王宮の青い薔薇の娘 計画 6
学園長を落とすという事は達成できた。
と、言っても、学生らしく清らかにでは無かったし…落とすというか勝手に落ちてきた感じだったけど…。
まさか学園長のヤンデレっぽさを見ることになろうとは…。
爽やかで優しくて忍耐力があって清らかな感じの学園長が…あんなに妖艶になってしまうとは…。
指に唇を付けただけで赤くなっていた学園長はもう居ないんだろうなぁ…。
最後にサラッとキスしてきたし…。
あれで恋愛経験がないのか…凄いな…。
あそこまでなってしまった学園長と結婚出来なかったら、やっぱり○○監禁ルートになりそう…。(ますます○○が言えない)
実際今日は、学園長室に鍵をかけて私を○○するつもりだったんだろうし…。
プチ○○監禁だよね、コレ…。
学園長が反省してからは私も冷静さと余裕を取り戻していたけど、寮で一人になって改めて考えると本当に危なかったんだなぁ…。
これはもう、恥も外聞も忘れて必死で合法的に結婚するしかないな…。
だって今、私が監禁されたら犯人分かっちゃうよね…速攻で。
お父様、お母様、王、宰相、宮廷魔術師長、アーロン、ニール、ソル、イライザ嬢このメンバーには確実にバレる…。
そうなったら、私を魔法で隠しても、状況証拠バッチリの学園長は拘束されて、私を隠すのが無理な状態にされちゃうかもしれない。
一応こう見えて「聖女の魔法」が使える王女の娘だし…国も本気だすよね…。
さすがに学園長の地位すら危なくなってしまうし…学園長は破滅してしまう…。
ヤンデレ設定怖い…。
…怖いのは設定で、初めてをやり直してくれた学園長は、やっぱり私が好きになった優しい学園長だからいいんだけど。
学園長が捕まらなければ、監禁でもいいけども…上記の理由で無理だと分かった今は、本当に絶対結婚できるように頑張るしかない…。
ゲームと違って今の状況での監禁ルートは、学園長にとってもバッドエンドになってしまうんだ…。
エイブラム先生の不安が、一番悪い形で当たってしまう感じか…さすがに20年近く学園長の側にいたエイブラム先生は鋭いな…。
しかも、今日の危険性を感じてくれたエイブラム先生なら、学園長に注意してくれるだろうし…。
困ったものだ。何が困るって、そんなヤンデレな学園長に○○されても、私は学園長を嫌いにならないだろう。
むしろ学園長に害がないなら喜んで受け入れそう…。
だって、今日の学園長…凄く妖艶で綺麗で…いっそ、今すぐ監禁されてしまいたい…なんて思ってしまいそうだった…。
エイブラム先生の言葉を思い出してよかった…。
私はもう落ちていたのに、今日また深い所に落とされてしまった…。
二人で、溺れてしまったら本当に這い上がれなくなってしまう。
それはダメ絶対。私もしっかりしないと…。
あ、そうだ。お父様に学園長を落とせたことを報告しないと…私は清らかに頑張ったから…そういう事で良いよね。
本当の事を言って、お父様と学園長の仲を微妙にさせることもないだろう。
いくら大恩人でも、父親は娘の恋人には厳しいのは古今東西一緒だろう…。
◇◇◇◇◇◇◇
そろそろ、朝夕の気温が低くなってきて、ベストだけでは寒い日がある。
一応、衣替えは10月だが、10月中はベストだけでもいいことになっている。
ベストだと寒くなってきたし、防御的な意味でも心許ないなぁ…。ジャケット
着ようかな…。昨日の今日だし…。
お父様が言っていた12月の頭までという期限より前に学園長は落ちてきてくれたけれども…。
お父様の具体的な作戦も気になるのだけれど…それと同時に、天使のようだった学園長が堕天使になりそうで怖い…。
そして、その悪魔のような魅力に流されそうな自分も怖い。
『あいつの居場所は学園だけだ。あいつを幸せにする前に追い出されるような状況にするなよ?』
今日も、エイブラム先生のこの言葉を絶対に忘れないように…。
きっと、学園長もエイブラム先生に注意されているだろうし…大丈夫、大丈夫。
◇◇◇◇◇◇◇
「失礼します、フローラです」
「はい、どうぞ」
いつも通りの挨拶で、今日も授業が始まる…。
いつものように教科書を広げ、ノートをとる。
はぁ…昨日の事が思いだされてしまう…。
ダメダメダメ、思いだしちゃダメ、授業に集中、集中。
力を入れ過ぎて、鉛筆の芯が折れた…はぁ…何やってるんだろう…。ペンケースから新しい物を出す。
落ち着こう、落ち着こう。
全く同じことを二回繰り返した時、視線を感じて、顔をノートから上げると学園長が困ったように見ている…。
挙動不審がバレてしまったか…。
「…フローラさん、昨日のような事は、もうしませんので…普通にしていただけると助かります」
そんなこと言ったって、私だって必死に普通にしようとしてますよ…。
「…じゃあ、今日の授業は私の方を見ないでしてもらえますか?」
別に、私を見なくても授業は出来るのだし、学園長も協力してください。
「…分かりました」
はぁ…良かった。これで一人百面相してもバレないな…。
学園長の髪って本当にきれいだなぁ…プラチナブロンドが似合うって凄いなぁ…
サラサラだし。
指も綺麗だなぁ…細くて長いし…。
昨日、あの手が…。…違う、違う、そうじゃない、そうじゃない。
バレないからって、学園長を見過ぎだ…。
ダメだ、授業に集中できない。
そうだ、ノートをしっかり取る事だけ考えよう。そうそう、出来る出来る。
色々な葛藤と煩悩と戦いながら、最初の1時限は乗り切った。
めちゃくちゃ疲れた…。
いつものように休み時間は、隣の部屋で紅茶をいただく。
今日はやけに紅茶が美味しい…。喉がスゴイ乾いていたみたい…。
流石に今日は、いつも通り私の真正面に学園長が座っている。
「…フローラさん、本当に昨日は申し訳ありませんでした…。エイブラムにも言われたのですが…授業の終わりに抱きしめるのは、もうしない方がいいと思うんです。…その、昨日はエイブラムだから良かったですが、学園長室から赤い顔で出ていくのは、やはり不味いですし…」
…赤い顔、学園長はシレッとしていたから、私の事か…。
『お前も生徒の顔を崩すなよ』って、そういう事…そういえば、すぐ学園長が暴走したことに気付いたのは…なるほど…顔に出ていたからか…忘れて欲しい。
不思議なもので、抱きしめられるだけの時と、抱きしめられる以上の事をされた後では、同じ抱きしめられるでも後者の方が、私は恥ずかしく感じる。
でも、学園長は、私と真逆そう…何となくだけど…。
「…分かりました」
「ですが、フローラさんに触れられないのはもう無理なので、授業開始前に抱きしめさせてください」
…何ですと?
