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第四話 「エルミナ・ヴァルキュロス」(3)

※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります


閲覧の際には、上記の旨をご理解のうえ、読欲をお満たしください。


「たあーのしかった!」

 一時間半後、アメリア様と私は、馬車に揺られて下校していた。騒動はすでに収束した。

 オルテンは今頃、どこかの教室で膝をつき、魔力切れで動けなくなりながらも、どこか満足そうな苦笑を浮かべているだろう。

 彼の展開した封印術式が、偶然にも校舎に刻まれた魔導陣と共鳴したのだ。

 結果として、新たな魔力安定化フィールドが生成され、試験対策や研究用途として高い価値が認められるものとなった。

 研究論文として申請すれば、十分に通る。そう判断できる程度には、完成度が高かった。

「まさか、あのような暴走が副次的に研究成果を生むとは」

 そう漏らすと、アメリア様が満面の笑みで応じた。

「すごかったね! あの陣、ピカーってして、キラキラってなって、ババーンって爆発しなかったもん!」

「一つのエンターテインメントでしたね」

 実際の収束は、三分もかかっていなかった。

 あの男の封印術式も功を奏したが、それ以上に、私の動きが早かった。

 術式ではなく、物理的な手段で、私は生徒全員を無力化した。意識を失う直前の生徒たちが目に映したのは、飛び回る私の影だっただろう。三十分もすれば、順次意識を取り戻した。後遺症はゼロ。その程度の加減は、私にとっては容易い。

 功績比で言えば、八対二。無論、私が八だ。わざわざ主張するつもりもなかったが、オルテンも理解はしていたはずだ。それでも、満足そうにしていたが。

 封印術式は【暴走魔力対応の試験対策陣】として評価され、彼の校内での評価は確実に上がる。あんな男の名声を上げることに協力してしまったが、元を正せば私の主人が発端だ。

 それに私は、こんな小事で誇るつもりはない。

 教師陣からの報告聴取も、短時間で済まされた。彼らもまた、私の立場を知っている。

 余計な詮索はせず、結果だけを受け取る。それが暗黙の了解だ。

 それにしても、アメリア様にはまったく悪びれた様子がない。

「あのジュース、ちょっと改良すれば元気になれる薬としていけそうなんだけどなー」

「後で私が試してみましょうか」

「うーん、エルミナだと効果が分かりづらいしなぁ」

 彼女の言う通り、人並み以上に頑丈な私には、あまり効果のないものだろう。

「一応試してみましょう。何か発現するかもしれません」

 あのジュース――魔力過剰ブレンドジュースと仮に呼ぼう。あれには、応用可能性があった。魔力供給と感情活性を同時に行える可能性のある、新しい配合。未解析の薬理効果があるかもしれない。

「別にいいけどさ。ただ飲みたいだけじゃないの?」

「それもあります」

 何より、アメリア様が直々に調合したものだ。私はそれが飲みたい。

「アメリア様の開発品。是が非でもいただきたく思います」

「えへえへ。そこまで言われたら、しょーがないなぁ」

「ありがとうございます」

 照れている我が主人。可愛い。

 さして疲労もしていないが、癒される私は、静かに手帳を取り出した。

 《アメリア様、結果的に校舎機能向上と学術的功績に貢献》

 《グレイン氏、論文一本確定》

 《個人的所感:アメリア様はやはり天賦の才を有しておられる。流石は唯一無二のお方。グレイン氏は、これからも注意深く見ておく》


 *


 夜。

 月の光が窓辺に差し込むころ、私は王女の就寝を確認し、自室に戻った。

 机の引き出しから、いつもの日記帳を取り出す。

 一年前に目覚めてから、毎日欠かさず記してきた。

 一周目にはしなかった行為。だが今は、自分の思考を整理し、世界の変化を見極める上で、欠かせない儀式のようになっている。

 周囲の人間の性格、行動には多少の変化が見られる。

 だが、出来事そのものは――同じように起きている。

 第一次革命もその一つ。

 民衆の不満が溢れたものの、上層階級と武力衝突には至らず、平和的な改革運動へとつながった。歴史どおりに起こり、収束した。その流れには、私ですら干渉できなかった。

 ならば、第二次革命もまた――避けられないのかもしれない。

 それは四年後。

 上流階級に属する者たちが、次々に命を落とす。

 ヴァルモン王国は弱体化を避けられず、周辺諸国の結成した包囲網に、飲み込まれた。

 アメリア様は、そこで斬首された。

 その光景は、今でも瞼の裏に焼き付いている。

 私は怒りのままに敵陣に突入し、そして死んだ。

 暗闇から目覚めたとき、私は五年前に戻っていた。

 夢だと、妄想だと、自分に言い聞かせた。

 だが、アメリア様と再会した瞬間、私は確信した。

 あの色彩のある世界が、本物なのだと。

 泣き崩れた私に、困惑しながらも寄り添ってくれた、あの人の表情。

 たぶん、初めて見たのだと思う。

 なぜ過去に来たのかはわからない。

 神の奇跡か、魔法の影響か――けれど、理由はどうでもいい。

 アメリア様を、私は守り抜く。

 それだけは、過去であろうと未来であろうと、不変の意志だ。

 必ず、今度こそ、生き延びるのだ。

 私は最後の行に、そっと書き加えた。


 アメリア様を、二度と死なせはしない。




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