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第一話

続けて第一話です。

プロローグも投稿してあるので先にそちらをご覧下さい。

少しのあいだは毎日投稿します。

 

 激しい日差しを感じて目を開けると、そこには青空が広がっていた。

 …………え?

 まて、なんでだ? おかしい、部屋から出た記憶はない。そもそもなにをしてた?


 「あ、アップデートが終わって……だからここはゲームの中だ、そうだよな?」


 ここはVRの世界なんだ、そう理解しようとしても体が拒絶する。

 鼻をくすぐるような草の香り、風の音、背中から感じる土の感覚、焼け付くような太陽の日差し、どれをとっても数年前までは日常的に感じていた、しかし何年も感じていなかった懐かしい『現実(リアル)の外の感覚』そのものだ。


 そしてなにより震え続ける体がVRの世界ではないことを証明する。

 VRMMOをはじめた理由が外に出た感覚を味わって、いずれリアルでも外に出て欲しいという兄貴の願いからもらったものなのだ。


 ここはリアルとは違う、その実感があったからこそ続けていたのにこれじゃあ


 「帰りたい……」


 それしか出てこない。なんでだ、どうして、こうなった? 疑問を覚えても答えてくれる者はいない。


 なんとか震える体を支えて起こす。そして霧が掛かった空の奥に見慣れたモノが見えた。


 「あれは、『シュバルツ城』」


 俺が数千時間とプレイし続けたSkill Confused World の首都城であるシュバルツ城が目に入った。


 ******


 まずは状況を整理しよう。俺はSkill Confused World にログインしたはずだ。しかし目が覚めたらSkill Confused World にそっくりの世界、いやそのままと言っていいくらいの世界で目が覚めた。この流れは聞いたことがある。


 「異世界転移ってやつか」


 好き好んで読んでいた小説でよくある展開だ。まさか俺自身がなるなんて思ってなかったがな。


 「つーか普通は可愛いヒロインと一緒にだろ、なんで俺一人なんだよ。可愛いヒロインとか周りにいないからだよ分かってるよ」


 それに俺は主人公じゃないだろ……友達いっぱいで騒ぎまくってるリア充にやらせろよな。


 「にしても……ほんとにゲームの世界なんだな」


 少し冷静になり、あたりを見回すと、どれも一度は見たことのある景色だった。それがゲームの世界なんだと深く理解させられる。そのため、少しは震えも収まってきた。まだ震えてるけど。


 「こんなファンタジー展開はごめんだ、早く帰りたい」


 心からの願いだった。

 というか引きこもりが異世界行った途端に無双する話とかあるけどあれ嘘だよね? 現に俺が考えてることは帰りたい、引きこもりたい、ネトゲをしたい、だ! 引きこもりはどこまで行っても引きこもりなんだよ!


 あれ? でもよく考えてみるとそういう無双する話ってパワーバランスの崩壊とかで平和が乱されたりするよね? それが引き金になって戦争起こったり……それなら引きこもってた方がいいじゃないか。


 パワーバランスもそのまま、戦争も起こらず平和なままです。なにこれ完璧、俺って世界に優しいね。世界は俺に対して優しくないけど。


 なんなの? ツンデレなの? 優しくされたら冷たくしちゃうの? なら冷たくしたら世界は俺に優しくなるかな、でもそれって引きこもらずに無双しろってことだよね? それはめんどくさいから冷たくされたままでいいや。


 「てか無双できるなんて決まってないじゃん。ステータスは変わらずかな?」


 小さくステータスと呟くと、ステータス画面が目の前に映し出される。変わってなさそうだな。


 ******


 Name:白夜

 HP:100000

 MP:100000

 SP:100000


 《アクティブスキル》

 索敵 Lv.100max

 威嚇 Lv.100max

 投擲 Lv.100max

 瞬動 Lv.100max

 解析 Lv.100max

 合成剣 Lv.1max

 合成魔法•八 Lv.91

 詠唱短縮 Lv.100max


 《パッシブスキル》

 神級剣術 Lv.100 max

 超級弓術 Lv.41

 滅級魔術 Lv.97

 上級長物術 Lv.21

 生命力強化 Lv.100max

 魔力強化 Lv.100max

 技量強化 Lv.100max


 《生活スキル》

 鍛治 Lv.100max

 木工 Lv.100max

 採取 Lv.100max

 料理 Lv.81



 《特殊技能》

 剣系統術化:短剣、大剣、刀のスキルを一つにまとめる。滅級、神級が追加される。しかしレベルアップの経験値は3倍。

 弓系統術化:長弓、短弓ののスキルを一つにまとめる。滅級、神級が追加される。しかしレベルアップの経験値は2倍。

 長物系統術化:槍、薙刀ののスキルを一つにまとめる。滅級、神級が追加される。しかしレベルアップの経験値は2倍。

 魔法系統術化:火属性魔法、水属性魔法、土属性魔法、風属性魔法、雷属性魔法、光属性魔法、闇属性魔法、無属性魔法ののスキルを一つにまとめる。滅級、神級が追加される。しかしレベルアップの経験値は8倍。

 特異:ユニークスキル『合成剣』が使える。

 最強の剣士:固有技能(ユニークスキル)である『合成剣』を使うことができる。

 身体強化《極》:HP.MP.SPの最大値が10倍される。


 ******


 うん、たしかにフラグは作った。でも本当になるとは……


 「これって完全に『白夜』のプレイヤーデータじゃん……」


 目の前にあるのはチート楽勝、トップクラスプレイヤーの強くてニューゲーム状態。小説ならここから無双スタートか。


 「どっちにせよ俺はしないけどな」


 だってやっぱりめんどくさいし。

 あ、そういえば武器防具や道具は……うん、手持ちに入ってたやつは全部持ってるな。アイテムボックスに預けてたやつはないか……お気に入りの装備があっただけよしとするか。


