運動会の練習
小学校の運動会練習での死神教員の記録でございます。
暑さのあまりボンヤリとしていた一年生の一人が、列から大幅に遅れパニックに陥りました。
目にたまった涙が、今にもこぼれ落ちそうです。
その様子に気付いた上級生の少年が「こっちだよ」と声をかけながらサポートに入り、手を引き歩き始めました。
役員業務のために学校を訪れていた上級生の母親が、偶然目にした二人の微笑ましい姿に目を細めた瞬間、一人の教員が大きな声を張りあげました。
「そこ何やってんだ!!自分のことも完璧にできないやつが、よく人の世話を焼けるな!恥じをしれ!」
お前が恥を知れ。
・・・失礼。言葉が過ぎました。
慌てた上級生の少年は、一年生に小さく「ゴメンね」と声をかけると、ぎこちない笑みを浮かべて教員に頭を下げ、元の場所に駆け戻りました。
細い身体がいつまでも小刻みに震えています。
これ以降、この子が校内で誰かの手助けをする姿を見かけた者は、誰もいないそうです。
今日もまた、助けを求める誰かに向かって差し伸べられる幼い手を死神教員の刃が狙い続けていることでしょう。
『優しさを刈り取る死神教員』の記録、いかがでございましたか。




