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王宮の青い薔薇のむすめ  作者: 青空那奈
本編

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王宮の青い薔薇の娘 計画 5

あれから、学園長を清らかに落とすという事、エイブラム先生の忠告を守り、間違っても学園長が学園に居られないような状況にしない事…。


この正解を見つけようと考えたが、どうにも浅ましさと清らかさのギャップに迷い込んで正解が分からなくなってしまった。


清らかに落とす方法を考える自分が浅ましく感じて、こんな浅ましい自分が清らかと考えた行動は、もしかしたら学園長を煽ってしまって何もかも失敗してしまうんじゃないかと思った。


エイブラム先生の授業以来、学園長との授業を普通にして、学園長は約束してくれたように、授業の終わりには私を抱きしめてくれていた。


嬉しい時間だったのに、ただただ気まずい…どうしていいか分からない。




そんな状態が一週間ほど続いた。




そして、いつものように食堂でお昼をとっていた時だ。


「ねぇ、フローラ。何か悩んでる?」


ミラが聞いてきた。


「え? ちょっと、最近勉強に力を入れていて…疲れてるかも…」


悩んでいる事はミラにも言えないので誤魔化した。


「…本当に? 言い辛い事なら無理に聞かないけど、言いたくなったら聞くからね」


誤魔化しきれなかったようだ。やはり親友の目は騙せないか…。


「ごめんねミラ、ありがとう」


そういうと、アナとベルも言った。


「一人で悩みたい時もあるだろうしね」「気分転換にお茶に行くなら付き合うからね」


有り難い言葉をいただいた。


「ありがとう、お茶に行く時はオゴってくれるのかな?」


と、ふざけて言うと「いいわよ」と、三人が笑って言った。


「嬉しい~♪」


と、私は言って、明るくお昼を取ることが出来た。優しいなぁ…皆。

逆に私がオゴるべきですよ…。




◇◇◇◇◇◇◇




お昼の後は、選択授業だ…。


こんなに学園長との授業が緊張するのは、いつ以来だろう…しかも、今回は気まずさがアリ過ぎて変に気持ちが重い分、本当にしんどい…。


今日も普通に授業をして、お茶をして、最後に抱擁されて学園長室を出た。


すると、ソルがいた。


「フローラさん、大丈夫か?」


…ソルにも気づかれていたか…。


「…大丈夫ですよ、最近勉強を頑張っていて疲れているだけです」


さっきと同じ言い訳をした。


「…そうか。前にも言ったが、どうにもならくなったら僕の事を思い出してくれ。協力する」


たぶん、誤魔化せてないよね。


「…まだ、大丈夫なので。すみません、本当にありがとうございます」


私は、頑張って笑った。

すると、同時に学園長室の扉が開いた。


「…フローラさん、言い忘れました。ホームルームが終わったら学園長室に来てください。進路についてお話したいことがあります」


自分でも分かるくらい、私の顔は強張(こわば)った。


「…分かりました」


「では、お二人ともホームルームが始まってしまいますよ」


学園長は、優しく微笑んで言った。


「フローラさん、途中まで一緒に行こう」


ソルがそう言った。


「はい。では、学園長…放課後また」


「ええ、お待ちしています」


最高に気まずいまま、ソルと私はそれぞれの教室に向かった。




◇◇◇◇◇◇◇




ホームルームはあっさり終わって放課後…。

逃げたい…でも、逃げられない。学園長がしたいのは進路の話じゃないだろう。


私は学園長室の扉をノックする。


「失礼します、フローラです」


いつもの挨拶。


「どうぞ、お待ちしていました」


学園長はそういうと、隣の部屋のソファーで待っていて下さい。と、言った。

授業が終わったので、いつもは脇に寄せられてるソファーは正しい位置にあった。


「お待たせしました」


そう言って、学園長は紅茶とお菓子を持ってきてくれた。

そして、私のすぐ隣に座る…今日に限ってどうして隣なんだ…。


「フローラさん、何か悩みがあるんですか?」


…二度あることは三度ありすぎ…。


一番聞かれたくない人に聞かれてしまった…貴方の誘惑の仕方に悩んでるなんて言えないよ。


「…今日は、進路のお話なのでは?」


違うと分かってるけど、間が持たないので聞いた。


「ある意味、進路のお話ですよ…」


そう言うと、私の頬に学園長は右手を添えた。


「私を学生らしく清らかに落とすのは止めたんですか…?」


「…………」


もう、ピンポイントで来たよー。何で無駄に色っぽい目をするの…。

私は目をそらした。


「…私を見つめることすら止めたんですか?」


いつものように穏やかな口調だ…でも、空気がヒンヤリとしてる気がする…。