 「装備は『白龍の袴』、武器は『氷零刀:皆固』でいいか。装飾品は……まだいいな、装備っと」


 真っ白い龍が縫い込まれた袴を纏い、腰には同じく白い刀が携えられる。うん、装備の仕方も変わってないな。この装備なら白一色だし目立たないだろ。


 「さて、これからどうするか……」


 呟いてみても何も返事が帰ってこない。まるで中学の時の俺再来だな。いや、誰もいないんだし当然なんだけど。

 街道も近くにないし、ここら辺は初期の頃にしか来てないから記憶があやふやだな。


 「一応城目指して行く方が……」


 いいかけた俺の脳内に電撃が走る。今までいたあの世界はゲームだった。だから会話しなくてもそういうプレイスタイルだと思ってもらえたし会話しない人なんていっぱいいたから城下街に入れた。


 しかし今はどうだろうか、ここはいい意味でも悪い意味でも現実的だ、体が訴えている。ひきこもりの固有スキル『危険察知』の発動だ。そして現実であるなら城下街に行けば必然と話しかけられる。俺は会話をできるか? 出来ないね、自身を持って言える。それならどうするかは決まっただろ。


 「城から離れよう、誰もいないような田舎で静かに暮らそう。というか引きこもろう」


 行動は決まった、手始めに森の奥を抜けていくか。たしか城の遠くは森になってたはず。そこで就職先もとい引きこもり先を見つけるんだ、俺の戦いはここからだ!



 ******


 10分程たった今、俺は休んでいた。

 やっぱり引きこもりは外に出ちゃダメだね、体力が全くないよ!


 「まさか……たったの10分でバテるなんて……」


 そしてもう一つ気がついたことがある。


 「喉が乾いた」


 ゲームには実装されていなかった空腹システムがあるっぽい。そりゃ現実なんだしあるだろうけど。

 空腹はまだましだが喉の渇きがやばい。


 「こんなことなら……もっと運動しておけばよかった」


 ゲームの世界に入っちゃうなんて予想もつかないから『こんなことなら』ってのはおかしいんだけどね。


 「湧き水が出てるポイントが森にあったはず、そこ目指してもうちょい頑張るか」


 疲れた体にムチを打って体を起こす。これは明日筋肉痛だな。何年ぶりだろうか。引きこもり歴3年弱と考えると筋肉痛にすら懐かしみを受ける。これは感動の再会間違いなしだな、全米が涙した筋肉痛との再開! うん、なしだな。


 「森もすぐそこだし頑張りますかー」


 目標地点に目を向けると、そこに大きな水色の塊があることに気づく。


 「スライムか、そういえばモンスターにあってなかったな」


 なんだろう、すごい落ち着いてるな。いつもの俺なら慌てて逃げ出してもおかしくないけど……やっぱりゲームっぽいところを見ると安心感が沸くな、普通は逆だと思うけど。


 「手慣らし&確認でいっちょやりますか」


 左腰に差してある刀を抜く。なんか感覚がリアルだな、重さも感じるし。

 その時になってスライムもこちらを認識したのか、跳ねるようにして近づいてくる。


 「じゃあはじめはー『瞬動』」


 ……あれ? スライムは?

 っていつの間に後ろに?


 「加速がデカすぎる、それに刀が重くて腕を持ってかれるかと思った……今までよく使えてたな自分。これもリアルとゲームの弊害か」


 瞬動使えないのか……スライム程度なら楽だけど龍とかになるときついな、慣れておかないと……ってなんで俺は龍と戦うつもりでいるんだ! 引きこもるんだろ? その気持ちを強く持て、そしたら大丈夫だ。俺はまだまだひきこもれる。


 なんだよそれ人間のクズじゃん、そんなやつの顔を見てみたいよ、俺だよ。鏡見ろよ。

 まだスライムはこちらを見失ってキョロキョロしてるし


 「仕留めるか

  Akull Top Përrua Aplikoni『氷玉奔流』」


 詠唱と共に無数の氷の玉がスライムに向けて飛んでいき、命中して絶命する。

 使いたい魔法を頭の中でイメージして自動詠唱って所は変わってないな。問題としてはスキルも魔法も口に出して言わなければいけないから現実だと思うと厨二病的でなんか恥ずかしいな……


 「割り切るしかない……か」


 ここは我慢だな。


『戦闘を確認、これより最適化プログラムを実施します』


 刀を鞘に納めていると、いきなりあたりに響く声。


 「なんだ? 最適化プログラム?」


『プレイヤーネーム:白夜……適合。インストール』


 その言葉とともに体が軽くなる。

 頼むから説明してくれ、どういうことだ。なんとなく予測はついたが……それっていいのか?


『インストール完了。任務の遂行を確認』


 その言葉を最後に、電子的な声は聞こえなくなる。

 最適化、インストール、適合、そしてステータスの割に重く感じた刀。そして今まで読んできたラノベの流れ。それらから推測されることは……


 「もしかして身体能力すらも『白夜』になったってことか?」


 こ、これは喜んでいいのかどうかわからん! まずは試さないと……少し走るか。

 足に力を入れて蹴り出すと、今までに味わったことのない加速を感じる。

 うん、もしかしなくてもこれは


 「『瞬動』」


 やっぱりだよ! 振り回されてない! ゲームの感覚そのままだ。


 「いいのほんとに? こういうのって大体リスクあるものでしょ?」


 ここまで自分がすごくなるとは……こんなに強くなれるならいっそ世界でも救っちゃおうかとか思うほどある。救わないけど。


 「……進むか」


 どうするべきかは、今は考えたくない。ビバ、現実逃避!

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