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・*12*・

菊池夏(なっちゃん)視点



宿舎の1室で俺は目の前で眠っている幼馴染みを見つめる。


寝顔はどこか苦しげで、何かを嫌がっているように、たまに頭を左右に振っている。


「亮。」


名前を呼んでも反応がない。


崖から落ちたと聞いたときは焦ったが、大した怪我はなく、擦り傷程度のようだ。


しかし、頭を打ったのかなかなか目を覚まさない。


こいつはいつも俺が見てないと、

何かしら怪我をして戻ってくる。


わかっていたはずなのに、なぜ俺は薪拾いの方の係へ行かせてしまったのだろう。


なぜ……俺と違う係につくように、俺自身が言ったんだ…?

普段なら、できるだけ目の届く範囲に居させるようにしているのに。


実のところ、係りを決めたときのことをあまり覚えていない。

思い出そうとしても思い出せないのだ。


「……ん」


「亮?起きたのか…?」


俺が声をかけると、ゆっくりと目が開く。


「……ふぁ…あれ、なっちゃん…?」


「『あれ、なっちゃん…?』じゃない。無理するなよ馬鹿が。」


「ええ、いきなり酷いな。」


「本当のことだ。陽菜をかばって落ちたんだろ?」


俺の言葉に亮は目をぱちくりさせる。


「……陽菜?珍しいね、なっちゃんが下の名前を呼び捨てなんて。」


「あ、ああ」


……おかしい。俺は特定の人しか下の名前を呼び捨てで、なんて呼ばないと決めていたはずだ。

ましてや、今日初めて話したような相手に……


係を決めたときと同様に、下の名前を呼び捨てで呼ぶことになった経緯が思い出せない。


「あれ?この絆創膏、なっちゃんが貼ってくれたの?」


そう言って亮が見せてきた絆創膏は、とてつもなく可愛らしかった。

ピンク色の下地に、さまざまな動物がプリントされている。


「……俺がそんなファンシーな絆創膏貼ると思うか?」


「えー似合うよ?なっちゃん女顔だし」


「うるさい。男装変人が。その絆創膏はお前を見つけた時から貼ってあった奴だ。」


「男装じゃないって。じゃあ、誰が貼ったんだろ。……鈴木くん…?いや、あいつは無いな。うん。」


「鈴木?そういえば、鈴木はまだ見つかっていない。お前ら一緒にいたんだろ?はぐれたのか?」


「えーっと、同じ場所に落ちたんだけど別行動することになって、その後すぐ頭が痛くなって……倒れた」


その後すぐ?

それに、頭を打ったから気絶していたのではないのか。


「じゃあお前が倒れたのは崖の下辺りか?」


「へ?うん。移動してないからそのはずだけど」


「……俺がお前を見つけたのは山に入る手前だ。宿舎の近くの。」


「えっ、じゃあ誰が私を…?」


「たぶん、その絆創膏を貼ってくれた奴だろうな。」


「へぇ……優しい人もいるものだねぇ」


語尾をやけに伸ばしてこちらをちらりと見てくる。


……まるで俺が優しくないと言いたげだな。おい


「そうだな」


「ちっ。つれないな。そういや、鈴木くん探しに行かなくていいの?まだ行方不明なんでしょ?」


「ああ、たぶん大丈夫だ。今、陽菜が探しに行っている。」


「はぁっ?女の子1人で探しに行かせたの!?うっわー最悪ー。」


「1人で大丈夫だと言っていた。」


むしろ、1人で行かせてと頼まれたぐらいだ。


それに、この意識の戻らなかった幼馴染みのことが心配で、傍にいたかったから残った。

口が裂けてもこのことは言わないがな。


「それでもついて行かないと!!女顔だけど、れっきとした男なんだから!!!女の子は守れ!!」


女に女を守れって言われてもな。

お前も女だろ。


「今からでも行ってこい!!主人公守らないと他の奴に盗られるよ!!!」


「主人公?」


「陽菜ちゃんのこと!ほら早くいってきなさい。お姉ちゃんここで待ってるから!」


亮が、しっしっと手を振る。


「はぁ、いつから俺の姉になったんだよ……」


「は・や・く!!!」


「……はいはい。」



まったく、面倒くさい幼馴染みだ。



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