「今まで律していた分、リミッターが外れた後は、完全に禁止も危険じゃないかと忠告されて…」
…エイブラム先生の忠告ですか…そうですか…。
「…誤解が無いように最初に言いますが、慣れるまで挙動不審になるかもしれませんが、変な邪推はしないでくださいね?」
大事なことなので言っておこう。
「それは分かっています」
という事は、今日は無しって事かな…ちょっとホッとした。
紅茶がより一層、美味しく感じる。
次の時間は普通に授業が出来るかな。
そう思って、始まりの鐘が鳴り隣の部屋に入ると…学園長が抱きしめてきた…。
しかも、後ろから…授業開始前って今日も含まれていたか…2時限目なのに…。
私は固まるしかなかった。
「フローラさん、優しくなら口付けしてもいいですか?」
…抱きしめるだけじゃないの…。
「…あの、今日は抱きしめるだけでいいんじゃないですかね…」
「…すみません、抱きしめてしまったら我慢できなくなってしまって…どうしても駄目ですか?」
指の口付けでも赤くなったり、両親が賛成してるから抱きしめられないって言っていた学園長はもういないんだなぁ…。
無駄に良い声で、耳元で言うとか…恋愛経験がないのに、ポテンシャルが高いのかスキルがある。
「…優しくしてくださいね?」
そう言うと、学園長は私の肩をクルッとして自分に向けて、優しく口付けしてきた…。
…これは、普通にときめく。
唇が優しく離れた後、私は自分でも分かるくらい顔が赤くなってしまって俯いた。
そしたら、なんと学園長が顎クイをして、また口付けしてきた…ええっ…。
…これ以上は、私がダメになる。
そっと、両手で学園長を押した。今日はアッサリと学園長は唇を離してくれた。
「昨日のように、フローラさんからもしてくれませんか?」
…!! 昨日は、そういう雰囲気だったけど、今日は違うんですよ…分かって!!そこは!!
「…今日は、チョット無理です…」
そう言ったら、学園長がまた唇を重ねてきた…もう、何なの…進化しすぎじゃない…?
これ以上したら、ずっとしたくなってしまう…もう、本当にこの人は…。
唇が離れた瞬間、私は学園長の胸に顔を付けた。これ以上されないように。
「学園長、これ以上はダメです」
「すみません、フローラさんがあまりにも可愛い顔をするので…」
「…してないです」
「していましたよ」
「…じゃあ、今日はもう私の顔を見ないでください」
「嫌です。私にだけに見せてくれる表情を、私が見ないでどうするんですか?」
「……」
我慢してくれていた時は、少しの刺激にも過剰になっていたんだろうけど、我慢をしなくなると少しの刺激には鈍感になって貪欲になっていくのかな…大丈夫かな?
私に嘘はつかないでって言ったけど、正直すぎても困るな…。
「エイブラム先生の忠告を思い出してくださいね、学園長」
「エイブラムの忠告通り、我慢しすぎないようにしていますから安心して下さい」
「……」
困った学園長だ。でも、これは私に甘えているんだろう。
ずっと、私達の為に生きてきて、清廉潔白だった学園長。
私に自分の気持ちを素直に言って求めてくれているんだ、当たり前のように自分を犠牲にして、時には嘘を付いて真実を隠して、私を守ってきた彼が。
彼に与えられるだけじゃなくて、私も彼に与えられるようになったんだな。
そう思うと、一気に愛しさが溢れる。
でも、だからこそ…。
「学園長、あんまり素直に甘えられると、私はエイブラム先生の忠告を無視して、貴方を破滅させてしまうかもしれないですよ」
「……」
「私との永遠を望んでいるなら、私を貴方に溺れさせないでください」
「……」
「…授業を始めましょう、学園長先生」
私は、そっと学園長から離れた。
「…そうですね、危なく私の方がフローラさんに溺れそうでした…」
学園長は、昔と同じ優しい笑顔をした。
貴方が私を守ってくれたように、今度は私が貴方を守るから…。
学園長を愛してるからこそ、学園長に溺れて流されてはダメだ。
そして、学園長を私に溺れさせてもダメ。
「学園長にとってのバッドエンド」それだけは絶対に避けないと。
これ以上、彼から何一つ奪う訳にはいかない…。




