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その百十七 亡霊

 

 同時刻。

 王都の中でも一際存在感を放っている建物の前。

 半壊したセイヴハート邸に侵入する2つの影があった。


「うーわ……もう、まんま廃墟じゃない」


「見事に放置されてますね。誰もいないんじゃしょうがないですけど」


 ケイナ・ビリッツァとレイミは鍵の壊れた鉄格子の門を恐る恐るくぐった。

 彼女らの探している遺体は右腕部。

 影の骨の調査によれば、その所在はセイヴハート邸のどこかにあるとのこと。


「なんか気が引けるわね。泥棒してるみたいで」


「みたいじゃなくて本当に泥棒しに行くんですよ」


「いやそうだけど。見知った家なだけあって余計やりづらいのよね」


「当主は死にましたし、空き家みたいなものなんですから、気にしないでいいと思いますよ」


「これじゃ空き巣ね。アタシこれでも貴族なんだけど……ま、鍵かけてない方が悪いってのもあるか」


「考え方は立派な泥棒のそれですね……」


 緊張感のない雰囲気で壊された扉の向こうへと足を踏み入れた。

 邸内に入ってまず目に入ったのはボロボロのエントランス。

 マリの戦闘が残した痕跡であった。


「うわ。これ全部アイツがやったの?」


「マインやリンク様と戦った時のですね」


「凄まじいわね……あのセイヴハート家がこんなになるなんて1年前は思いもしなかったわ」


「私も、標的(ターゲット)だった姫とこんなことするなんて、考えもしませんでしたね」


「……その姫って呼び方いい加減やめなさいよ」


「いいじゃないですか。可愛いし」


「アタシとしては別に可愛いは目指してないの!アタシを言うなら、どっちかって言うと騎士でしょ」


「騎士、ちゃん?さん?……可愛くないから却下で」


「だーかーらー!」


 ガ ゴ ン !!


「ひあっ_______________」


 一際大きな音が家中を響き渡った。

 突然の出来事に飛び上がったケイナは無意識にそばにある背に張り付いた。


「……壁が崩れただけですよ」


「……んなの、見りゃ分かるわよ」


「うふふ、こんな怖がりな騎士じゃ頼りになりませんね」


「うっさい、うっさいうっさいうっさい!!」


 ケイナの顔がみるみるうちに紅潮していく。

 レイミはその様子に微笑みかけながらも、邸宅の奥へと足を進めた。


「うぅ……大体、こんな出そうな雰囲気してるのが悪いのよ」


「……出そう?何が出るんです」


「は?そりゃ、何か霊的な物よ」


「霊的……?」


「あーもう、気にしないで!独り言だから!」


 聞きなれない単語に首を傾げるレイミ。

 ケイナの言う通り、一切の修復がなされていないセイヴハート邸は少し不気味な風情を漂わせていた。


「さて……姫、どこから探します?」


「重要そうな、それっぽいとこ!アンタなら分かるでしょ」


形白(マリオネット)は出歩くことが許可されてませんでしたからね……地下にある研究室しか知りませんよ」


「研究室。それっぽいわね……あ、却下!絶対そこの方が暗いし怖いわ!絶対行きたくない!」


「えぇ……遺体がそこにあったらどうするんですか」


「いっ、癒しよ!まずは癒される場所から探しましょ!」


 力強く言われレイミは急かされるまま、ある場所へと案内した。

 そこはセイヴハート邸の中にあるなんてことない一室であった。


「はあ♡癒される♡」


「癒されるって、ただのマインの部屋ですからね。てか、何してるんですか!」


「この中だったらいつまでも。なんなら永遠に住めるまであるわ」


「泥棒じゃなくて変態さんでしたか……」


 嘆息するレイミを無視して、変態はベッドの匂いを堪能し続けた。

 部屋に置かれている物は洋服棚や机、椅子となんの変哲も無い家具ばかり。

 とても魔王の遺体が隠されているとは思えない。


「どこかの裏に……いや、流石に無いですね」


「こんな天使の空間に、遺体なんてグロテスクなもんがあるわけないでしょー」


「じゃあなんで来たんですかって……はあ、洋服棚にも特になしです」


「あ……その服アタシが選んだやつだ」


 レイミの手元にあったのは、灰色のフリルワンピース。

 いつかのマリとマインが出かけた時に買った物である。


「これ……マインが大事そうに持ってたやつです」


()()、マイン様ね。そっか、あの時のことはもう覚えてないのよね……」


「一度も着られてないみたいです……暇があったら本人に持っていってあげましょう」


「そう_______________ちょっと待って」


「?どうしま_______________」


 突然2人は口を噤んだ。

 気づいたのは、些細な物音だった。


 コト コト コト コト コト


 部屋の外、廊下から足音が近づいているのだ。

 この真夜中、普通なら警備の兵だろうとこの辺りは出歩かないはず。

 予想外。

 見つかってはいけない状況に2人は息を呑んだ。


 コト コト コト コト コト


 数秒後、ドアの前を過ぎたと思うと足音は次第に遠くなっていった。


「はあ……行きましたかね」


「そうみたい。これはおちおち家中まわって探すわけにもいかなくなったかしら」


「誰かいるんじゃ、好き勝手出歩けな_______________」


「 み つ け た 」


 天井からの声。

 影は気づくよりも早く、天井から手を伸ばし2人を掴んだ。


「え?」


「なっ、コイツは!」


「出てけえええぇぇぇぇ!!」


 腕の遠心を利用した投擲が2人の身体を投げ飛ばした。

 軽々と飛ばされた身躯は、窓ガラスを突き破り室外へと放り出される。


「_______________白帝(びゃくてい)!アタシ達を受け止めて!!」


 現れた白騎士達が2階から投げ出された2人を受け止めた。


「っ、あっぶな!びっくりしたわね」


「……姫!油断のないように!!彼は」


「侵入者ァ……殺す。王都のためにぃ!!」


 追撃すべく、現れた影は窓から豪快に飛び上がった。

 その姿、口調こそは一致しないが、レイミには見覚えのある姿であった。


「あれ、確か形白(マリオネット)の」


可能性(コンセプト)「超魔力」の05(レーゲン)です。なんか色々改造されてるみたいですけど______________________!!」


「王都ぉ、王都のためにぃぃ!!」


 壊れ、変わり果てた人形が二人を襲った。

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