「……貴女の笑顔を一週間以上見ていません…約束通り抱きしめても、前のように幸せそうな顔もしてくれない…」


そう言いながら、学園長は右手の親指で頬を撫でる。

私は、何て言っていいか分からず、学園長の顔を見た…。

笑っているような泣いているような怒っているような不思議な表情だった。


「貴女のそんな表情が見たいんじゃありません…今日、ソルさんに見せた様な笑顔をして下さい」


どんな表情か分からないけど、この状況で、笑えるわけない…どうしよう…。


「…私は、貴女の特別じゃなくなりましたか?」


学園長は冷たい微笑みを浮かべた…。


「…!! 違います…!!」


反射的に答えた。特別だから悩んでいるのに…そんな顔をしないで…。

でも、上手く説明できない。


「違う? 本当にそうですか? 私は貴女の特別なんですね?」


「…そうです、だから…」


「だから、こうしても良いですね」


そう言うと、学園長は頬に添えていた右手に力を入れて私の唇に自分の唇を重ねた。


学園長の唇は驚くほど冷たい…。


「……んっ」


私が本能的に逃げようとすると、学園長は右手を私の頭の後ろに持っていき、左手は私の腰に回して、もっと深く口付けた。


苦しくなって、顔を横に向けようとした。

でも、学園長はそれを許してくれず、少し開いてしまった私の口の中に入ってきた。


唇は冷たいのに……逃れようと私は抵抗する。


私は両手で学園長を押した。でも、全然びくともしない…。

鼻で息を吸うけど、吐息全てを奪われるような口付けに酸素が上手く吸えない。


私は、両手に魔力を集めて学園長を突き飛ばした。

学園長の両手と唇は離れたが、50㎝くらいしか離れられなかった。


息を整えながら、私は言う。


「こんなこと…ダメです…」


「…駄目? どうしてですか?」


どうしてって…。


「私が叔父だからですか…?」


「そうじゃなくて…!!」


「そうじゃないなら、安心しました…」


そう言うと、学園長は私の左手を引っ張って自分の胸に閉じ込めた。


「姪である貴女も、私と同じように耳が弱いのでしょうか…」


耳元で、学園長がささやく…。背中がゾクッとする。


「…感じたんですか…?」


意地悪く学園長は耳元でささやいて私の耳に口付けた。


「……イヤっ…」


耳を甘噛みされている…。


そうしながら学園長は、片手で私の夏服のベストのボタンを外している。

私は慌てて、学園長の手を両手で止めた。


「…これ以上は本当にダメですっ!!」


私、(あお)ってないのに…何でこんなことに…。


学園長の顔は私の耳から離れて、私を真正面から見た。

学園長の異常なまでの色気に、顔が赤くなった。


「…駄目? 顔を赤くして、目を潤ませているのに?」


優しく言う学園長は、美しくて妖艶だった。

そして、軽く口付けする。


唇に頬に瞼に耳に、口付けの雨が降る。


そして、学園長が私の首元に頭を埋め首筋を口付ける。


吐息が漏れそう…。


甘い刺激に、酔ってしまいそうになる。

いつの間にか冷たかった学園長の唇は熱い…。


学園長の手はブラウスの上に…あまりにも強い刺激に叫んだ。


「…!!ダメです!!エイブラム先生との約束が!!」


学園長の手が止まった。

そして、私の首元に顔を埋めたまま言った。


「…エイブラム?」


「…これ以上したら、学園長が学園を追い出されてしまいます…!!」


学園長は、完全に動かなくなった。私の肩に自分の(ひたい)を押し付けたまま。


「…そういえば、貴女が笑わなくなったのはエイブラムの授業からでしたね…。何を言われたか聞いても?」


私は、エイブラム先生に言われた事と、それを守るためにどうしたらいいか悩んでいたことを話した。


話し終えても、学園長は私の肩に額を当てたままだ…。


たぶん、ショックを受けているんだろう。


「学園長、私が叔父と姪であることに(ひる)んだと思いました?」


「…すみません」


「もしかして、ソルさんに嫉妬したりしました?」


「…すみません」


「…私、初めての口付けだったんですけど…」


「…すみません」


「…いい加減、私の肩から離れませんか?」


「……すみません…」


そう言って、やっと学園長は肩から離れてたけど、項垂(うなだ)れている。

物凄い、落ち込んでいる。


「…今日は私をどうするつもりだったんですか?」


「……」


「…今なら言い訳を聞きますよ」


「…一週間以上、貴女の本当の笑顔が見れなくて、抱きしめても何の反応も無くて…どうしてだろうと悩んでいました。ソルさんの背中を見つめていたり、ソルさんに笑顔を向けたり…そして、それに居合わせた私には他人行儀になっていて…。悩みがあるなら聞こうとしましたが、貴女は拒否するような答えしかくれなかった。貴女が私から離れていくと思いました。だから、離れられないようにしようと思いました…申し訳ありません…」


