着飾ったりは辛い。

 その辺はいずれ上手くやれれば良いか。


 その日、歪な親子三人は、前と変わらず手を繋いで自宅へと帰った。



 ◇ ◇ ◇



(三ヵ月後)



「団長、今日も可愛いっすね!」


「うるさい、さっさと仕事しろ」


「へーい」



「団長さん、新しいお洋服出来たんですけど、休憩時間になったらメイド控え室まで来てくれませんか?」


「あー、時間があればな」


「絶対ですよ、今度は逃げないで下さいね」



 部下の一人や王宮のメイドとの最近のいつものやり取りをする。


 その後の俺はまだ兵士団の団長を勤めていた。周囲に今回の事を告げてみると、大抵の反応が「可愛いので別に良し」だった。それでいいのかこの国は。

 まぁ、元々男所帯だった兵士団に美少女が居ると言う事はやる気に繋がるらしく、最近の部下達の頑張りが良くなっている。中身は変わってないんだがな・・・。


 そして、俺の見た目が良い所に目をつけたのが王宮のメイド達。元々ちょくちょく王宮を行き来する職業な為、彼女らの目に止まり。俺の女としての活動を認める代わりに、お人形にすると言う事になった。

 確かに、ここしばらく女として生活しているが、男中心の兵士団では色々困る場面(トイレ等)も多いので助力して貰えるのは助かるのだが、人形にされるのはまだ抵抗はある。


 と、言いつつも今の姿は下がプリーツスカートとロングソックスに、上が女性用レザーメイルと完全に俺用にカスタムされた服装が与えられ、それを着る事になっている。

 ちなみに拒否権は無かった。

 美少女は優遇されると世の中は言うが、それと同時に強要される事も多いと知った。割と不便だ。


 団長としての実力の方は、パワーが落ちたので得物を大剣から小剣に変更し対処した、適応しきるまでは弱体化となってしまうが、それでも一般兵士には負けない。


 兵士団の中を一通り周り、休憩の為に木陰で腰を下ろす。

 サッとスカートを折り、ハンカチを尻の下に敷く。こういった細かい事等が最近意識しなくてもできるようになったので、女としての作法の習得は順調か。それは嬉しくもないんだけど。


 最近鏡で良く自分を見る。

 確かに美少女だ。それが可愛い服や綺麗な格好をしていると確かに気分は良い。


 だから最近休日こっそり、着飾って一人で散歩に行くのが隠れた趣味だ。体が女とは言え若くなって体が軽くなったのもそれに拍車を掛けている。


「・・・あっ、ライアス団長こんな所に居たんですね。メイドさん達が探してましたよ」


 デレクだ。どうやらメイド達の諜報部員にされているようだ。副団長を使って何をさせているんだ全く。


「あー、もう探しに着たのか。俺はもうちょっと逃げておくから、場所は言うなよ」


「黙秘だけにしておきますよ。・・・それと。最近団長どんどん女の子っぽくなってきましたね」


「体はもう女だからな、上手く付き合ってるだけさ」


 画期的な方法が見つからない限りは、俺はこの女の子の体で生きるしかない。心と体のチグハグは家族のお陰で折り合いも付けられたので、後は慣れていくだけだ。


「さて、俺は行くから後は任せたぞ」


「わかりました」


 最初は不安だらけだった女の子の体だが、周りが俺を認めてくれたので、俺は例え戻れずこのままでも構わないと最近は思っている。


 それに俺も、可愛い自分の姿を好きになっているので、他人の事は言えなかったりするが。


 さて、今日の帰りにアメリアとお揃いの小物を買って帰るかな。



TSゴールデン企画用に作成させてもらいました。思いついた設定を短編用に処理するのが難しかったです。

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