学園長は、物凄い反省をしている…。

…誤解させるような態度の私も多分に責任があるけども…でも…。


「学園長が私を落とそうとしたんですか…ふしだらに…」


ちょっと、意地悪っぽく言ってみた。だって私は清らかに煽り過ぎず学園長を落とそうと悩んでいたんだから。

まさか、煽っても落とそうともしていないのに学園長が清らかじゃ無くなる

とは…。


「…言い訳のしようがありません…」


学園長は、苦しそうに言った。これ以上は可哀想か…。結果的に、これって…。


「という事は、学園長は本当に私に落ちているんですね」


悩みが解決した私は、久しぶりに学園長に笑顔を向けた。


「……落ちてると言ったじゃないですか…エイブラムのせいですね…」


「違いますよ、嘘が上手い学園長のせいですよ」


私もエイブラム先生も、学園長の自己犠牲と忍耐力は知っている。

私の為なら嘘を言える事も。

本当に私に落ちてくれないと、学園長は幸せになろうとしない事も。


「…私のせい…そうなりますか…。今日の事、許してもらえますか?」


ならば…それなりの対価を頂きます。


「これからは、私に絶対嘘をつかないと約束してもらえますか? それなら許します」


そもそも、恋愛のスキルが低い私に、清らかに落とすなんて難易度が高過ぎたんだと思う…学園長の心の機微(きび)は難しいし…。

学園長の本心が分からないと、今日みたいなことが起きてしまう。


学園長が学園に居られなくなってしまったら本末転倒過ぎる。

ニールも好きな子にはドSだったけど、学園長もヤンデレ設定なのかな…。

それは、ちょっと困る。


「分かりました。これからはフローラさんに嘘はつきません」


本当にそうして下さいよ…じゃあ、確かめさせてもらいます。


「エイブラム先生は、学園長は恋愛経験がないと言っていましたが、今日の口付けは初めてですか?」


「…自分からしたのは初めてです」


微妙な言い回し。


「では、口付け自体は初めてではないと…」


「…積極的なご婦人に無理やりされたことがあります…」


「そんな経験がありながら、今日、私に無理やりしたんですね…」


「…本当に申し訳ありません…」


学園長は、また落ち込んでしまった。やっぱり口付けは初めてじゃないよね。

嘘をつかないという約束は守ってもらえそう…。

意地悪だったかな…でも、今日の学園長はヤンデレっぽかったので反省してもらいたい。

今、監禁されたら計画がダメになってしまうのだから。


「私と結婚できるように努力してくれますか? 私を諦めようと思いませんか?」


「……はい」


「…良かった!!」


私は、学園長に抱きついた。


「あっ」


思わず抱きついた私は、すぐ離れた。

すると、学園長は優しく私を引き寄せて抱きしめた。


「大丈夫です、もう先程の様な無体はしませんから…」


抱きつくのは大丈夫になったのかな…。なら…。


「…学園長、乱暴な初めてを優しく上書きしてくれませんか?」


「…分かりました」


学園長は、優しく口付けしてくれた。

すごく幸せな気持ちになる。さっきとは全然違う。


少し長めの口付けだったけど、離れてしまうと寂しい。


私は、自分から学園長に口付けした。

さっきより長めにして、唇を離した後は学園長に抱きついた。


幸せ…。


学園長は、私の頭を撫でながら言った。


「今、とても幸せです」


「…私もです」


学園長が私といることで幸せだと思ってくれた。涙が出そう…。

もっともっと学園長に幸せだと思ってもらいたい。


「フローラさん、すみません、髪が乱れてしまいました…それと、ベストも直さないといけないですね」


…なるほど、乱れ髪でベストをはだけたまま学園長室を出たら一大事ですね。

私は鞄からブラシを出した。


すると、学園長がブラシを私から奪った。


「髪の毛、私が直しましょう。姉上の髪をよく結ってあげたので得意ですよ」


「じゃあ、お願いします」


学園長が髪をほどいて髪を()かす。私はベストのボタンを留めた。


「綺麗な髪ですね」


学園長はそう言うと、器用に三つ編みをしだした。


「出来ましたよ」


「ありがとうございます」


振り向いて、ブラシを貰おうとしたら口付けされた。


「では、また明日…」


頬を撫でて学園長が言った。…凄いサラッとするなぁ…。


私が学園長室を出ようとした時、ドアがノックされた。


「エイブラムだが」


学園長が、鍵を開けて、エイブラム先生が入ってきた。


「お前、鍵をかけて何やってるんだ?」


「フローラさんの進路相談です」


「…へぇ…。学園長室の鍵をかけて、進路相談か…」


「私に急用があるのですか?」


学園長が、シレッと言った。

鍵していたんですね…。


「フローラ、加減を間違ったのか?」


…ええっ…。


「私は何もしていないんですが…」


「そうか。何もしなさ過ぎて、こいつが暴走したか」


スゴイ、当たってる…。


「で、用事は何なのですか? エイブラム先生」


「お前、昨日まで落ち込んでたくせに分かり易いな…一応、フローラも無事なようだが…」


一応…。まあそうですね。


「…フローラ、俺の方が加減を間違ったかもな。悪かった」


「いいえ、大丈夫です」


「フローラさんの言う通り大丈夫ですよ」


「…大丈夫か? お前は俺以外の人間の前じゃ完璧だけどな…フローラ、お前も生徒の顔を崩すなよ。あと、学園長なら生徒がいるのに鍵を閉めるな」


「フローラさんは、国の機密である「聖女の魔法」を学んでいるのだから特別ですよ」


「ちっ。遅い初恋は厄介だな。もう、夕食が近いだろう…フローラ気を付けて帰れよ。こいつには俺が注意しとくから」


「フローラさん、気を付けて帰ってください」


「はい、失礼します」


学園長室から去る時、エイブラム先生が「どの口で気を付けろって言ってんだ」と、言っているのが聞こえた…。






エイブラム先生に私は心から同意した…。


本日、19時にもう一度更新します。

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